地下鉄道とは? 意味・歴史 アメリカの秘密組織
奴隷逃亡を助けた秘密結社アンダーグラウンド・レイルロードとは?
「地下鉄道」(Underground Railroad/アンダーグラウンド・レイルロード)とは、19世紀アメリカにおいて、南部州の奴隷が北部州へ逃亡する手助けをした秘密組織。その逃亡ルートを指す場合もある。
ここでの「地下」とは、物理的に地面の下という意味ではなく、見つからないように隠れながら、潜んでいる、秘密の、といった意味合い。
ゴールドラッシュが起きた1849年頃までには、数万人の奴隷が地下鉄道の助けで逃亡に成功したと推測されている。
挿絵:The Underground Railroad(作:Charles T. Webber)
地下鉄道のメンバーは、各地域ごとの小さな班(地下鉄道の駅)に細分化され、バケツリレーのように、駅から駅へ、逃亡奴隷らを移動させていった。
そのため、各班は隣の班(駅)までの情報しか持つことができず、誰ひとりとして逃亡ルートの全容を知る事はなかった。こうすることで、地下鉄道の秘密と奴隷たちの安全を確保することができた。
挿絵:Eastman Johnson - A Ride for Liberty 1862(出典:Wikipedia)
ゴールドラッシュ後はカナダへ
1849年のゴールドラッシュで人口が増えたカリフォルニアでは、1850年にカリフォルニア州が新たに誕生した。
カリフォルニア州は、奴隷制度が認められない自由州となったため、南部奴隷州が猛反発。カリフォルニアを自由州と認める代わりに、今まで以上に厳格な逃亡奴隷取締法を施行することを条件とした(いわゆる「1850年の妥協」)。
この取締法がある限り、地下鉄道が北部州へ逃亡させてもいずれ捕まってしまうため、イギリス統治下にあったカナダへ逃亡ルートが伸びていった。
イギリスでは、1833年に奴隷制が完全に廃止されていた。カナダ・オンタリオ州のアフリカ系住民が多いのはこのため。
黒人霊歌と暗号
黒人霊歌の歌詞には、キリスト教の洗礼に関連して、「川に入れ(Down in the River)」、「水の中を歩け(Wade in the Water)」などの表現が見られる。
これらの表現については、奴隷らによる自由への願望や、実際の逃亡の際に身を隠すための手段を暗示しているとも解釈できるようだ。
実際、黒人霊歌『Down in the River to Pray(ダウン・イン・ザ・リヴァー・トゥ・プレイ)』の歌詞については、「地下鉄道」との関係が指摘されることがある。
黒人霊歌『行け、モーセ(モーゼ)』についても、地下鉄道による解放運動を象徴する曲として、現代におけるテーマソング的な位置付けで作曲されたのではないかとする指摘が有力に唱えられている。
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