小さな木の実 歌詞の意味・和訳

パパとふたりで拾った 大切な木の実 にぎりしめ

『小さな木の実』(ちいさなこのみ)は、1971年にNHK「みんなのうた」で初回放送された日本の歌。

原曲は、19世紀フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーが1866年に作曲したオペラ『美しきパースの娘』で歌われるアリア『セレナード』。かなり編曲されているので、原曲を聴くとメロディに違和感があるかもしれない。

作詞は、同じくNHK「みんなのうた」で放送された『白い道』の歌詞を手掛けた海野洋司(うんの ひろし)。

原曲の歌詞は、愛する女性の家の前で夜に求愛する男性の切ない心情を歌うセレナーデ(小夜曲)であり、パパとの思い出を歌う『小さな木の実』の歌詞とは内容的に一切関係がない。つまり、『小さな木の実』はメロディだけ拝借した日本オリジナルの楽曲ということになる。

このページでは、『小さな木の実』の歌詞の内容・意味・歴史的背景について、簡単に解説してみたい。

原曲のオペラ『美しきパースの娘』で歌われるアリア『セレナード(Serenade)』の歌詞と意味・和訳についてはこちら

【試聴】小さな木の実

歌詞の意味:パパはもう死んでいる?

『小さな木の実』では、どのような日本語歌詞がつけられているのだろうか?海野洋司の作詞による歌詞について、次のとおり引用して確認してみよう。

1.
小さな手のひらに ひとつ
古ぼけた木の実 にぎりしめ
小さなあしあとが ひとつ
草原の中を 駆けてゆく

パパとふたりで拾った
大切な木の実 にぎりしめ
ことしまた 秋の丘を
少年はひとり 駆けてゆく

2.
小さな心に いつでも
しあわせな秋は あふれてる
風と良く晴れた空と
あたたかいパパの思い出と

坊や 強く生きるんだ
広いこの世界 お前のもの
ことしまた 秋がくると
木の実はささやく パパの言葉

<引用:海野洋司『小さな木の実』歌詞より>

一番の歌詞では、「小さな」「ひとつ」という単語が2回繰り返され、「少年はひとり」という歌詞と合わせて、歌の主人公が一人の小さな子供であることが分かる。

「パパとふたりで」と「少年はひとり」という表現が対比的に用いられ、今は少年は一人であるという孤独感が強調されている。

この時点で、主人公の少年とパパは、簡単には会えない場所に離れ離れになってしまっていることが想像できる。二番の歌詞でも「パパの思い出」と過去形のストーリーが展開されている。

交通事故で父を亡くした遺児から着想

なぜ少年は、パパと会えない状況になってしまっているのだろうか?

その理由としては、離婚や事故死・病死など様々な事情が考えられるが、『小さな木の実』の初回放送版を歌った女性歌手・大庭照子の著書によれば、この歌の題材は、当時社会問題化していた交通事故の多発から着想されているという。

それによれば、NHKの番組ディレクターである若林尚司が、テレビで交通遺児を取り扱った番組を見て、「少年をテーマにした楽曲で応援しよう」と考え、海野洋司に作詞を依頼したとのこと。

確かに、『小さな木の実』が初回放送された前年の1970年(昭和45年)には、交通事故による死者数は1万6765人と当時のピークに達していた。1966年(昭和41年)に発売開始された日産サニーとトヨタカローラによる自動車急増も要因の一つだろう。

作詞者の長男への歌

NHKの番組ディレクターから依頼を受けた作詞家の海野洋司は、自身が1969年に書いた『草原の秋』と題する詩を元に、『小さな木の実』の作詞を行ったという。

この詩は、海野の長男誕生を記念して作成されたもので、未発表のまま引き出しの中に入れられたままとなっていたもの。

『小さな木の実』の元ネタとなった『草原の秋』について、海野は当時の思いを次のように述べている。

人はいつかこの世から去る……私も。それがいつになるかは天のみが知ることだが、私がいなくても、しっかりと生きてくれるのだろうか……そんな子になってくれるのだろうか。どうか、たとえひとりぼっちになっても、希望を持って、この素晴らしい世界を強く生きていって欲しい。

<引用:海野洋司「小さな木の実ノート」千早書房(2003年)より>

グリーン・グリーンの影響も?

亡くなったパパとの思い出を少年が振り返るというストーリーは、同じくNHK「みんなのうた」で放送された『グリーングリーン』でも同様に見られる。

「ある日 パパとふたりで 語り合ったさ この世に生きる喜び そして悲しみのことを」が歌い出しの『グリーングリーン』では、次のような歌詞で、パパと少年との別れが示されている。

その朝 パパは出かけた
遠い旅路へ
二度と帰ってこないと
ラララ 僕にも分かった

<引用:片岡輝『グリーングリーン』歌詞より>

『グリーングリーン』の初回放送は、『小さな木の実』初回放送より4年半前の1967年4月。おそらく『小さな木の実』は、『グリーングリーン』のヒットを受けて、「父親と息子シリーズ」の第2弾的な位置づけだったのだろう。

『白い道』は母親バージョン?

海野洋司によるNHK「みんなのうた」作品としては、1975年12月に初回放送された『白い道』がある。

この曲は、イタリアの作曲家ヴィヴァルディによるヴァイオリン協奏曲集「四季」より『冬』第2楽章のメロディに、海野洋司が独自の日本語歌詞をつけた楽曲である。

『白い道』の歌詞の内容は、「父親と息子」を描いた『小さな木の実』(季節は秋)とは対照的に、「母親と息子」が歌のテーマとなっている。

その歌詞は、「遠い国へ行ってしまった」母親に語りかけるように、北国で過ごした冬の思い出をしみじみと歌い上げる切ない内容となっている。

「白い道」は言わば、「小さな木の実 母親バージョン in 北国の冬」といった位置づけになるのかもしれない。

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