フランス国歌 ラ・マルセイエーズ

フランス共和国/The French Republic

フランス国歌『ラ・マルセイエーズ La Marseillaise』は、18世紀末のフランス革命戦争の際に、兵士の士気を鼓舞するために作曲された。

フランス革命勃発からフランス国歌誕生直前までの歴史については、こちらのページ「フランス革命とフランス国歌」にて詳しく解説しているので適宜参照されたい。

上挿絵:ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍がオーストリア(神聖ローマ帝国)軍を破った「アルコレの戦い」(出典:Wikipedia)

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歌詞の意味・和訳

1.
Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé!
Contre nous, de la tyrannie,
L'étendard sanglant est levé!
L'étendard sanglant est levé!
Entendez-vous, dans les campagnes,
Mugir ces féroces soldats?
Ils viennent jusque dans nos bras
Egorger nos fils et nos compagnes!

1.
いざ祖国の子らよ!
栄光の日は来たれり
暴君の血染めの旗が翻る
戦場に響き渡る獰猛な兵等の怒号
我等が妻子らの命を奪わんと迫り来たれり

[ Refrain ]
Aux armes, citoyens !
Formez vos bataillons !
Marchons ! marchons !
Qu'un sang impur abreuve nos sillons !

<リフレイン>
武器を取るのだ、我が市民よ!
隊列を整えよ!
進め!進め!
敵の不浄なる血で耕地を染めあげよ!

2.
Que veut cette horde d'esclaves,
De traîtres, de rois conjurés ?
Pour qui ces ignobles entraves,
Ces fers dès longtemps préparés ?
Ces fers dès longtemps préparés ?
Français, pour nous, ah ! quel outrage !
Quels transports il doit exciter !
C'est nous qu'on ose méditer
De rendre à l'antique esclavage !
(Refrain)

2.
奴隷と反逆者の集団、謀議を図る王等
我等がために用意されし鉄の鎖
同士たるフランス人よ!
何たる侮辱か!何をかなさんや!
敵は我等を古き隷属に貶めんと企めり!

3.
Quoi ! ces cohortes étrangères
Feraient la loi dans nos foyers !
Quoi ! ces phalanges mercenaires
Terrasseraient nos fiers guerriers !
Terrasseraient nos fiers guerriers !
Grand Dieu ! par des mains enchaînées
Nos fronts sous le joug se ploieraient !
De vils despotes deviendraient
Les maîtres des destinées !
(Refrain)

3.
何と、我が国を法で縛ろうというのか!
何と、金で雇われた傭兵共の集団で
我等の誇り高き戦士を打ち倒そうというのか!
我等を屈服せしめるくびきと鎖
我々の運命を支配せんとす下劣な暴君共よ!

4.
Tremblez, tyrans et vous perfides,
L'opprobre de tous les partis,
Tremblez ! vos projets parricides
Vont enfin recevoir leurs prix !
Vont enfin recevoir leurs prix !
Tout est soldat pour vous combattre,
S'ils tombent, nos jeunes héros,
La terre en produit de nouveaux,
Contre vous tout prêts à se battre!
(Refrain)

4.
打ち震えるがいい、暴君共そして反逆者等よ
恥ずべき者共よ
打ち震えるがいい、恩知らずの企みは
報いを受ける最後を迎えよう
国民すべてがお前達を迎え撃つ兵士なり
たとえ我等の若き戦士が倒れようとも
大地が再び戦士等を生み出すだろう
戦いの準備は整った

5.
Français, en guerriers magnanimes,
Portez ou retenez vos coups !
Epargnez ces tristes victimes,
A regret s'armant contre nous.
A regret s'armant contre nous.
Mais ces despotes sanguinaires,
Mais ces complices de Bouillé,
Tous ces tigres qui, sans pitié,
Déchirent le sein de leur mère !
(Refrain)

5.
我等がフランス人よ、寛大なる戦士たちよ
攻撃を控えることも考えよ
我等に武器を向けた事を後悔した哀れな
犠牲者達は容赦してやるのだ
ただしあの残虐な暴君と
ブイエ将軍の共謀者等は別だ
冷酷にも母体を引き裂いて生まれ出でし
暴虐な虎共には容赦無用なり!

6.
Amour sacré de la Patrie,
Conduis, soutiens nos bras vengeurs !
Liberté, Liberté chérie
Combats avec tes défenseurs !
Combats avec tes défenseurs !
Sous nos drapeaux, que la victoire
Accoure à tes mâles accents
Que tes ennemis expirants
Voient ton triomphe et notre gloire !
(Refrain)

6.
復仇を導き支えるのは神聖なる愛国心なり
自由よ、愛しき自由よ
汝を守る者と共にいざ戦わん
御旗の下、勝利は我々の手に
敵は苦しみの中、我々の勝利と栄光を
目の当たりにするだろう

7.
Nous entrerons dans la carrière
Quand nos aînés n'y seront plus;
Nous y trouverons leur poussière
Et la trace de leurs vertus.
Et la trace de leurs vertus.
Bien moins jaloux de leur survivre
Que de partager leur cercueil,
Nous aurons le sublime orgueil
De les venger ou de les suivre !
(Refrain)

7.
我々は進み行く 先人達の地へ
彼等の亡骸と美徳が残る地へ
延命は本意にあらず
願わくは彼等と棺を共にせん
取らずや先人の仇、さもなくば後を追わん
これぞ我々の崇高なる誇りなり

フランス国歌誕生エピソード

1792年4月、フランス革命政府はオーストリアに対して宣戦布告し、フランス革命戦争が勃発した。プロイセン軍がフランス国境内に侵入すると、革命政府は祖国の危機を全土に訴え、それに応じてフランス各地で組織された義勇兵達がパリに集結した。

その頃フランス北東部のストラスブールでは、工兵将校のルージェ・ド・リール(Claude Joseph Rouget de Lisle/1760-1836)が駐屯していた。

当時大尉だったリール(右挿絵)のもとへストラスブール市長が表敬訪問。ライン方面軍の士気向上のために、音楽的素養のあったリールに行進歌を作るよう依頼した。

出征する部隊を鼓舞するため、リールは一夜にして勇壮な行進曲を作詞作曲。タイトルは『ライン軍のための軍歌』 (Chant de guerre pour l'armée du Rhin)と名付けられ、当時のライン方面軍司令官ニコラ・リュクネール元帥に献呈された。

この行進曲は、マルセイユから集結した義勇兵達によって歌い広められ、後に今日のタイトル『ラ・マルセイエーズ』の名で定着。1795年7月14日に正式に国歌として採用されるに至っている。

今日有名なアレンジとしては、『幻想交響曲』で知られるフランスの作曲家ベルリオーズによる独唱者と二重合唱、オーケストラのための編曲版(1830年)がある。

なお、初期に出版された楽譜には作曲者名が記されておらず、一説によれば、『ラ・マルセイエーズ』の真の作曲者は、ハイドンに学びストラスブールに移住していたオーストリア出身の古典派音楽家イグナツ・プライエル(Ignaz Pleyel/1757-1831)ではないかとの説も存在するようだ。

フランス国歌関連のエピソード

ハイドンが後のドイツ国歌を作曲

当時活躍していたオーストリアの音楽家ハイドン(右挿絵)は、フランスの義勇兵が口ずさんでいた『ラ・マルセイエーズ』のような愛国心を高める賛歌が祖国オーストリアにも必要だと痛感していた。

またハイドンはイギリス訪問時にも、事実上の国歌として人気を博していた『God Save the Queen ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン』を耳にし、その思いを強くしていた。

そこでハイドンは、フランス革命戦争中の1797年、詩人レオポルド・ハシュカによる皇帝賛美の詩に、クロアチア地方の民謡を基にした壮麗なメロディをつけ、神聖ローマ皇帝の誕生日に『神よ、皇帝フランツを守り給え』として献呈する形で、事実上のオーストリア国歌を誕生させた。

同曲は、1918年以降のドイツ帝国で賛歌『ドイツの歌 Deutschlandlied』として新たな歌詞がつけられ、1919年に成立したワイマール共和国において正式に国歌として採用された。1952年には3番を歌詞のみが西ドイツの国歌となり、1990年のベルリンの壁崩壊を経て、1991年に現在のドイツ連邦共和国における正式な国歌として受け継がれている。

チャイコフスキー『序曲1812年』にも登場

ロシアの音楽家チャイコフスキー(右挿絵)作曲による『序曲1812年』(作曲は1880年)では、その第3部においてフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』の旋律が繰り返し登場する。

1812年といえば、フランス帝国のナポレオン1世がロシア帝国に侵攻し、大敗北を喫して退却した「ロシア遠征(ロシア戦役)」の年。フランスを破ったロシア側の作曲者チャイコフスキーは、その戦いの音楽的表現として、フランス国歌を大胆に楽曲に取り入れている。

【参照】 チャイコフスキー『序曲1812年』 解説と試聴

ビートルズも『ラ・マルセイエーズ』

ビートルズ(The Beatles)が1967年7月にリリースした15枚目のシングル『All You Need Is Love 愛こそはすべて』では、冒頭・イントロでフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』のメロディが用いられている。

同曲は、当時世界初の宇宙中継特別番組「OUR WORLD われらの世界」向けに作曲され、同番組に出演したビートルズによって新曲として発表された。同番組は、5大陸・14カ国の放送局が参加し、31地点を結んで世界で初めて衛星放送で同時中継された世界的な番組だった。

地球規模の世界的な番組向けに作曲されたということもあって、『All You Need Is Love 愛こそはすべて』には、フランス国歌以外にも、イングランド民謡『グリーン・スリーヴス』、アメリカのジャズ楽団グレン・ミラー楽団による『イン・ザ・ムード』、ドイツの大音楽家J.S.バッハ作曲『インヴェンション8番』などが曲中に用いられ、世界的な人類愛・平和のメッセージが世界に発信された。

ちなみに、2002年6月にバッキンガム宮殿で行われた女王エリザベス2世戴冠50周年記念コンサートでは、同曲イントロのフランス国歌はイギリス国歌『女王陛下万歳』に差し替えられて演奏されている。

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