あわてんぼうのサンタクロース 歌詞の意味・解説
クリスマスソング/作曲:小林 亜星
『あわてんぼうのサンタクロース』は、幼稚園から小学校低学年でよく歌われるクリスマスソングの定番。1960年代後半にNHK「おかあさんといっしょ」で放送された。
1970年代には、小学校の音楽教科書に何度か掲載されていた。
作曲は、CMソング「積水ハウスの歌」、日立CM「この木なんの木」、「にんげんっていいな(まんが日本昔ばなしED)」などを手掛けた小林 亜星(こばやし あせい/1932-)。
作詞は、石川さゆり「天城越え」、五木ひろし「北酒場」、美空ひばり「真っ赤な太陽」などの作詞で知られる吉岡 治(よしおか おさむ/1934-)。
【YouTube】あわてんぼうのサンタクロース
歌詞と解説
『あわてんぼうのサンタクロース』の歌詞では、一体どのような内容のストーリーが展開されているのだろうか?
作詞:吉岡治による『あわてんぼうのサンタクロース』の歌詞を次のとおり引用し、その内容を簡単に確認してみよう。
あわてんぼうのサンタクロース
クリスマスまえに やってきた
いそいでリンリンリン
いそいでリンリンリン
鳴らしておくれよ鐘を
リンリンリン リンリンリン
リンリンリンあわてんぼうのサンタクロース
えんとつのぞいて 落っこちた
あいたたドンドンドン
あいたたドンドンドン
まっくろくろけのお顔
ドンドンドン ドンドンドン
ドンドンドンあわてんぼうのサンタクロース
しかたがないから 踊ったよ
楽しくチャチャチャ
楽しくチャチャチャ
みんなも踊ろよ僕と
チャチャチャ チャチャチャ
チャチャチャあわてんぼうのサンタクロース
もいちど来るよと 帰ってく
さよならシャラランラン
さよならシャラランラン
タンブリン鳴らして消えた
シャラランラン シャラランラン
シャラランランあわてんぼうのサンタクロース
ゆかいなおひげの おじいさん
リンリンリンチャチャチャ
ドンドンドンシャラランラン
わすれちゃだめだよおもちゃ
シャララリンチャチャチャ
ドンシャララン
歌詞は5番まであり結構長い。一つずつ歌詞について簡単に解説・コメントしてみたい。
1番の歌詞
1番の歌詞冒頭で、サンタクロースが間違えてクリスマス前にやってきてしまったことが明示されている。
「鳴らしておくれよ鐘を」とあるが、日付を勘違いして登場してしまったサンタに対して、誰が何のために鐘を鳴らしてほしかったのかについては、何も描写されていない。
しかも、リンリンとなるのは「鐘」じゃなくて「鈴」のような気もする。アンパンマンの歌『勇気りんりん』でも、「勇気の鈴が りんりんりん」と鳴っている。
2番の歌詞
あわてんぼうのサンタクロースは、日付を間違えただけでなく、煙突から上手く家の中に入ることにも失敗している。
慌てていたのか、不器用なのか、原因は良く分からない。家の中に入ろうとしていたということは、この時点ではまだクリスマス前に来てしまったことに気が付いていない可能性が高い。
3番の歌詞
「しかたがないから 踊ったよ」とあるが、煙突に落っこちた事の恥ずかしさを誤魔化すためなのか、日付を間違えてクリスマス前に来てしまったことに気が付いたのか、それともその両方なのか、歌詞からは明確ではない。もし両方だとしたら、もう踊るしかない気分になるのは分からなくもない。
「チャチャチャ」とは、1950年代に流行したラテン音楽のダンス(リズム)。キューバのダンス音楽ダンソンを改良したもの。
日本では、1962年に『おもちゃのチャチャチャ』がNHKで放送され大ヒットした。メインの作詞者は野坂昭如だが、『あわてんぼうのサンタクロース』作詞者である吉岡 治も補作詞として参加している。
4番の歌詞
「もいちど来るよと 帰ってく」との歌詞から、日付を間違えてクリスマス前に来たことをこの時点で完全に認識していることが分かる。
サンタクロースが乗るトナカイのソリといえば、『ジングルベル』の歌詞にもあるような鈴の音が思い出されるが、リンリンリンという音はすでに1番の歌詞で使われてしまっているので、4番の歌詞では楽器の「タンブリン(タンバリン)」を「シャラランラン」と鳴らす表現が用いられている。
タンブリンは外出時に誰もが持ち歩く楽器ではないが、おそらくサンタクロースのプレゼントの袋の中に入っていたものを使ったのだろう。
ちなみに、『あわてんぼうのサンタクロース』作詞者の吉岡 治は、『ヘイ!タンブリン』という楽曲の作詞も手がけている。
5番の歌詞
これまでの歌詞に登場したリンリン、ドンドン、シャラランと言った擬音がすべて登場するフィナーレらしい内容。
「ドンシャララン」の部分は、日本の民謡『村祭(むらまつり)』の歌詞「ドンドンヒャララ ドンヒャララ」をほうふつとさせる。
「わすれちゃだめだよおもちゃ」としっかり釘を刺されており、サンタクロースに対する信頼が若干揺らいでいるような印象を受けるのが切ない。
戦前のカントリーに似てる?
1936年にアメリカで発表されたカントリー・ミュージック『Sunny Side of Life』のイントロが、この『あわてんぼうのサンタクロース』の冒頭メロディによく似ているとの投稿をいただいたので、ここで簡単に共有したい。情報提供、誠に感謝いたします。
実際に聞いていただくのが一番早いと思われるので、ここで『Sunny Side of Life』のYouTube動画を次のとおり引用してみよう。
【YouTube】 The Blue Sky Boys "Sunny Side of Life" (1936)
聴いてみると確かに、『Sunny Side of Life』のイントロが、『あわてんぼうのサンタクロース』冒頭のメロディによく似ているように感じられる。
『Sunny Side of Life』は1936年にリリースされた戦前の古い楽曲なので、『あわてんぼうのサンタクロース』が『Sunny Side of Life』から影響を受けている可能性が考えられるが、詳しい経緯は不明だ。