ユーレイズミーアップ You Raise Me Up
実はキリスト教の賛美歌・クリスチャンソング? 聖書と歌詞の意味
『ユー・レイズ・ミー・アップ』(You Raise Me Up)は、混声デュオ「シークレット・ガーデン(Secret Garden )」が2002年にリリースした楽曲。アルバム『Once in a Red Moon』の2曲目に収録された。
原曲(メロディ)は、アイルランド民謡『ダニーボーイ』。『哀しみのソレアード』にも部分的にメロディが似ている。
作曲は、同グループの男性で南ノルウェー出身のロルフ・ラヴランド(Rolf Løvland)」、作詞は、アイルランド出身のフィクション作家ブレンダン・グラハム(Brendan Graham/1945-)。
ジャケット:ケルティック・ウーマン『ユーレイズミーアップ』収録アルバム
日本では、冬季トリノオリンピック女子で金メダルを獲得した荒川静香がエキシビションのBGMに採用したことで有名となった。
荒川静香が使用したのは、女性6人の音楽グループ「ケルティック・ウーマン(Celtic Woman)」によるカバー版。ちなみに彼女ら6人中5人がアイルランド出身。
歌詞はキリスト教の賛美歌?
さて、ネットで『ユー・レイズ・ミー・アップ』を検索してみると、歌詞の内容にキリスト教の賛美歌のような要素があるとの指摘が散見された。
確かに、具体的に英語の歌詞を見ていくと、もちろん伝統的な讃美歌ではないが、クリスチャンソングやワーシップソングのような内容がキリスト教的要素が含まれているように感じられる。
一体歌詞のどの部分が賛美歌やクリスチャンソングにつながると解釈できるのだろうか?詳細は後述する(歌詞の和訳の後で)。
【YouTube】ユーレイズミーアップ You Raise Me Up
歌詞の意味・和訳(意訳)
『You Raise Me Up』
作曲:ロルフ・ラヴランド(Rolf Løvland)
作詞:ブレンダン・グラハム(Brendan Graham)
When I am down
and oh my soul, so weary
When troubles come
and my heart burdened beThen I am still
and wait here in the silence
Until you come
and sit a while with me
気持ちが沈んで
心も疲れたとき
困難に見舞われ
心に重荷を背負ったとき
私は静かに
静寂の中で待つ
貴方が隣に来て
座ってくれるまで
You raise me up
so I can stand on mountains
You raise me up
to walk on stormy seasI am strong
when I am on your shoulders
You raise me up
to more than I can be.
貴方が私を高めてくれる
だから高い山にも立てる
貴方が私を高めてくれる
だから嵐の海も歩ける
私は強くなれる
貴方の肩に身を預け
貴方が私を高めてくれる
今以上の自分になれる
There is no life
no life without its hunger
Each restless heart
beats so imperfectlyBut then you come
and I am filled with wonder
Sometimes I think
I glimpse eternity
飢えない命はない
心臓は休むことなく
とても不完全に鼓動する
貴方が現れ
私は驚きで満たされる
時々私は思う
永遠を垣間見ていると
You raise me up
so I can stand on mountains
You raise me up
to walk on stormy seasI am strong
when I am on your shoulders
You raise me up
to more than I can be
貴方が私を高めてくれる
だから高い山にも立てる
貴方が私を高めてくれる
だから嵐の海も歩ける
私は強くなれる
貴方の肩に身を預け
貴方が私を高めてくれる
今以上の自分になれる
<以下、繰り返しのため割愛>
賛美歌のような歌詞とは?
歌詞にみられるキリスト教の賛美歌のような要素について、具体的に解説してみたい。
ただし、解説の方向性としては、この曲が賛美歌かどうかという観点ではなく、キリスト教の聖書の内容を踏まえた(可能性がある)歌詞かどうか、という観点から説明していく。
曲名は旧約聖書から
まずは曲名の「You Raise Me Up」というフレーズから。この表現は、旧約聖書(ヘブライ聖書)の一つ『詩編(しへん)』英語標準版の第41章10節において、次のようなくだりで登場する。
But you, Yahweh, have mercy on me, and raise me up
しかし主よ、わたしをあわれみ、わたしを助け起してください
<引用:旧約聖書「詩篇」第41章10節>
文末の「raise me up」(わたしを助け起してください)の部分が、曲名『You Raise Me Up』の元ネタと考えられる。原書はヘブライ語なので、英語版聖書における文言である。
このくだりでの「you, Yahweh」とは「神(ヤハウェ)」のこと。「have mercy on me」の「me」とは、この文章の作者。敵から迫害され、友人に裏切られ、病の床にある。
soul(ソウル)
「and oh my soul」の「soul(ソウル/魂)」は、クリスチャンソングやワーシップソングによく登場する歌詞の一つ。
上述の旧約聖書『詩編(しへん)』英語標準版第103章でも、次のようなくだりで「soul(ソウル)」が使われている。
Praise Yahweh, my soul!
All that is within me, praise his holy name!
わがたましいよ。主をほめたたえよ。
私のうちにあるすべてのものよ。聖なる御名をほめたたえよ。
<引用:旧約聖書「詩篇」第103章1節>
「soul(ソウル)」が印象的に使われているキリスト教系の歌としては、『ロック・マイ・ソウル Rock My Soul』が日本でも有名。
stand on mountains
「so I can stand on mountains」のくだりは、イエス・キリストが山の上で弟子たちと群集に語った「山上の垂訓(さんじょうのすいくん)」という有名な場面を連想させる。
山上の垂訓は、新約聖書『マタイによる福音書』第5章から7章のほか、『ルカによる福音書』第6章にも記述がある。有名なくだりは次のとおり。
しかし、聞いているあなたがたに言う。敵を愛し、憎む者に親切にせよ。
あなたの頬を打つ者にはほかの頬をも向けてやり、あなたの上着を奪い取る者には下着をも拒むな。
<引用:『ルカによる福音書』第6章より>
「mountains」が使われるキリスト教系の歌としては、クリスマスソング『Go Tell It On A Mountain 世界に告げよ』が有名。
walk on stormy seas
「walk on stormy seas」(嵐の海の上を歩く)のくだりは、新約聖書『マタイによる福音書』第14章で描写される「イエスの水上歩行」の奇跡が関連している可能性がある。
ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
<引用:新約聖書『マタイによる福音書』第14章>
その他
上述以外にも、「troubles(困難・苦難)」「burden(重荷・苦しみ)」「wonder(不思議な業・神の奇跡)」、「eternity(永遠)」など、聖書の記述が関連する歌詞が散りばめられている。
やはり『ユー・レイズ・ミー・アップ』は、現代的なクリスチャンソング(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)としての性格を合わせ有する楽曲であることは間違いないだろう。
関連ページ
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