I Must Go 歌詞と和訳 箱根駅伝テーマ曲
なぜアメリカのドラマの曲が箱根駅伝テーマ曲に使われたの?理由は?
『I Must Go』(アイ・マスト・ゴー)は、アメリカの女性ソウル歌手トミー・ヤング (Tommie Young/1949-)の楽曲。
日本では、箱根駅伝(大学駅伝)テレビ中継のテーマ曲として2008年まで使われていた。「箱根駅伝といえば、やはりこの曲」という方も少なくないだろう。
同曲は、アメリカで1978年に放映されたドラマ「A Woman Called Moses(モーゼと呼ばれた女性)」サウンドトラックの一曲。下のジャケット写真はDVD盤。
ジャケット写真:ドラマ「A Woman Called Moses(モーゼと呼ばれた女性)」
このドラマで主人公として描かれた女性は、19世紀半ばのアメリカにおける秘密結社「地下鉄道(アンダーグラウンド・レールロード)」で活躍したハリエット・タブマン(Harriet Tubman)のこと。
モーゼ(モーセ)とは、旧約聖書『出エジプト記』上の人物。イスラエル人のエジプト脱出を導いた。
一体なぜ、秘密結社「地下鉄道」を題材としたドラマの曲が、日本の箱根駅伝テレビ中継のテーマ曲として使われたのだろうか?
その理由としては、「地下鉄道」の組織形態と活動内容が大きく関わっていると考えられる。大雑把に言えば、この「地下鉄道」の活動形態は、まさに「駅伝」なのだ。
まずは、トミー・ヤング『I Must Go』の英語の歌詞と和訳を掲載したうえで、この曲とドラマの内容、そして箱根駅伝との関係について、簡単に解説してみたい。
【YouTube】2010年・第86回箱根駅伝エンディング(I must go)
歌詞の意味・和訳(意訳)
『I Must Go』
作曲:Coleridge-Taylor Perkinson, Van McCoy
I must go where He leads me
I must follow till we are free
Voices, visions made my decision
I hear my Father calling me
行かねばならない 主が導く場所へ
従い抜く 自由を手にするまで
汝の声と幻視が私を導く
父なる神が私を呼んでいる
Chains can't bind me
And fear is behind me
For I hear my Father
He's calling me
鎖は私を縛れない
恐れも乗り越えた
父なる神が
私を呼んでいるから
I must go where He leads me
I must follow till we are, are free
Life He gave me
Men can't enslave meFor I am a child of destiny, of destiny
行かねばならない 主が導く場所へ
従い抜く 自由を手にするまで
主に与えられたこの命
私を縛り付けることはできない
私には使命があるから
秘密結社「地下鉄道」とは?
秘密結社「地下鉄道(アンダーグラウンド・レールロード)」とは、19世紀半ばのアメリカで、南部州の黒人奴隷を北部の自由州へ脱走させる手助けをしていた秘密組織。
地下鉄道で活躍した「モーゼと呼ばれた女性」ハリエット・タブマンは、1850年から1860年の間に約19回の南部との往復を繰り返し、自らの命を懸けて300人余りの奴隷達の逃亡を助け、自由に導いたという。
挿絵:逃亡の様子 A Ride for Liberty 1862(出典:Wikipedia)
1852年に作曲されたフォスター歌曲『懐かしきケンタッキーの我が家』や『主人は冷たい土の中に』では、当時のアメリカにおける黒人奴隷らの様子が歌詞に描写されている。
中継地点は「停車駅」
「鉄道」という名前がついているが、これは組織の人的ネットワークを鉄道網に例えただけで、物理的な輸送機関があったわけではない。
地下鉄道のメンバーは、地域ごとの小さな班に分けられ、これらは独立した「停車駅」の役割を果たした。
ひとつの「停車駅」から次の「停車駅」へ、それぞれ違う人々の助けを借りて、逃亡者は目的地まで進んだ。各駅が人的に独立していることで、逃亡ルートの全容を誰ひとりとして知ることがなく、地下鉄道全体の秘密と奴隷たちの安全が確保された。
地下鉄道と箱根駅伝
「停車駅」から「停車駅」へ逃亡者の命をつなぐ「地下鉄道」の活動は、大手町から箱根の各区間でタスキをつなぐ「駅伝」のレース形態に相通ずるものがある。
『I Must Go』が箱根駅伝テレビ中継テーマ曲として使われたのは、「地下鉄道」と「箱根駅伝」の間にこうした関連性があったからではないかと考えられる。
ちなみに、「地下鉄道」に関連する人物としては、童謡『ごんべさんの赤ちゃん』の「ごんべさん」のルーツである活動家ジョン・ブラウンが有名。
ジョン・ブラウンの歌はアメリカ南北戦争で北軍の『リパブリック讃歌』となり、日本の家電量販店『ヨドバシカメラの歌』となって今に伝えられている。
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