暁に祈る 古関裕而

古関・野村・伊藤の「福島三羽烏」による昭和初期のヒット曲

『暁に祈る』(あかつきにいのる)は、1940年公開の映画「暁に祈る」主題歌として作曲された戦時歌謡。作詞:野村俊夫、作曲:古関裕而(こせき ゆうじ)

歌は、福島県出身のコロムビア専属歌手・伊藤 久男(いとう ひさお)。野村俊夫と古関裕而も福島県出身であり、三人合わせて「福島三羽烏(さんばがらす)」「コロムビア三羽烏」などと呼ばれることも。特に野村と古関は実家が近所の幼馴染。

古関メロディーベスト30

2020年放送のNHK朝ドラマ「エール」でもこの「福島三羽烏」が取り上げられており、その代表作ともいえる『暁に祈る』が注目を集めた。

ジャケット写真: あなたが選んだ古関メロディーベスト30(『暁に祈る』収録)

【YouTube】暁に祈る 伊藤久男

歌詞

ああ あの顔で あの声で
手柄頼むと 妻や子が
ちぎれる程に 振った旗
遠い雲間に また浮かぶ

ああ 堂々の 輸送船
さらば祖国よ 栄えあれ
遥かに拝む 宮城(きゅうじょう)の
空に誓った この決意

ああ 傷ついた この馬と
飲まず食わずの 日も三日
捧げた生命 これまでと
月の光で 走り書き

ああ あの山も この川も
赤い忠義の 血がにじむ
故国(くに)まで届け 暁に
あげる興亜(こうあ)の この凱歌

歌詞の補足

宮城(きゅうじょう)とは、天皇のすむ所、皇居。明治中期から終戦直後まで用いられた名称。

興亜(こうあ)とは、アジア諸国の勢いを盛んにすること。また、勢い盛んなアジア。

曲名の「暁(あかつき)」とは、太陽の昇る前のほの暗いころを意味する。「あかとき(明時)」の音が変化したもの。

「暁(あかつき)」の後の空は「東雲(しののめ)」、その後は「あけぼの」と表現される。

「ああ」は作詞者のため息?

映画「暁に祈る」は、陸軍が直接指導・後援した作品で、ロケに実戦部隊が動員されるほどの力の入れようだった。

その主題歌についても、陸軍の熱のこもった指導が入り、7回も書き直しを命じられたという。度重なる修正に、作詞者の野村俊夫は思わず「あ~あ」とため息を漏らし、それが歌詞の「ああ」に反映されているという冗談のようなエピソードも残されている。

参照:日本コロムビア「歌謡で辿る昭和の痕跡 軍歌・戦時歌謡大全集(7) 映画主題歌(1)」解説

古関裕而による有名な戦時歌謡

若鷲の歌(予科練の歌)
映画『決戦の大空へ』主題歌。別名「予科練の歌」。
露営の歌(勝ってくるぞと勇ましく)
「ジョジョの奇妙な冒険」第4部替え歌の元ネタにも

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