浜辺の歌 歌詞の意味
あした浜辺を彷徨えば 昔のことぞ忍ばるる
『浜辺の歌(はまべのうた)』は、作詩:林古渓、作曲:成田為三による日本の唱歌・歌曲。大正5年(1916年)発表。
大正時代初期に作詞された歌詞だけあって、文語調で若干難解な表現が散見される。歌詞の意味については後述する。
写真:恋路ヶ浜(こいじがはま) 愛知県田原市 渥美半島の先端
【YouTube動画】浜辺の歌
歌詞
あした浜辺を さまよえば
昔のことぞ しのばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も
ゆうべ浜辺を もとおれば
昔の人ぞ しのばるる
寄する波よ かえす波よ
月の色も 星のかげも
はやちたちまち 波を吹き
赤裳(あかも)のすそぞ ぬれひじし
病みし我は すべていえて
浜の真砂(まさご) まなごいまは
歌詞の意味は?
あした
「あした」は明日ではなく「朝」の意味。「ゆうべ」は前の日の晩ではなく「夕方」の意味。
しのばるる
「しのばるる」は「偲ばるる」。「偲ぶ」とは、過ぎ去ったり遠く離れたりしたことや人をなつかしむ気持ち、または、賞賛・同情の気持ちをもって思い出すこと。
「るる」は、自発の助動詞「る」の連体形。「昔のことぞ」の「ぞ(係助詞)」を受けて、強調の「係り結び」となっている。「自発」とは、ここでは気持ち・感情が自然とこみ上げてくる様子を表す。
もとおれば
「もとおれば」は、「廻る(もとおる)」。徘徊(はいかい)すること、辺りを歩いてうろうろと移動すること。
はやち
「はやち」は「疾風(はやち/はやて)」。急に激しく吹きおこる風のこと。「ち」は風を表す古語。「東風(こち)」も同様。
赤裳(あかも)
「赤裳(あかも)」は女性の赤い装束(しょうぞく)・着物。
ぬれひしじ
「ぬれひしじ」は、びしょ濡れになること。
真砂(まさご)
「真砂(まさご)」は、白いサラサラとした砂。
まなご
「まなご」は「愛子」(いとしご)、愛する子供。
作曲者について
成田 為三(なりた ためぞう/1893-1945)は、秋田県北秋田郡米内沢町(現在の北秋田市米内沢)の役場職員の息子として生まれる。
大正3年(1914年)に上野の東京音楽学校(現在の東京芸術大学)に入学し、ドイツから帰国したばかりの山田耕筰に教えを受けた。
大正6年(1917年)に同校を卒業。卒業後は九州の佐賀師範学校の義務教生をつとめたが、作曲活動を続けるため東京市の赤坂小学校の訓導となる。同時期に『赤い鳥』の主宰者鈴木三重吉と交流するようになり、同誌に多くの作品を発表した。
ヨハン・シュトラウスのワルツとそっくり?!
余談だが、『浜辺の歌』のメロディーは、オーストリアの作曲家ヨハン・シュトラウス2世のワルツ『芸術家の生涯(人生)』の一部と非常によく似ていることで知られている。
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