汽車ポッポ(兵隊さんの汽車)歌詞の比較

歌のモデルとなった御殿場駅のホームでの風景とは?

『汽車ポッポ』は、作詞:富原薫(ふはら かおる)、作曲:草川信による日本の歌曲。

元のタイトルは『兵隊さんの汽車』。歌詞の内容も今日のものとは一部異なり、戦地に赴く兵士を歓送するものだった。

「今は山中(やまなか)今は浜 今は鉄橋渡るぞと」が歌い出しの童謡・唱歌『汽車』についてはこちら

作詞者の富原は、静岡県御殿場市で小学校の教諭を務めていた。御殿場には陸軍の演習場があった上、御殿場駅のホームでは、出征する兵士を万歳三唱で送り出す光景が連日見られた。富原はそんな日常風景を素直に詞にしたという。

実際に1番の後半の歌詞は、「僕らも手に手に日の丸の 旗をふりふり送りましょう」、「万歳 万歳 万歳 兵隊さん 兵隊さん 万々歳」と、汽車で出征する兵士を見送る様子が描写されている。

ちなみに、メロディーはシューベルト『軍隊行進曲』をモチーフにしているそうだ。

【参考文献】 読売新聞文化部「唱歌・童謡ものがたり」 p268

【YouTube】汽車ポッポ

歌詞『汽車ポッポ』

まず、現在歌われている童謡『汽車ポッポ』について、作詞:富原薫による歌詞を次のとおり引用し、その内容を確認してみよう。

1.
汽車 汽車 ポッポ ポッポ
シュッポ シュッポ シュッポッポ
僕等(ぼくら)をのせて
シュッポ シュッポ シュッポッポ

スピード スピード 窓の外
畑も とぶ とぶ 家(いえ)もとぶ
走れ 走れ 走れ
鉄橋(てっきょう)だ 鉄橋(てっきょう)だ
たのしいな

2.
汽車 汽車 ポッポ ポッポ
シュッポ シュッポ シュッポッポ
汽笛(きてき)をならし
シュッポ シュッポ シュッポッポ

ゆかいだ ゆかいだ いいながめ
野原(のはら)だ 林だ ほら山だ
走れ 走れ 走れ トンネルだ
トンネルだ うれしいな

3.
汽車 汽車 ポッポ ポッポ
シュッポ シュッポ シュッポッポ
煙(けむり)をはいて
シュッポ シュッポ シュッポッポ

行(ゆ)こうよ 行こうよ どこまでも
あかるい 希望が まっている
走れ 走れ 走れ がんばって
がんばって 走れよ

童謡『汽車ポッポ』の歌詞では、汽車(蒸気機関車)のスピードや窓からの眺めを楽しむ様子が描写されている。

擬音の部分は戦前の歌詞『兵隊さんの汽車』とほぼ同じだが、それ以外の歌詞は戦後全面的に改訂されている。

戦前の歌詞『兵隊さんの汽車』

次に、戦前の歌詞『兵隊さんの汽車』について、次のとおり引用してその内容を簡単に比較してみたい。

一.
汽車汽車 ポッポポッポ
シュッポシュッポ シュッポッポウ
兵隊さんを乗せて
シュッポシュッポ シュッポッポウ

僕等も手に手に 日の丸の
旗を振り振り 送りませう
萬歳(ばんざい) 萬歳 萬歳
兵隊さん兵隊さん 萬々歳(ばんばんざい)

二.
汽車汽車 來る來る
シュッポシュッポ シュッポッポウ
兵隊さんを乗せて
シュッポシュッポ シュッポッポウ

窓からヒラヒラ 日の丸の
旗を振ってく 兵隊さん
萬歳 萬歳 萬歳
兵隊さん兵隊さん 萬々歳

三.
汽車汽車 行く行く
シュッポシュッポ シュッポッポウ
兵隊さんを乗せて
シュッポシュッポ シュッポッポウ

まだまだヒラヒラ 日の丸の
旗が見えるよ 汽車の窓
萬歳 萬歳 萬歳
兵隊さん兵隊さん 萬々歳

『兵隊さんの汽車』というタイトルどおり、出征する兵隊らを乗せて走る汽車と、それを日の丸の旗を振って見送る人々の様子が描写されている。

ちなみに、『汽車ポッポ』のように戦後歌詞が修正された童謡・唱歌としては、『里の秋』、『われは海の子』などが有名。

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