鳥啼歌 とりなくうた 歌詞の意味
鳥啼く声す 夢覚ませ 見よ明け渡る 東を
『鳥啼歌(とりなくうた)』は、明治36年(1903年)に新聞上で公募・発表された「いろは歌」の一つ。『とりなく歌』、『とりな歌』などの表記も見られる。
『いろは歌(いろはにほへと)』と同じく、すべて仮名を重複せずに使った韻文(いんぶん)だが、『鳥啼歌』では「ん」を加えた48文字となっている。
このページでは、『鳥啼歌(とりなくうた)』の歌詞の意味と、若干分かりにくい古語について簡単にまとめてみたい。
画像:とりなく歌(出典:ブログ「先祖を尋ねて」)
歌詞と意味
とりなくこゑす ゆめさませ
(鳥啼く声す 夢覚ませ)
みよあけわたる ひんかしを
(見よ明け渡る 東を)
そらいろはえて おきつへに
(空色映えて 沖つ辺に)
ほふねむれゐぬ もやのうち
(帆船群れゐぬ 靄の内)
ひんがし
「みよあけわたる ひんかしを」の「ひんかし」とは、現代における「ひがし(東)」の古語。「ひむがし」「ひんがし」などの表記もなされる。
語源は、太陽が登る方向という意味の「日向かし(日向処/ひむかし)」。「し」は風を表すとして「日向風」が語源とする説も有力なようだ。
ちなみに、「西(にし)」の語源は、太陽が去るの方向を意味する「去にし(いにし)」。
「沖つ」の「つ」
「そらいろはえて おきつへに」の「おきつへに(沖つ辺に)」は、岸から離れた沖の辺りに、といった意味。
ここでの「つ」は、「~の」を意味する格助詞。つまり、「沖つ」は「沖の」を意味し、「沖つ波」、「沖つ鳥」なども同様。
古典では、「天つ風(あまつかぜ)」「先つ年(さきつとし)」のように使われる。
まつげの「つ」も、同様に「目の毛」を意味する「つ」の古典的用法の名残。
二日前を表す「おとつい(おととい/一昨日)」の「つ」も同様。「おと」は遠方を意味する古語「おち・をち(遠)」に由来し、最後の「い」は「日(ひ)」の意味。
七夕伝説に登場する「たなばたつめ(棚機津女)」の「つ」も同様に「~の」を表す用法。
いろは歌へのリスペクト?
『鳥啼歌(とりなくうた)』の歌詞には、元祖『いろは歌(いろはにほへと)』と部分的に一致する箇所が2か所確認できる。
一つは「夢」。『いろは歌』では「あさきゆめみし ゑひもせす」とあり、『鳥啼歌(とりなくうた)』では、「とりなくこゑす ゆめさませ」として「夢」が使われている。
もう一つは「いろは」。『鳥啼歌』では若干分かりにくいが、「そらいろはえて おきつへに」で「いろは」の音が登場する。
これらが偶然なのか意図的なのかは分からないが、元祖『いろは歌』へのリスペクトやオマージュとして組み込まれたものだとしたら大変興味深い。
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