栄冠は君に輝く 歌詞の意味
福島三羽烏の古関・伊藤コンビで発表された夏の甲子園大会歌
『栄冠は君に輝く』は、2020年NHK朝ドラマ「エール」で主人公のモデルとされた作曲家・古関 裕而(こせき ゆうじ/1909-1989〉作曲による1948年の楽曲。『長崎の鐘』と同時期の曲。
夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)大会歌として、朝日新聞社の主催により歌詞が公募された(作詞者:加賀大介)。
発表当時に歌手を務めたのは、福島三羽烏(さんばがらす)の一人で、戦前のヒット曲『暁に祈る』を歌った伊藤久男。『栄冠は君に輝く』の翌年にも『イヨマンテの夜』で古関と伊藤は再びタッグを組むことになる。
写真:阪神甲子園球場(出典:Wikipedia)
古関 裕而の故郷・福島市の市役所公式Webサイトの解説によれば、『栄冠は君に輝く』の作曲前、作曲者の古関は甲子園球場に実際に足を運び、許可を得て(無人の)グラウンド中央のマウンド(ピッチャーが立つ場所)に立って、高校野球の熱戦の様子を想像しながら曲のアイディアを考えたという。
古関裕而氏は自伝で、甲子園球場の「無人のグランドのマウンドに立って周囲を見回しながら、ここにくり広げられる熱戦を想像しているうちに、私の脳裏に、大会の歌のメロディが湧き、自然に形付けられてきた。やはり球場に立ってよかった。」と述べています。
<引用:福島市所Webサイトの解説より>
【YouTube】 栄冠は君に輝く 古関裕而
一番の歌詞の意味
『栄冠は君に輝く』の歌詞について、部分的に歌詞の意味を簡単に補足してみたい。まず、一番の歌詞を次のとおり引用する。
雲は湧(わ)き 光あふれて
天高く 純白の球(たま) 今日ぞ飛ぶ
若人(わこうど)よ いざ
まなじりは 歓呼(かんこ)にこたえ
いさぎよし ほほえむ希望
ああ 栄冠は君に輝く<引用:『栄冠は君に輝く』一番の歌詞より>
「今日ぞ飛ぶ」の「ぞ」は、強調・強意の係助詞(かかりじょし)。その後に続く動詞は連体形で結ぶ(係り結び)。
係助詞の「ぞ」が使われている日本の歌としては、『蛍の光』、『浜辺の歌』などが有名。
蛍の光
何時(いつ)しか年も すぎの戸を
開けてぞ今朝は 別れ行く浜辺の歌
あした浜辺を さまよえば
昔のことぞ しのばるる
「若人(わこうど)」は、若い人、若者、青年のこと。ここでは高校球児。
「まなじり」とは、目じり、目元。「まなじりは 歓呼にこたえ」は、甲子園球場のスタンドからの応援・声援に応えようと気を引き締める高校球児らの表情を描写したものだろうか。
「いさぎよし」は、潔(いさぎよ)いの活用形。清らかである。汚れがないこと。
二番の歌詞の意味
『栄冠は君に輝く』二番の歌詞を次のとおり引用する。
風を打ち 大地を蹴(け)りて
悔(く)ゆるなき 白熱の力ぞ技ぞ
若人よ いざ
一球に 一打にかけて
青春の 讃歌を綴(つづ)れ
ああ 栄冠は君に輝く<引用:『栄冠は君に輝く』二番の歌詞より>
「風を打ち」とは、風を切るようにバットを振り抜きボールを打つ様子。
「悔ゆるなき」とは、後悔がないこと。悔いを残さず試合を戦い抜くこと。
「力ぞ技ぞ」の「ぞ」は、強い断定を表す。~なのだ。
三番の歌詞の意味
『栄冠は君に輝く』三番の歌詞を次のとおり引用する。
空を切る 球(たま)の命に
通うもの 美しく匂(にお)える健康
若人よ いざ
緑濃き 棕櫚(しゅろ)の葉かざす
感激を 目蓋(まぶた)に描(えが)け
ああ 栄冠は君に輝く<引用:『栄冠は君に輝く』三番の歌詞より>
「棕櫚(しゅろ)」とは、ヤシ目ヤシ科の樹木「シュロ」のこと。同じヤシ科にナツメヤシが別の属の植物。日本では、ナツメヤシとシュロを混同している場合が少なくない。
ギリシア神話に登場する勝利の女神(ニーケ/ニケ/ナイキ)はシュロ(ナツメヤシ/以下同様)の葉(枝)を持っており、古代からシュロの葉は勝利の象徴として認識されてきた。
古代ローマ帝国では、古代オリンピックなど闘技会の勝利者にシュロの葉(枝)やオリーブの冠(月桂冠)が与えられていた。
『栄冠は君に輝く』の歌詞における「棕櫚(しゅろ)の葉かざす感激」とは、シュロ(ナツメヤシ)に象徴される「勝利」の感激、さらには優勝の感激、優勝旗を掲げる感激を意味していると考えられる。
写真:シュロの葉(出典:Wikipedia)
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