深い河 Deep River 歌詞の意味・和訳

故郷はヨルダン川の向こう岸 すべてが平穏な約束の地へ

黒人霊歌『深い河』(Deep River/ディープ・リヴァー)の歌詞に登場するヨルダン川(Jordan River)は、洗礼者ヨハネがイエス・キリストに洗礼を授けた場所として新約聖書に記述されている神聖な川。

イスラエル、レバノン、シリアの国境が接するゴラン高原やアンチレバノン山脈周辺を水源とし、北から南へ流れ、イスラエ ル北部のガリラヤ湖を経て死海へ注ぐ。総延長425km。

【YouTube】歌:マヘリア・ジャクソン Mahalia Jackson

【YouTube】メランコリックなピアノ伴奏が素晴らしいインストゥルメンタル

歌詞の意味・和訳(意訳)

Deep river, my home is over Jordan,
Deep river, Lord,
I want to cross over into campground.

深い河 故郷はヨルダン川の向こう岸
深い河 主よ
河を渡り 集いの地へ行かん

Oh don't you want to go to that gospel feast,
That promis'd land where all is peace?
Oh deep river, Lord,
I want to cross over into campground.

福音の恵みを求めて
すべてが平穏な約束の地へ
深い河 主よ
河を渡り 集いの地へ行かん

ヨルダン川はどこ?

下の地図で、中央上から下へ国境線上を縦断する青い部分がヨルダン川(Jordan River)。ヨルダン川の西側に「West Bank」と記述された点線の地域は、いわゆる「ヨルダン川西岸地区」。イスラエル入植地とパレスチナ自治区が錯綜しており、国際ニュースなどで「パレスチナ問題」として報道される紛争地域となっている。

ちなみに、死海(Dead Sea)に注ぐヨルダン川河口から北西に約15kmほどの場所(ヨルダン川西岸地区)に、合唱曲としても有名な黒人霊歌『ジェリコの戦い Joshua fit the battle of Jericho』の舞台、ジェリコ(エリコ)の街がある。

深い河はアメリカにもあった?

アメリカ東海岸に位置するノースカロライナ州(State of North Carolina)は、ニューヨークに次ぐ銀行業の街・金融センターとして発展を続けており、「バンカメ」の通称で知られるバンク・オブ・アメリカ(Bank of America Corporation)の本社も置かれている。

このノースカロライナ州には、黒人霊歌『深い河』のタイトルと同じく、その名もズバリ「Deep river ディープ・リバー」という川が現実に存在する。

実在の川、Deep river(ディープ・リバー)が流れる場所は、ノースカロライナ州中北部のグリーンズボロ(Greensboro)市ギルフォード郡(Guilford County)。

全長は約125マイル(約200km)で、ケープ・フィア川(the Cape Fear River)に合流して大西洋へ注ぐ。近隣には「Deep River Park ディープ・リヴァー公園」も整備されている。

黒人霊歌『深い河』との関係は?

ノースカロライナ州の河川「Deep river(ディープ・リバー)」と黒人霊歌『深い河』との関係については明らかではないが、一説によれば、19世紀のギルフォード郡周辺には奴隷解放運動を推進していたクエーカー(Quaker/キリスト友会)の組織が存在し、彼らの関係者によって黒人霊歌『深い河』が作曲されたのではないかと考えられているという。

ノースカロライナ州では奴隷制が採用され、アメリカ南北戦争の際には、奴隷制の維持に賛成する南部州の一つとしてアメリカ合衆国を脱退し北軍(北部州)と戦った経緯があるが、その反面、自由な身分を保証されたアフリカ系アメリカ人も数多く存在していた。

北部州と南部州の境界に位置する州として、そこを縦断するように流れる河川「Deep river(ディープ・リバー)」は、あたかもヨルダン川のように、自由と隷属、生と死の境として象徴的に解釈されるのだろう。

その他雑記

ヨルダン川と黒人霊歌

『深い河 Deep river』以外にも、黒人霊歌ではヨルダン川が歌詞に登場する曲がいくつか存在する。有名な例としては、日本では『こげよマイケル』で知られる『Michael, Row the Boat Ashore』が挙げられる。

他にも、黒人労働者と川というキーワードからは、19世紀アメリカのフォスター歌曲『スワニー河(故郷の人々)』が想起される。

フォスター(右写真)は、他にも『主人は冷たい土の中に』、『懐かしきケンタッキーの我が家』など、黒人労働者に関連する楽曲をいくつか残しているので是非合わせて参照されたい。

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アーティストによるカバー

テネシー州ナッシュヴィルにあるフィスク大学の合唱団「ジュビリー・シンガーズ」により歌い広められた黒人霊歌『深い河』は、その後様々なアーティストによってカバーされている。合唱団によるレパートリーとしても定番。

代表的な歌手としては、バーバラ・ヘンドリックス、マリアン・アンダーソン(Marian Anderson)、マヘリア・ジャクソン(Mahalia Jackson)、アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)など。YouTube動画でもいくつかアップされているようなので、色々なカバー盤を聴き比べてみるとより味わい深く鑑賞できるだろう。

遠藤周作「深い河」もインスパイア?

芥川賞作家遠藤周作の1994年の作品「深い河」は、クリスチャンでもあった遠藤周作がこの曲を聴いてインスパイアを受けたものとされる。

同作品の第1章冒頭に、「深い河、神よ、わたしは河を渡って、集いの地に行きたい」との記述が見られる。

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