最上川舟唄 歌詞の意味

ヨーイサノマガショー エンヤコラマカセー♪

『最上川舟唄』(もがみがわふなうた)は、山形県の民謡を元にして昭和11年(1936年)にNHKの企画で作曲された舟歌・船頭唄。

「ヨーイサノマガショー エンヤコラマカセー」の部分は、最上川の船頭らによる掛け声に基づいており、一説にはロシア民謡『ヴォルガの舟歌』を強く意識して作曲されたという(詳細は後述)。

上川中流の峡谷・最上峡

「酒田さ行ぐさげ 達者(まめ)でろちゃ」から始まる本唄の部分は、『酒田追分』(さかたおいわけ)や『松前くずし(新内くずし)』などが転用されているという。

古い舟唄や民謡の一部を原曲としているようだが、実際には伝統的な民謡ではなく、『ちゃっきり節』のような新民謡(創作民謡)の一つと言える。

写真:最上川中流の峡谷・最上峡(出典:Wikipedia)

【YouTube】歌:民謡日本一の山形娘・朝倉さや『最上川舟唄』

ジャケット写真:朝倉さや『最上川舟唄』収録アルバム「マストアイテム」

歌詞

ヨーイサノマガショ エンヤコラマカセ(マガセ)
エーエンヤーエーエエンヤーエーエエ
エーエエンヤーエード
ヨーイサノマガショ エンヤコラマカセ

酒田さ行ぐさげ 達者(まめ)でろちゃ
ヨイトコラサノセー
流行風邪(はやりかぜ)など ひかねよに

股(まっかん)大根(だいご)の塩汁煮(しょっしるに)
塩(しんよ)しょっぱくて 喰らわんねっちゃ

碁点(ごでん) 隼(はやぶさ)ヤレ
三ケの瀬(みがのせ)も ヨイトコラサノセー
達者(まめ)で下ったと 頼むぞえ

あの女(へな)が居ねげりゃ
小鵜飼乗り(こうがいぬり)も
すねがったちゃ

山背風(やませかぜ)だよ 諦めしゃんせ
ヨイトコラサノセー
俺を恨むな 風恨め

あの女(へな)ためだ
なんぼとっても 足(た)らんこたんだ

歌全体のストーリーは?

『最上川舟唄』の歌詞は、仕事で酒田まで舟を漕ぐ最上川の船頭が、残していく女性に対して想いを歌う内容となっている。時系列にはなっていない。

女性とは夫婦なのか恋人なのか、具体的な関係性については明らかではない。恋人関係としても、もしくは結婚したばかりの新婚夫婦としても、様々に解釈できそうだ。

歌詞の意味(大意)

酒田まで舟を漕ぐ 元気でいろよ
流行り風邪など ひかないように

股大根の塩汁煮なんて
しょっぱくて食べられないから

川の難所「碁点 隼 三ケの瀬」も
無事に越したと伝えてくれ

あの娘がいなけりゃ
つらい船乗りなんてしなかったよ

順風が吹いて出発の時だ
名残惜しいが諦めろ
俺を恨むな 風を恨め

あの娘のために
いくら稼いでも足りない

股大根は二股の暗喩?

股大根(まっかん大根/まっか大根/まっかんだいご)は、二股や三股に分かれた大根のこと(下写真/出典:ブログ「Rico's Room」)。

山形県庄内地方では、12月9日に行われる伝統行事「大黒様のお歳夜(おとしや)」において、股大根を大黒様にお供えする風習がある。

股大根 まっかん大根 まっか大根

『最上川舟唄』の歌詞にわざわざ「股大根」を登場させた理由としては、一つは、最上川・庄内地方の伝統行事「大黒様のお歳夜」との関連で、地元を象徴するキーワードとして歌に盛り込みたかったということが考えられる。

もう一つは、筆者の私見では、股大根は女性一般の暗喩か、二人の女性と同時に付き合う「二股(ふたまた)」を暗示しているのではないかと推測される。

つまり、股大根から始まる歌詞では、他の女の所へ遊びに行くわけではないよ、二股をかけるようなことはしないよと、留守を守る女性を安心させようとする男性の意思が暗に表現されているようにも感じられる。

ロシア民謡『ヴォルガの舟歌』を意識?

『最上川舟唄』は、NHKの依頼により、山形県西村山郡大江町左沢(あてらざわ)在住の渡辺国俊が作詞し、後藤岩太郎が編曲した新民謡(創作民謡)。

ブログ「悠々自適」の記事「『最上川舟歌』誕生物語」によれば、『最上川舟唄』の作曲に当たって、後藤氏はロシア民謡『ヴォルガの舟歌』を思い起こしたという。

悩むうちに後藤は『ボルガの舟歌』を思い起こし、これにヒントを得て掛声を直し、古老たちと舟に乗り込み一杯やりながら歌うなど試行錯誤を重ねた。それを渡辺が歌詞を直した上で、昭和十一年初めて放送されるに至った。

<引用:ブログ「悠々自適」の記事「『最上川舟歌』誕生物語」より>

さらに、山形県西村山郡大江町の公式Webサイトによれば、『最上川舟唄』とロシア民謡『ヴォルガの舟歌』のつながりについて、次のように解説している。

後藤氏らは、手記に次のように書き残しています。

<中略>

”夜中に目をさまして考えてみると、ヴォルガの舟唄を思い出したが、掛け声を少しなおして、唄の新内くずしの部分を除いて作ったらおもしろいと、いろいろうたい自信が出てきたが、最後にしっくりしない。

それで一升ビンを下げ作太郎さんと、いくども最上川を上下し、一週間ほどしてようやく自信がつき、渡辺氏を訪ね披露した。

うたはいいにしても歌詞が一つしかないので、渡辺氏の協力によって舟唄にあうように仕上げたのです。(後藤岩太郎遺稿より)

<引用:山形県西村山郡大江町公式Webサイトより>

これらの記事により、『最上川舟唄』の掛け声「ヨーイサノマガショー エンヤコラマカセー」の部分は、ロシア民謡『ヴォルガの舟歌』から大きな影響を受けていることが分かる。

さらに、「歌詞が一つしかない」という記述から、歌詞についても大部分が新たに作詞されたか、既存の民謡から引用されたものであることが推測される。

実際、北海道民謡『江差追分(えさしおいわけ)』では『最上川舟唄』と同じ歌詞が一部使われており、『最上川舟唄』の作詞にあたって何らかの参考にされた可能性が考えられる。

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