アホイ Ahoy 意味・語源・由来

シンプソンズもチョコチップスもホロライブもみんなでアホイ!

「アホイ(Ahoy)」は、主に航海や海賊などが関連する物語や映画・アニメなどのシーンで使われる掛け声・挨拶。イギリスを初めとして、スペルは異なるがヨーロッパ諸国で同様の掛け声・挨拶が存在する。

この「アホイ(Ahoy)」について、本場イギリスの辞書で解説されている意味や、いつ頃から使われていたのか、その語源や由来などについて簡単にまとめてみた。

海賊船と海

合わせて、「アホイ(Ahoy)」が関連する歴史上の出来事や、日本でも知られるアメリカのお菓子の商品名、アニメのキャラクター、ホロライブ所属バーチャルYouTuberのオリジナルソングなど、関連する話題についても触れていく。

意味・使い方

まず、英語における「Ahoy」の意味・使い方(使われ方)について、ケンブリッジ大学出版(Cambridge University Press)がオンラインで公開している「ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)」の解説を確認してみたい。

ケンブリッジ英英辞典では、「Ahoy」は二つの使われ方に分けて解説されていたので、次のとおり一つずつ引用する。

a shout used, especially by people in boats, to attract attention:

Ahoy there!

<Source: Cambridge Dictionary - Ahoy>

これによれば、「Ahoy」は他人の注意を引くための叫び声で、特に船の乗組員・船員らが用いる言葉として説明されている。

使い方(使われ方)の例として、「Ahoy there!」が挙げられている。日常会話の挨拶で使う「Hi, there!」(やあ、みんな)に近い印象だが、おそらくは、海で出会った他の船に対する挨拶・呼びかけの意味合いもあったのだろう。

発見の「Ahoy」

次に、「Ahoy」についてのもう一つの説明を見てみよう。同じくケンブリッジ英英辞典より引用する。

used, especially on a boat, when you see something, usually something that is in the distance:

Land ahoy!

Ship ahoy!

<Source: Cambridge Dictionary - Ahoy>

この意味での「Ahoy」は、船上などで遠くに何かを見つけた場合に発する言葉として解説されている。

具体的な使い方(使われ方)の例としては、「Land ahoy!(陸地だ!アホーイ!)」、「Ship ahoy!(船だ!アホーイ!)」の二つが挙げられている。

この場合は、同じ船の他の乗組員に対して発見や接近を知らせるための用法で、挨拶としての使われ方ではない。

いつから使われていた?

「Ahoy」がイギリスで使われた初期の例としては、18世紀イギリスの小説家トバイアス・スモレット(Tobias Smollett/1721-1771)が1751年に刊行した小説「ペレグリン・ピックルの冒険(The Adventures of Peregrine Pickle)」の中で、船乗りが発した次のような記述が挙げられる。

Ho! the house a hoy!

(ホー!家だ アホイ!)

さらに18世紀後半には、ウィリアム・ファルコナー海事辞典(William Falconer's Dictionary of the Marine)で、次のような「Ahoy」の使用例が掲載されている。

Hoa, the ship ahoay!

(ホア、船だ アホイ!)

当時のスペルは「Ahoy」ではなく「ahoay」となっているところが興味深い。

語源は?

「アホイ(Ahoy)」の語源については、中世イングランドで牛追いに使われていた「Hoy!(ホイ!)」という掛け声に由来するのではないかと考えられているようだ。

14世紀イングランドの詩人ウィリアム・ラングランド(William Langland/1332– 1386)は、1393年に刊行した詩集「Piers the Ploughman」の中で、次のように「Hoy!(ホイ!)」を用いている。

And holpen to erie þis half acre with 'hoy! troly! lolly!'

<意味>
半エーカーの畑をたがやす
ホイ!トローリー!ローリー!と叫びながら

<引用:William Langland "Piers the Ploughman"より>

この「Hoy!」に、予備的に注意を引くための「a(ア)」が加わって、今日の「Ahoy(アホイ)」が誕生した可能性があるとのこと。

日本語でも、「それ!」という掛け声の先頭に「あ」がついて「あそれ!」になったり、「よいしょ」が「あよいしょ!」、「やっほー!」が「いやっほー!」になったりするのと同じような変化が見られる。

電話を発明したグラハム・ベルも使っていた

スコットランドの科学者・発明家アレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell/1847-1922)は、1876年に世界初の実用的電話を発明しアメリカで特許を取得した。

グラハム・ベルは、現代の日本での「もしもし?」のように、電話で通話を行う際の挨拶として「Ahoy-hoy(アホイ・ホイ)」を使うよう提唱しており、自分が通話する際にもこれを生涯用いていたとされる。

残念ながら、後にトーマス・エジソンが通話時の挨拶として「Hello(ハロー)」を推進したため、グラハム・ベルの「Ahoy-hoy(アホイ・ホイ)」が電話で使われることはなくなってしまった。

ただ、後述するアメリカのアニメ「ザ・シンプソンズ」では、この「Ahoy-hoy(アホイ・ホイ)」を電話の挨拶として用いるキャラクターが登場する。

ちなみに、明治時代に東京音楽学校校長となった伊沢修二は、グラハム・ベルが電話を発明した当時アメリカのボストンに留学中で、1876年の電話の実験成功の直後、ベル宅で電話を使って会話をしている。

最初に電話で話された言語は英語だが、2番目に使われた言語は伊沢修二らによる日本語である。

シンプソンズのキャラクターも

アメリカのテレビアニメシリーズ「ザ・シンプソンズ(The Simpsons)」では、グラハム・ベルの「Ahoy-hoy(アホイ・ホイ)」を電話での通話時に使うキャラクターが登場する。

シンプソンズ

シンプソン一家の父ホーマー・シンプソンは、地元にあるスプリングフィールド原子力発電所の職員として働いているが、その社長(CEO)であるチャールズ・モンゴメリ・バーンズ(Montgomery Burns)は、電話をとる際に必ずグラハム・ベルの「Ahoy-hoy(アホイ・ホイ)」を挨拶として使う。

【YouTube】 ザ・シンプソンズ(The Simpsons)バーンズ社長

バーンズ社長は100歳を超える高齢者であり、通常の会話の内容も時代を感じさせる古いネタが多いのだが、この電話での挨拶も、そうした古いネタの一つとして扱われているように感じられる。

チップス アホイ

かつて日本でも販売されていたナビスコのチョコチップ・クッキー「チップス アホイ (Chips Ahoy!)」。ここでの「チップス」とはチョコチップのこと。

クッキーの生地にチョコチップがたっぷり含有された、チョコ好きにはたまらないアメリカのお菓子だ。

ナビスコ チップス アホイ チューイ チョコレート チップ クッキー

この「チップス アホイ (Chips Ahoy!)」の商品名に「アホイ(Ahoy)」が使われているのはご覧のとおりだが、問題はなぜ、お菓子の商品名にそれが用いられたのかという点だろう。

ここで大きなヒントになるのが、上述のケンブリッジ英英辞典での例文だ。もう一度次のとおり引用する。

Ship ahoy!(船だ アホイ!)

この例文の「Ship(シップ)」を「Chip(チップ)」に変えて複数形にすれば、まさに商品名の「Chips Ahoy!」となる。

船を発見して叫ぶ「Ship ahoy!」と、大好きなチョコチップクッキーを発見して喜ぶ「Chips Ahoy!」。どちらも「発見のアホイ」の用例で、躍動感にあふれ、シップとチップというライムも心地よい素晴らしいネーミングだ。

ホロライブ 宝鐘マリン

ホロライブ所属バーチャルYouTuber宝鐘マリンが2020年7月にリリースしたオリジナルソング『Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆』では、曲名のとおり、「アホイ(Ahoy)」の掛け声が前面に押し出された楽曲となっている。

ホロライブ 宝鐘マリン Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団

ジャケット写真:オリジナルソング『Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆』

宝鐘マリンのキャラクターは、海賊船を買うためにVTuber活動をしている女の子で、将来は海賊船に乗って宝さがしをする夢を持っているという公式設定。

オリジナルソング『Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆』では、合いの手やバックコーラスに「アホイ(Ahoy)」が多用されているが、阿波踊りの「踊る阿呆に見る阿呆」をもじった「踊るアホイに見るアホイ」など、ギャク色強めの用法となっている。

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