うれしいひなまつり 歌詞の意味
あかりをつけましょ ぼんぼりに お花をあげましょ 桃の花♪
「あかりをつけましょ ぼんぼりに♪」が歌いだしの『うれしいひなまつり』は、作詞:サトウハチロー、作曲:河村光陽により1936年に発表された日本の童謡。
曲名のとおり、女の子のすこやかな成長を祈る年中行事「雛祭り(ひなまつり)」を題材としている。旧暦では桃の花が咲く季節にあたるため「桃の節句」とも呼ばれる。
なお、童謡『うれしいひなまつり』の歌詞には、いくつか間違い・誤りも見られる。具体的には、「お内裏様とお雛様」、「あかいお顔の右大臣」の2か所。詳細は後述する。
その他、『うれしいひなまつり』の歌詞で補足すべき意味や由来などについて、簡単にまとめてみた。
【YouTube】うれしいひなまつり
歌詞:うれしいひなまつり
あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓
今日はたのしい ひなまつり
お内裏様(だいりさま)と おひな様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした 姉様に
よく似た官女の 白い顔
金のびょうぶに うつる灯(ひ)を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒 めされたか
あかいお顔の 右大臣
着物をきかえて 帯しめて
今日はわたしも はれ姿
春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひなまつり
雛段飾りの写真
童謡『うれしいひなまつり』の歌詞では雛段(ひなだん)飾りの様子が描写されている。一段目がお内裏様とお雛様、金の屏風に左右のぼんぼり。
写真:七段飾(出典:桂甫作安藤人形店Webサイト)
二段目が三人官女、三段目が五人囃子(ごにんばやし)、四段目の矢をもった二人は護衛の随臣(随身/ずいじん)、五段目は従者の仕丁(しちょう)。
ぼんぼりの意味・語源
「ぼんぼり」とは、 ろうそくをともす燭台(しょくだい)を紙や布で囲った古い灯火具。雛段飾りでは、お内裏様とお雛様の外側に左右一つずつ置かれる。
ろうそくの明かりが紙や布によって「ほんのり」と優しく広がることから、語源として「ほんのり」が「ぼんぼり」に変化(転訛)したと考えられている。
「お内裏様とお雛様」は間違い?
歌詞では、「お内裏様(おだいりさま)」は一段目の向かって右側の「男雛(おびな)」の意味で使われている。
しかし、「内裏(だいり)」とは天皇陛下の住む御殿、皇居を意味しており、天皇皇后の「結婚の儀」を表現している雛段飾りにおいて、お内裏様は男雛・女雛で一対の人形を指すことになる。
つまり、「お内裏様」と言った時点で男雛・女雛の両方を示していることになり、「お内裏様とお雛様」のように、さらに「お雛様」を追加していう必要はないと言える。
なお、「お雛様」自体も男雛・女雛の両方を指すので、お雛様を女雛のみの意味で使うのも間違いといえる。
関連ページ:お内裏様 お雛様 左右どっち?
官女の意味
雛段飾りの二段目に配置された三人の「官女(かんじょ)」とは、宮中や将軍家などに仕える女性のこと。「女官(にょかん)」とも。
赤いお顔は左大臣?
歌詞で「あかいお顔の右大臣」と歌われている「右大臣」は、雛段飾りにおける四段目で弓をもった二人の護衛「随臣(随身/ずいじん)」の一人。
写真:随臣(出典:桂甫作安藤人形店Webサイト)
肌色で顔が赤く見えるのは向かって右側の人形なので、歌詞では「あかいお顔の右大臣」と表現されていると思われる。
しかし、雛段飾りにおける左右は、お内裏様から見た左右に従って配置されるので、それを対面から眺める側の左右とは逆になる。
つまり「右大臣」は誤りで、正しい歌詞は「あかいお顔の左大臣」となることになる。
白酒と甘酒の違い
「すこし白酒 めされたか」の「白酒」は、酒税法上のリキュールに該当し、アルコール分も高い。家庭で作ることは法律上禁止されている。
関連ページ:甘酒と白酒の違いは? ひなまつり
右大臣は誤り?
右大臣(うだいじん)は、朝廷の最高機関「太政官」における事実上の長官であり、弓矢で武装した衣装を着ることはない。右大臣なら雛段飾りの二段目に来なければ不自然。
つまり、四段目の随臣(随身)について、右大臣の呼称を用いることは間違いと考えられる。
正しくは、向かって左側の赤い衣装の随臣は「右近衛少将(うこんのえのしょうしょう)」、右側の黒い方は「左近衛中将(さこんえのしょうしょう)」となる(参照:人形工房天祥Webサイト)。
お嫁にいらした姉様とは?
「お嫁にいらした姉様」とは、お嫁に行った姉さまの意味。「お嫁に来た」の意味ではないようだ。
「いらした」は、「行く」、「来る」の尊敬語「いらせらる(られる)」か、その現代語「いらっしゃる」の短縮形と推測される(正しい用法なのかは不明)。
一説には、婚約まもなく結核で18歳の若さで亡くなったサトウハチローの姉のことを暗示しているとの解説もあるようだ。
ひし餅の形の意味は?
ひな壇に飾る菱餅(ひし餅)の形の意味については諸説あるが、当サイトの見解としては、邪気を払うためのトゲの意味合いがあると考える(ヒシの実のトゲ)。
節分の際に、トゲのあるヒイラギの枝とイワシの頭を飾るのと同じ考え方。
関連ページ:菱餅 ひしもち 意味・由来
メキシコでは歌謡曲にカバー
- 悲しきみなしご ロス・パンチョス
- メキシコのラテン音楽グループ「ロス・パンチョス(Los Panchos)」が、童謡『うれしいひなまつり』を『Pobres Huerfanitos(悲しきみなしご)』として1960年代にカバー。
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