交響曲第2番 ハ短調『小ロシア』

チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)

チャイコフスキー『交響曲第2番 ハ短調』作品17は、3つのウクライナ民謡が楽曲に大胆に取り入れられ、『小ロシア』の愛称で親しまれている。演奏時間はチャイコフスキーの交響曲では最も短い。

1873年に初演され大成功を収めたが、その後チャイコフスキー自身の音楽思想に大きな変化が生じたため、1880年に第1楽章がほぼ全面改訂され、残りの楽章にも管弦楽法的に大きな変更が加えられている。

なお、「小ロシア(ルーシ)」とは、歴史的にウクライナ人(ルーシ人)の領土を指すウクライナの旧称のこと。20世紀以降は(ウクライナの立場から)政治的に否定的な意味で解釈される場合があるので注意。

写真:ウクライナの世界遺産 聖ソフィア大聖堂 (キエフ)

【試聴】 Symphony No. 2 "Little Russian"

各楽章とウクライナ民謡

第1楽章

ホルン独奏によりウクライナ民謡『母なるヴォルガの畔で Вниз по матушке, по Волге』の変奏曲が、第2主題ではリムスキー=コルサコフ『ロシアの復活祭』の旋律が転用されている。

第2楽章

中間部にウクライナ民謡『回れ私の糸車 Пряди, моя пряха』が引用されている。また、チャイコフスキーが1888年に作曲した幻想序曲『ハムレット』でも同楽章のメロディが転用されている。

第3楽章

具体的なウクライナ民謡は使われていないが、曲全体の性格として民謡風な響きをもつ。

第4楽章

第1主題としてウクライナ民謡『鶴 Журавель』が引用される。ウクライナに住んでいた妹アレクサンドラ・ダヴィドヴァをチャイコフスキーが訪ねた際、使用人のゲラシモヴィチがチャイコフスキーに同曲を歌って聞かせたという。チャイコフスキーはかつて冗談で「終楽章の成功は、真の作曲者ピョートル・ゲラシモヴィチのお蔭」と述べたという逸話も残されている。

かえるの合唱(かえるの歌)との関係は?

余談だが、チャイコフスキー『交響曲第2番』第4楽章の冒頭で流れる第1主題は、日本の童謡『かえるの合唱(かえるの歌)』のメロディの一部とよく似ている。

ウクライナ民謡『鶴 Журавель』が引用された部分なので、『かえるの合唱』とウクライナ民謡との関係性の話となるが、『かえるの合唱』はドイツ民謡という解説が一般的に多数を占めている。

ルーツが同じなのか、偶然の一致なのか、詳しい関係性については全く定かではないが、ここは素直にメロディの類似性を楽しんで聴くのがよろしいのではと思われる。

特集ページ「そっくりメロディ研究室」では、このように一部のメロディが良く似た2曲を色々まとめて比較しているお遊びコーナーを展開している。ご興味のある方は是非お立ち寄りいただきたい。

童謡『やぎさんゆうびん』との関係は?

作詞:まど・みちお、作曲:團 伊玖磨(だん いくま)による童謡『やぎさんゆうびん』のメロディについても、チャイコフスキー『交響曲第2番』第4楽章との類似性を指摘されることがあるようだ。

詳しい経緯や真相はともかくとして、この2曲についても予断無く「偶然の一致」を楽しんでおくのが平穏で賢明だろう。

なお、團 伊玖磨氏が作曲した童謡については、他にも代表曲『ぞうさん』について同様の疑惑が存在する。詳しくは『ぞうさん』の解説で。

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