別れのワルツ なぜ閉店BGMに?
閉店・閉館時に流れる定番BGM 『蛍の光』の兄弟的メロディ
『別れのワルツ』は、2020年NHK朝ドラマのモデルとして注目を集めた作曲家・古関裕而(こせきゆうじ)が1950年頃に編曲した3拍子の器楽曲(インストゥルメンタル)。
時期的には、古関裕而作曲による『長崎の鐘』が大ヒットしていた頃の作品。
デパートや商業施設・公共施設の閉店・閉館時に流れるBGMとして定番となっている。
写真:映画「哀愁」日本公開時のポスター(出典:Wikipedia)
『別れのワルツ』の原曲は、1949年3月に日本で公開されたアメリカ映画「哀愁」の劇中曲。スコットランド民謡『オールド・ラング・サイン』を3拍子のワルツにアレンジした曲で、この民謡は日本の唱歌『蛍の光』の原曲として有名。
つまり、『別れのワルツ』と日本の唱歌『蛍の光』は、原曲が同じスコットランド民謡である兄弟関係の楽曲と言える。
映画「哀愁」の大ヒットを受け、劇中で印象的に使われていたワルツをレコード発売しようと、コロムビアレコードが専属作曲家の古関裕而に採譜・編曲を依頼。「こせき・ゆうじ」の名前をもじった「ユージン・コスマン楽団」による『別れのワルツ』としてリリースした。
【YouTube】別れのワルツ 1956
なぜ閉店時のBGMになった?
古関裕而『別れのワルツ』は、なぜ閉店時・閉館時のBGMになったのだろうか?
それは、ネタ元の映画「哀愁」(原題:Waterloo Bridge/ウォータールー・ブリッジ)において、『別れのワルツ』原曲が使われた場面とストーリーが関係している。
主演女優は、1939年のアメリカ映画「風と共に去りぬ」で主人公スカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リー(Vivien Leigh/1913-1967)。相手役俳優はロバート・テイラー(Robert Taylor/1911-1969)。
ヴィヴィアン・リー演じるマイラと、ロバート・テイラー演じるロイ大尉は、戦時中のロンドン・ウォータールー橋でめぐり会い、恋に落ちた。
レストランで待ち合わせたロイとマイラ。楽しいひと時を過ごし、閉店前に最後の曲として流れたのが『別れのワルツ』だった。
映画の場面において閉店前に最後の曲として使われたことが、日本で閉店時・閉館時のBGMとして定着した大きな理由の一つである。
そもそも、『別れのワルツ』の原曲であるスコットランド民謡『オールド・ラング・サイン』が別れの曲であることも理由としてあるだろう。
さらに、『別れのワルツ』が流れた映画のシーンは、レストランでの食事の後、恋人の二人がしばらくの間お別れしなければならないという切ない場面。
思うに、この『別れのワルツ』は、お店が大切なお客様としばらくの間(次の営業時間まで)お別れしなければならず悲しいという「美しい建前」を表現しながら、なおかつお客様に速やかな退店を促すのにこの上ないBGMなのである。
ウォータールー橋とは?
映画「哀愁」の英語タイトル(原題)である「Waterloo Bridge」(ウォータールー・ブリッジ)とは、ロンドンのテムズ川にかかるウォータールー橋のこと。
写真:ロンドンのテムズ川とウォータールー橋(出典:Wikipedia)
マイラとロイの二人は、空襲下のロンドンで、避難中にウォータールー橋近くで偶然出会うことになる。
ちなみに、フランスの歌謡曲・シャンソンとして世界的に有名な『オー・シャンゼリゼ』は、英語で書かれた楽曲『ウォータールー・ロード(Waterloo Road)』が原曲となっている。
ウォータールー・ロードは、ウォータールー橋から南東へ伸びており、西側にウォータールー駅がある。
NHKドラマ「君の名は」元ネタ
古関裕而『別れのワルツ』が発表された2年後の1952年、NHKラジオドラマ「君の名は」が放送開始となった。
ドラマ「君の名は」では、戦時下の東京において、空襲から避難中に銀座の数寄屋橋で主人公の真知子と春樹が偶然出会い、恋に落ちる。
空襲から避難中に橋で男女が出会うという導入は、まさに映画「哀愁」の序盤そのもの。ドラマ「君の名は」の序盤は、映画「哀愁」の筋書きを元にしたストーリーとなっている。
ちなみに、ドラマ主題歌『君の名は』作曲者は、映画「哀愁」劇中曲を『別れのワルツ』に編曲した古関裕而。
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