春はあけぼの
清少納言「枕草子」 意味・現代語訳

学校の古典の教科書にも掲載される平安時代の随筆

「春はあけぼの」の出だしで有名な清少納言の随筆『枕草子』(まくらのそうし)。学校の古典の教科書にも掲載される『枕草子』冒頭の部分(第一段)について、原文と意味・現代語訳を簡単にまとめてみた。

『枕草子』第一段では、「春はあけぼの」、「夏は夜」、「秋は夕暮れ」、「冬はつとめて(早朝)」と、春夏秋冬それぞれの季節における趣深い情景や風物詩について述べられている。

春はあけぼの

写真:春の早朝(出典:GANREF/撮影者:すずろ)

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

現代語訳

春はほのぼのと夜が明けはじめるころ(が良い)。だんだんと白んでいく山際が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている(様子が良い)。

「春のうららの隅田川」との関係

ちなみに、「春のうららの隅田川」の歌いだしで知られる瀧廉太郎『花』の2番の歌詞は、『枕草子』の春と秋のくだりを意識した表現となっている。

関連ページ:春の童謡・唱歌・日本のうた

夏は夜

写真:石川県白山市 新中宮温泉のホタル(出典:一里野高原ホテル ろあん)

夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。

現代語訳

夏は夜(が良い)。月が明るい頃は言うまでもなく、闇夜もまた、が多く飛び交っている(様子も良い)。また、ほんの一匹二匹が、ぼんやりと光って飛んでいくのも趣がある。雨が降るのも趣があって良い。

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秋は夕暮れ

写真:秋の夕暮れ(出典:カメラ片手にお散歩ダイアリー)

秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。

現代語訳

秋は夕暮れ(が良い)。夕日が差して山の端にとても近くなっているときに、カラスががねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐ様子さえ、しみじみと心打たれる。言うまでもなく、雁などが連なって飛ぶ様子が、とても小さく見えるのは、たいへん趣が深い。日が暮れてから聞こえてくる、風の音や虫の声などは、また言うまでもない(言うまでもなく趣が深い)。

関連ページ:秋の童謡・唱歌・日本のうた

冬はつとめて

写真:京都「美山」の雪灯籠(出典:4travel.jp)

冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。

現代語訳

冬は早朝(が良い)。雪が降っているのは言うまでもなく、霜がとても白いのも、またそうでなくても非常に寒い早朝に、火などを急いでおこして、炭を持ってあちこち移動するのも、とても冬の朝らしい。昼になって、寒さがだんだんとやわらいでいくと、火桶の炭火も白い灰が目立って見栄えがしない。

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