歓喜の歌(喜びの歌) 合唱の歌詞と意味
ドイツの詩人シラーの詩に基づくベートーヴェンの合唱付き交響曲
毎年年末になるとよく耳にするベートーヴェン第九の合唱『歓喜の歌(喜びの歌)』について、原曲のドイツ語の歌詞の意味・和訳と読み方、有名な日本語の歌詞(訳詞)などをまとめてご紹介したい。
原曲のドイツ語歌詞は、ベートーヴェンが生涯愛読していたドイツの詩人シラーによる『歓喜に寄せて An die Freude』が用いられている。
ジャケット写真:バーンスタイン指揮 リマスタリング CD
なお、ドイツ語のカタカナ表記・読み方については、ドイツ語と日本語の言語の違いによる根源的な限界があるので、あくまで雰囲気をつかむための参考程度に。
また、交響曲全体の解説については、こちらのページ「ベートーヴェン 第九 交響曲第9番 合唱付き」でまとめている。
【YouTube】 カラヤン指揮 歓喜の歌
ドイツ語の歌詞(サビのみ)・日本語訳
Freude schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium,
Wir betreten feuertrunken,
Himmlische dein Heiligtum!
歓喜よ 美しき神々の御光よ
エリュシオン(楽園)の乙女よ
我等は情熱と陶酔の中
天界の汝の聖殿に立ち入らん
|:Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt.:|
汝の威光の下 再び一つとなる
我等を引き裂いた厳しい時代の波
すべての民は兄弟となる
汝の柔らかな羽根に抱かれて
カタカナ表記(サビのみ)
Freude schöner Götterfunken,
フロイデ シェーナー ゲッターフンケン
Tochter aus Elysium,
トホター アウス エリージウム
Wir betreten feuertrunken,
ヴィアー ベトレーテン フォイアートゥルンケン
Himmlische dein Heiligtum!
ヒンムリッシェ ダイン ハイリッヒトゥム!
|:Deine Zauber binden wieder,
ダイネ ツァウバー ビンデン ヴィーダー
Was die Mode streng geteilt;
ヴァス ディー モーデ ストレング ゲタイルト
Alle Menschen werden Brüder,
アッレ メンシェン ヴェァデン ブリュダー
Wo dein sanfter Flügel weilt.:|
ヴォー ダイン ザンフター フリューゲル ヴァイルト
エリュシオンはシャンゼリゼ
ドイツ語歌詞の2行目にある「Elysium」(エリージウム)とは、ギリシア神話に登場する死後の楽園エリュシオン(エリューシオン)のこと。かつては世界の最西端に存在すると考えられていた。阿弥陀如来の西方極楽浄土とも比較される。
エリュシオンはフランス語では「シャンゼリゼ(Champs-Élysées)」。これは「エリゼの園」を意味しており、パリ市内のシャンゼリゼ通りもエリュシオンに由来している。同じくパリ市内にあるエリゼ宮も同様。
有名な日本語の歌詞
ベートーヴェン『歓喜の歌』につけられた日本語歌詞としては、『アマリリス』の訳詞で有名な岩佐東一郎の作詞による『よろこびの歌』が広く知られている。かつて小中学校の音楽教科書にも掲載されていた。
岩佐東一郎『よろこびの歌』の歌詞を次のとおり引用する。
晴れたる青空 ただよう雲よ
小鳥は歌えり 林に森に
こころはほがらか よろこびみちて
見かわす われらの明るき笑顔花さく丘べに いこえる友よ
吹く風さわやか みなぎるひざし
こころは楽しく しあわせあふれ
ひびくは われらのよろこびの歌<引用:岩佐東一郎『よろこびの歌』歌詞>
小学校の音楽教科書向けに作詞されたようで、その内容も原曲の宗教的な要素は一切なく、美しい自然と人々の幸せが明るく朗らかに表現されている。
なかにし礼による日本語歌詞
北島三郎『まつり』や細川たかし『北酒場』などを手掛けた作詞家・なかにし礼は、第4楽章の合唱全体に対して日本語の訳詞をつけ、昭和62年に桑名市民会館大ホールで初演を行っている。
なかにし礼による日本語版『歓喜の歌』は、東日本大震災が発生した2011年の年末に、東京文化会館での復興支援コンサートとして再演された。
【YouTube】第九"歓喜の歌" なかにし礼訳 日本語版 歌詞つき 2
なかにし礼による日本語歌詞のサビの部分は次のとおり。
愛こそ歓喜に導く光
さえぎる苦難を越えて進まん
歓喜の頂(いただき)踏みしめた時
我らは兄弟 世界は一つ
歓喜の頂(いただき)踏みしめた時
我らは兄弟 世界は一つ<引用:なかにし礼訳 日本語版『歓喜の歌』より>
岩佐東一郎『よろこびの歌』の歌詞とは異なり、なかにし礼のつけた歌詞は、原曲の内容を踏まえた訳詞となっているのが分かる。
讃美歌やゴスペルソングにも
合唱部分のメロディには、20世紀初頭にアメリカの作家・聖職者のヘンリー・ヴァン・ダイク(Henry van Dyke/1852–1933)により讃美歌の歌詞がつけられ、聖歌『ジョイフルジョイフル Joyful, Joyful We Adore Thee』として歌われている。
さらにこの『ジョイフルジョイフル』は、1993年のアメリカ映画「天使にラブ・ソングを2 Sister Act 2」でゴスペルソング(一部ラップ)としてアレンジされ、以降はゴスペルミュージックとして広く知られるようになった。
【関連ページ】 ゴスペルソング『ジョイフルジョイフル』
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