若鷲の歌(予科練の歌) 古関裕而

若い血潮の予科練の 七つボタンは桜に錨

『若鷲の歌』(わかわしのうた)は、海軍飛行予科練習生(予科練)を題材とした1943年(昭和18年)公開の日本映画「決戦の大空へ」主題歌として作曲された戦時歌謡

作曲は、2020年放送のNHK朝ドラマ「エール」で主人公のモデルとなった古関 裕而(こせき ゆうじ)

ドラマ「エール」では、古関裕而役の古山裕一が召集令状を受けたが、「決戦の大空へ」主題歌作曲という名目で召集解除となるというストーリーが放送された。

零式艦上戦闘機52型

写真:三菱零式艦上戦闘機52型(出典:MONOCHROME SPECTER)

作詞は、『青い山脈』、『蘇州夜曲』、『東京音頭』、『鞠と殿さま』で知られる詩人・文学者の西條 八十(さいじょう やそ)

西条八十と古関裕而の両名は、茨城県の霞ヶ浦飛行場に置かれた土浦海軍航空隊に一日入隊し、その経験が『若鷲の歌』作曲に行かされている。

ちなみに、古関裕而作曲による戦時歌謡としては、「勝ってくるぞと勇ましく」が歌い出しの『露営の歌』も有名。

【YouTube】 若鷲の歌(予科練の歌)

歌詞の意味・解説

『若鷲の歌』の歌詞について、その意味や背景を若干補足してみたい。次のとおり歌詞の一部を引用する。

若い血潮の 予科練の
七つボタンは 桜に錨(いかり)
今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ
でっかい希望の 雲が湧く

燃える元気な 予科練の
腕はくろがね 心は火玉
さっと巣立てば 荒海越えて
行くぞ敵陣 なぐり込み

<引用:西條 八十『若鷲の歌』一番・二番の歌詞より>

「七つボタンは 桜に錨」は、海軍飛行予科練習生(予科練)が着用する濃紺の詰襟制服のこと。海軍の象徴である桜と錨が描かれた7個のボタンが付いており、七つボタンは予科練を表す隠語となった。

写真:短ジャケット7つボタン型の予科練(出典:Wikipedia)

ボタンの数が7つある意味としては、「世界の7つの大陸・七大洋(七つの海)」の象徴であるとともに、海軍の艦隊勤務を表す「月月火水木金金」の訓練を表しているという。

桜と錨が描かれた旧海軍のボタン

写真:桜と錨が描かれた旧海軍のボタン(レプリカ)出典:制服のフジWEBショップ

海軍カレーも「桜に錨」

旧日本海軍の糧食をルーツとする海軍カレー関連商品として、旧海軍の横須賀鎮守府にちなんだ「よこすか海軍カレー」が発売されているが、このパッケージにも『若鷲の歌』の歌詞にある「桜に錨」がデザインされている。

よこすか海軍カレー

写真:よこすか海軍カレーネイビーブルー(180g×2食入り)×2箱セット

現在の海上自衛隊では、長い海上勤務中でも曜日感覚を保つため、毎週金曜日はカレーライス(海上自衛隊カレー)を食べる習慣になっている。

海上自衛隊カレーは艦艇・部署ごとに異なり、同じ味やレシピは存在しないという。

後半の歌詞について

参考までに、『若鷲の歌』後半の三番と四番の歌詞についても簡単に見てみよう。該当する歌詞を次のとおり引用する。

仰ぐ先輩 予科練の
手柄聞くたび 血潮が疼く
ぐんと練れ練れ 攻撃精神
大和魂にゃ 敵はない

生命惜しまぬ 予科練の
意気の翼は 勝利の翼
見事轟沈 した敵艦を
母へ写真で 送りたい

<引用:西條 八十『若鷲の歌』三番・四番の歌詞より>

一番から四番まですべて「予科練の」という歌詞が同じ位置で用いられ、曲全体を貫く題材として反復的に明確な印象を与えている。

「予科練の手柄」「予科練の 勝利の翼」「見事轟沈」など、華々しく活躍する強い予科練のイメージが強調されている。

古関裕而による有名な戦時歌謡

暁に祈る
古関・野村・伊藤の「福島三羽烏」による昭和初期のヒット曲
露営の歌(勝ってくるぞと勇ましく)
「ジョジョの奇妙な冒険」第4部替え歌の元ネタにも

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