お墓参りとお彼岸 意味・理由は?

由来・ルーツ/年中行事・年間行事トピックス

春と秋のお彼岸シーズンの年中行事といえば、故人や祖先の墓を訪れ供養を行ういわゆる「お墓参り」が欠かせない。

お彼岸は仏教由来の伝統文化なので、お墓参りがお彼岸と結びつくこと自体にはそれほど疑問はないが、具体的にどういった理由・由来で関連付けられたのかについては、不確かな部分が少なくない。

日本のお墓と花

このページでは、「お墓参り」と「お彼岸」の関係性や由来・ルーツについて、浄土信仰的な視点から大まかな解説を試みることとしたい。参考程度にお読みいただければ幸いだ。

お彼岸と浄土信仰

「彼岸 ひがん」という語句は、浄土信仰と密接な関係にあり、「到達・達成」を意味するインドのサンスクリット語「波羅蜜」(はらみた、はらみった、パーラミター)に由来する。

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「波羅蜜」は「到彼岸(とうひがん)」とも意訳されるが、この「彼岸に到達する」とは、煩悩に満ちた現世「此岸(しがん)」から、仏教的な修行や信心により、阿弥陀仏の西方極楽浄土に至ることを表している。

西方極楽浄土とは?

大乗仏教の経典「阿弥陀経」(あみだきょう)によれば、「これより西方、十万億の仏土を過ぎて世界有り、名けて極楽と曰う」とあり、阿弥陀仏の極楽浄土、すなわち「彼岸」は「西」の方角と結び付けられている。

この西方極楽浄土(せいほうごくらくじょうど)は、宗派によって呼び方や概念は異なるが、仏教における聖域・理想の世界として考えられている。

ちなみに、お墓を建てる際、お墓の向きを東向きにすると、お墓参りの際に西を向いてお参りすることができる(浄土の方向へお参りできる)ので、西向きよりも東向きの墓地の方が人気があり値段が高い傾向にあるという。

お彼岸に太陽は真西へ沈む

お彼岸と西方極楽浄土との関係は、天文学的なタイミングとも合致している。「お彼岸はいつ? 意味・由来は?」のページでも解説しているが、お彼岸は春分の日と秋分の日の前後に行われる年中行事だ。

春分の日と秋分の日(お彼岸の中日)には、太陽は真東から昇って真西に沈む。つまり、お彼岸の中日の夕陽は西方極楽浄土を指し示すことになり、そこから放たれる陽の光は、まさに阿弥陀如来の後光ともいうべき救いの光なのだ。

お彼岸の中日に夕陽を拝むことは、すなわち阿弥陀仏の西方極楽浄土を拝むことに等しい。浄土信仰の影響下にあった昔の人々にとっては、どれだけ大きなイベントであったか想像に難くない。

日本神話でも天照大神(あまてらすおおみかみ)をはじめとする太陽信仰は古来から日本に根付いており、「彼岸(ひがん)」という言葉自体も、「日願(ひがん)」と説明されるほどに、実は彼岸は太陽と密接に結び付いた行事であったことがうかがえる。

浄土に近づくための寺参りと墓参り

年2回、夕陽によって西方極楽浄土が示される一大契機に、浄土信仰の諸宗では、お彼岸の中日と前後3日の合計1週間にわたり、彼岸会(ひがんえ)と呼ばれる仏事・法要が大々的に執り行われる。

信徒らはこぞってお寺へお参りし、彼岸、すなわち極楽浄土へ至るための信心を深めていった。その一環として、お寺が管理するお墓にもお参りすることになるが、このお墓参りという行為には、先祖や故人へ思いをはせると同時に、自らもやがて浄土へ至るべく、(浄土にいる)祖先らの声にお墓の前で耳を傾けるという精神的な修行の意味合いがあったと思われる。

まとめ・結論

かつて、お彼岸という仏教的行事は、太陽が西方極楽浄土を指し示す春分の日と秋分の日に、阿弥陀仏の極楽浄土を心に思い浮かべながら拝む「日願(ひがん)」の性質をもった行事であり、一週間にわたる法要・彼岸会(ひがんえ)のために寺へ参り、浄土(彼岸)へ至るべく信心を深める浄土信仰の仏事であった。

それが明治維新以降の西欧化政策により仏教的な影響力が弱まり、一般庶民の間で西方極楽浄土に対する宗教的関心が薄れていくと、やがて浄土(彼岸)へ至るべく寺へ参り信心を深めるという行事も抜け落ち、先祖のお墓参りだけが慣習として残され、現代における一般的なお彼岸の年中行事(=お墓参り)につながっているのではないだろうか。

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