走れコウタロー 歌詞の意味

マキバオーやウマ娘もカバーした昭和の競馬コミックソング

『走れコウタロー』は、山本コウタローらのフォークグループ、ソルティー・シュガーが1970年にリリースしたコミックソング。

1996年には、テレビアニメ『みどりのマキバオー』主題歌「走れマキバオー」としてカバーされた。

また2021年には、スマホ向けゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」CMソング『走れウマ娘』としてカバーされるなど、平成、令和と時代を超えて親しまれている。運動会のBGMにも使われることがある。

ゴールドシップ ゴルシ 競走馬

写真:ゴールドシップ(出典:Wikipedia)

歌詞は競馬を題材としており、コウタローという名の競走馬がスタートダッシュで出遅れるが、奇跡が起こりトップに躍り出るという逆転劇が描かれる。

途中で競馬実況や記者会見のパロディが挟まれるなど、曲全体でおふざけ全開の歌詞となっている。

歌詞の内容や意味などについては後述する。

ちなみに、『走れコウタロー』はアメリカの『デイヴィー・クロケットの歌』と曲調が似ている。

コウタローの意味は?

「コウタロー」とは、バンドメンバーの山本コウタロー(厚太郎)から採られており、いつも練習に遅刻する山本に向かって「走れ、走れコータロー」とメンバーがはやし立てるフレーズだったという。

それが、中央競馬に在籍していた実在の競走馬「コウタロー」と重なり、競馬の歌として肉付けされて現在に至っている。

競争馬コウタローは、1962年から1966年で通算66戦15勝の成績を残した。日本ダービーには出走していない。

【YouTube】 走れコウタロー

歌詞の意味 前半

『走れコウタロー』の歌詞は、大きく分けて前半、ナレーション、後半の3パートに分かれる。まずは、前半の歌詞について次のとおり引用しながら、その意味や内容について簡単に補足してみたい。

これから始まる 大レース
ひしめきあって いななくは
天下のサラブレッド 4歳馬
今日はダービー めでたいな

走れ走れ コウタロー
本命穴馬 かきわけて
走れ走れ コウタロー
追いつけ追いこせ 引っこぬけ

スタートダッシュで 出遅れる
どこまでいっても 離される
ここでおまえが 負けたなら
おいらの生活 ままならぬ

走れ走れ コウタロー
本命穴馬 かきわけて
走れ走れ 走れコウタロー
追いつけ追いこせ 引っこぬけ

「サラブレッド」とは、馬の品種のひとつで、現在の競馬の主流となっている。イギリスで長い間かかって競走馬として作り出された品種で、「純血」「完全に育てあげられた」といった意味合いがある。

「4歳馬」については、人間の年齢でいうと20歳頃で、競走馬としての能力のピークは4歳秋とされる。

「穴馬(あなうま)」とは、番狂わせで勝ちをおさめそうな馬。ダークホース。

ダービーとは?

日本ダービー2021年

写真:日本ダービー2021年(出典:Wikipedia)

「ダービー」とは、中央競馬の重賞競走 (GIレース)「日本ダービー(東京優駿)」のこと。5月下旬頃に開催される。1973年(昭和48年)までは日本国内の最高賞金競走だった。

皐月賞は「最も速い馬が勝つ」、菊花賞は「最も強い馬が勝つ」といわれるのに対し、日本ダービーは「最も運のある馬が勝つ」といわれている。コウタローも強運の持ち主だったのだろう。

都知事ナレーション部分

次に、『走れコウタロー』のナレーション部分については、前半は当時の美濃部東京都知事の口調を模したパート、後半は競馬実況パートに大きく分かれる。

美濃部都知事は当時公営ギャンブルの廃止に取り組んでおり、東京都はそれまで行っていた競輪・地方競馬・競艇・オートレースと、全ての公営競技事業から撤退してしまった。

都知事を模倣したナレーション部分について、次のとおり歌詞を引用する。

エーこのたび、公営ギャンブルを、どのように廃止するかと、いう問題につきまして、慎重に検討を重ねてまいりました結果、本日の第4レース、本命はホタルノヒカリ。穴馬はアッと驚く大三元という結論に達したのであります。

「第4レース」となっているが、日本ダービーを含む重賞レースは、通常第11レース前後の終盤に組まれるので、『走れコウタロー』発売当時は「ダービーが第4レースなわけがないだろう」と多くの苦情が寄せられたという。

「アッと驚く」とは、クレージーキャッツのハナ肇(はじめ)によるギャク「アッと驚くタメゴロー」に由来。『走れコウタロー』がリリースされた前年の1969年に流行語となった。

麻雀 大三元 テンパイ

「大三元(だいさんげん)」は麻雀における役のひとつ(役満)。ここでは、公営ギャンブル廃止に取り組んだ都知事への軽い皮肉として解釈できる。

競馬実況パート

『走れコウタロー』の競馬実況パートについて、次のとおり歌詞を引用して内容を確認してみたい。

各馬ゲートインからいっせいにスタート。第2コーナーをまわったところで先頭は予想どおりホタルノヒカリ。

さらに各馬一団となってタメゴロー、ヒカルゲンジ、リンシャンカイホー、メンタンピンドライチ、コイコイ、ソルティーシュガー、オッペケペ、コウタローとつづいております。

第3コーナーをまわって、第4コーナーにかかったところで、先頭は予想どおりホタルノヒカリ、期待のコウタローは大きくぐっとあいて。さあ、最後の直線コースに入った。

あっ、コウタローがぐんぐん出て来た。コウタロー速い。コウタロー速い。トップのホタルノヒカリけんめいの疾走。これをコウタローが必死に追いかける。

コウタローが追いつくか、ホタルノヒカリが逃げ切るか、コウタローかホタルノヒカリ、ホタルノヒカリかマドノユキ、あけてぞけさは別れゆく。

架空の競走馬がずらっと列挙されており、「リンシャンカイホー」と「メンタンピンドライチ」は麻雀の役、コイコイは花札の遊び方の一つ。

「ヒカルゲンジ」については、ジャニーズ事務所の光GENJIはデビューが1987年なので、ここでは『源氏物語』の光源氏が語源だろう。実際の競走馬の名前にも使われる。

「ソルティーシュガー」は山本コウタローらのバンド名。

「オッペケペ」は明治時代の流行歌。

「ホタルノヒカリ」は唱歌『蛍の光』から。2006年から2007年に同じ名前の競走馬が実在した(通算成績:17戦2勝)。

歌詞の意味 後半

そして最後に、『走れコウタロー』後半部分の歌詞を次のとおり引用して内容を補足してみたい。

ところが奇跡か 神がかり
いならぶ名馬を ごぼう抜き
いつしかトップに おどり出て
ついでに騎手まで 振り落とす

走れ走れ コウタロー
本命穴馬 かきわけて
走れ走れ 走れコウタロー
追いつけ追いこせ 引っこぬけ

走れ走れ走れ走れ 走れコウタロー
本命穴馬 かきわけて
走れ走れ走れ走れ 走れコウタロー
追いつけ追いこせ 引っこぬけ

スタートダッシュで出遅れたコウタローだったが、先頭までごぼう抜きという奇跡のレース展開を見せた。おそらくはそのまま1着でゴールできたというストーリーだろう。

騎手を振り落としたという描写があるが、ゴール前に騎手が落馬してしまうと失格になってしまうので、これはゴール後の事と考えられる。

最下位からの逆転勝利!ゴルシ伝説の幕開け

余談だが、『走れコウタロー』のように最下位からの逆転勝利となった実際のGIレースとして、2012年の皐月賞でゴールドシップが見せた異次元のレース展開をご紹介したい。

ゴールドシップは、メジロマックイーンの血を引く芦毛(灰色の毛)のサラブレッド。愛称は「ゴルシ」。2012年の皐月賞、菊花賞、有馬記念、2013年と2014年の宝塚記念、2015年の天皇賞(春)を制覇した。

2012年の皐月賞は、前日の降雨でコンディションの悪い馬場となった。『走れコウタロー』のように序盤は最後方となるも、3コーナーから状況は一変した。

【YouTube】 2012 第72回皐月賞 ゴールドシップ

ほとんどの馬は、前日の雨で荒れた内寄りの馬場を避け、外に進路を取っていた。しかし、騎手・内田は「外を回らされるのは避けたい」と判断。

ゴールドシップは大きく開いた内へ突き抜けるように走路を取ると、異次元の「ワープ走法」で4コーナーからごぼう抜きを開始。直線では驚異の末脚を繰り出し、後続に2馬身半の差を付けて優勝した。『走れコウタロー』も真っ青のゴルシ伝説幕開けとなった。

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