若者の夢 アイルランド民謡
『ダニーボーイ』『ロンドンデリーの歌』原曲とされる伝統曲
『若者の夢』(Aislean an Oigfear/The Young Man's Dream)は、18世紀から伝わる古いアイルランド民謡。メロディのみで歌詞はない。
後世にメロディがアレンジされ、さらに歌詞がつけられて、『ダニーボーイ』や『ロンドンデリーの歌』として世界的に親しまれている。
写真:『Aislean an Oigfear(若者の夢)』楽譜 1796年(出典:archive.org)
1796年にエドワード・バンティング(Edward Bunting/1773-1843)が出版した「アイルランド古典音楽集(A General Collection of the Ancient Irish Music)」第1巻に楽譜が掲載された(上写真)。
アイルランドの国民的詩人トマス・ムーア(Thomas Moore/1779-1853)も1808年に歌詞をつけているが、今日ではほとんど知られていない。
トマス・ムーアは他にも「アイルランド古典音楽集」のメロディに歌詞をつけており、『春の日の花と輝く』、『ミンストレルボーイ』などが今日でも有名。
【YouTube】Aisling an Oighfir
ハープ奏者デニス・ヘンプソンから採譜
「アイルランド古典音楽集」第1巻が出版される数年前の1792年、エドワード・バンティングは、アイルランドのベルファスト(Belfast)で開催されたハープフェスティバルを民謡採取のために訪れていた。
彼はハープ奏者のデニス・ヘンプソン(Denis Hempson/1695-1807)に注目し、数多くのアイルランド民謡を採譜したという。
デニス・ヘンプソンの出身地は、アイルランドのロンドンデリー(Londonderry)地方のリマバディ(Limavady)。
その森林地帯ローバレー(Roe Valley)は、その昔オカハン族(the O’ cahan)の土地だったが、17世紀初頭にイギリス軍に制圧された。
イギリス軍に土地を奪われたオカハン族
ある日の晩、オカハン族の首長ローリー・ダリ(Rory Dali O’ cahan/1550-1660)は、深酒をして酔っ払い、いい気分でローバレーの川沿いの土手をふらふらしていたところ、足を滑らせて谷間に転落。
なかなか帰ってこない首長を心配して、彼の部下が探しに来たが、気を失っている首長を見つけたその辺りで、今まで聞いたこともないような不思議なハープの音色が聞こえてきた。
首長が意識を取り戻すと、彼は直ぐにこの音色が妖精の奏でる音楽だと気付き、注意深く耳をそばだててその音色を記憶した。
その物悲しい旋律は、イギリス軍に土地を奪われたオカハン族の怒りと嘆きを表すとして、『O’cahan’s Lament(オカハン族の嘆き)』と名づけられ、ハープ奏者らによって弾き継がれていったという。
ルーツは『オカハン族の嘆き』?
上述のとおり、ハープ奏者のデニス・ヘンプソンの出身地は、オカハン族のローバレーがあるロンドンデリー地方のリマバディ。
デニス・ヘンプソンは、オカハン族の首長ローリー・ダリの親族であるブリジット・オカハン(Bridget O' cahan)の元で音楽の訓練を受けていたようだ。
海外のサイトでは、『オカハン族の嘆き』が『若者の夢』や『ロンドンデリーの歌』のルーツではないかと考察する説もあるようだが、実際のところは明らかになってない。
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