卯月 うづき 4月 意味・語源・由来

草木が茂り地面をおおう旧暦4月の別名・異名 そのルーツは?

日本の旧暦4月は「卯月(うづき)」。現代の暦でも4月の別名・異名として使われる。

漢字の「卯(う)」は「ぼう」と音読みされるが、これは古代中国の「冒」または「茂」に由来しており、その意味は「草木が茂(しげ)り地面を冒(おお)う状態」を表しているとされる。動物のウサギの意味は当て字だという。

「卯月(うづき)」の前月である旧暦3月「弥生(やよい)」は、草木が「ますます生い茂る」という意味があるが、4月はそれが更に進んで「草木が茂り地面を冒う状態」になる月なのだろう。

卯月 うづき 4月 意味・語源・由来

旧暦は現代の暦と比べて1か月前後のズレがあり、旧暦4月「卯月(うづき)」は現在の4月下旬から6月上旬頃にあたる(年によって異なる)。

ちなみに、「卯」と「月」の間に「の」を入れて「卯の月(うのつき)」とすると、4月ではなく陰暦2月を表す場合があるので注意が必要(理由は後述)。

4月の別名・異名「卯月(うづき)」の語源・由来や意味合いの解釈については諸説ある。このページでは、ネットでよく見かける有名な説について簡単にまとめてみたい。

卯の花説

「卯月(うづき)」の語源については、卯の花(うのはな)が咲く月だから「卯の花月(うのはなづき)」であり、それが略されて「卯月(うづき)」となったと考える説が有力なようだ。

卯の花とは、アジサイ科ウツギ属の落葉低木ウツギのこと。日本の歌『夏は来ぬ』の歌詞にも登場する。ウツギという名前は、茎が中空なので「空木」(中が空ろな木)の意味から名付けられた。

卯の花(ウツギの花)

写真:卯の花(ウツギの花)出典:Wikipedia

この卯の花説は、ウツギの別名の由来と合わせて考えると問題が生じる。ウィキペディアで「ウツギ」を調べると、「花は卯月(旧暦4月)に咲くことから『卯(う)の花』とも呼ばれ」と解説されているが、卯月の語源は卯の花だとする説との関係が、まるでメビウスの輪(帯)のように表裏が良く分からない状態になってしまう。

こうした理由からか、卯の花説以外にも「卯月(うづき)」の由来について様々な説が提唱されている。続いて他の説も見ていこう。

田植え説

上述のとおり、旧暦4月「卯月(うづき)」は現代の磨で4月下旬から6月上旬頃にあたり、田植えの始まる時期と重なる。

田植えと早乙女

一説には、苗を植える月という意味で、「田植苗月(たうえなへづき)」、「苗植月(なへうゑづき)」、「植月(うゑつき)」、「種月(うづき)」と呼ばれ、「植える」の「う」が転じて「卯月(うづき)」となったと考える説があるようだ。

「卯月(うづき)」の翌月である旧暦5月は「皐月(さつき)」と呼ばれるが、「さつき」の「さ」は田の神に由来すると考えられており、「卯月(うづき)」の名前に田植えが関連するというこの説もなかなか説得力があって興味深い。

十二支の順番説

「卯月(うづき)」は正月から数えて4番目の月(4月)だが、これは「子・丑・寅・卯(ね・うし・とら・う)」から始まる十二支において、「卯」が4番目に登場することに由来すると考える説がある。

十二支の順番を由来と考えるこの説は単純明快で非常に分かりやすいのだが、この説に対しては、4月以外では十二支に由来する和名が無い、中国の陰暦では「卯」は2月を表す、などの異論もあるようだ。

中国の陰暦で「卯」が2月を表す理由・歴史的背景については次のとおり。

なぜ中国では2月が「卯」なの?

古代中国(周王朝)では、冬至を含む月(11月)を一年の起点(正月)とする習わしがあり、この月を十二支の最初に当てはめて「子月」と定めていた。

その結果、12月は十二支の順番に基づいて「丑月」、1月は「寅月」、そして2月は「卯月」とされた。

月名における十二支の起点(冬至の月)は漢王朝以降も踏襲され、中国の陰暦では「卯月」は2月を意味することとなった。

日本で「卯の月(うのつき)」という場合、この中国の陰暦における2月を意味することがあるので、日本の旧暦4月「卯月(うづき)」との意識的な区別が必要と思われる。

柳田國男による説明

民俗学者の柳田國男(やなぎた くにお/1875-1962)は、「卯月(うづき)」の「う」の語源・由来について、書籍の中で次のように述べている。

或いは初のウヒ、産のウムなどと繋つながった音であって、嘗(かつ)て一年の巡環の境目を、この月に認めた名残かというような、一つの想像説も成り立つのである。

<引用:柳田國男『海上の道』岩波書店>

ウサギは西洋では多産の象徴とされ、産むの「う」が「卯月(うづき)」の「う」につながっているとしたら非常に興味深い。

また、この直前の文章では、「卯」と農業(稲作)の関係について次のように述べられている。

大きな神社の中にも、卯の日を例祭の日としたものが幾つかあるが、それよりも著しいのは田の神の祭、または稲作に伴なう色々の行事、および正月の年の神の去来(きょらい)について、特に卯の日を重視する風は、現在もなお到る処に残っている。

<引用:柳田國男『海上の道』岩波書店>

さらに、稲の御霊である倉稲魂命(うかのみたまのみこと)の名の「う」と通ずるとし、収穫感謝祭である新嘗祭がかつて十一月下卯(げう)の日と定められていたこととも関連するという。

ウサギは山の神(の使い)

山のシンボル ウサギを「山の神」と同一視、あるいは「山の神の使い(神使)」や乗り物とする伝承も日本各地に広くみられる。

可愛いウサギ

ウィキペディアの解説によれば、日本では古来からウサギが「山の神」と同一視、あるいは「山の神の使い」であると考えられていたという。

ウサギが各地で山の神と同一視されてきたのは、人間の暮らす里と神や動物のいる山とを身軽に行き来することからの境界を超えるものとしての崇拝、多産で繁殖力に富むことから豊穣をつかさどる意味<中略>などさまざまな背景があると考えられる。

<引用:ウィキペディア「ウサギ」>

また、月読命(豊産祈願)や大己貴命(大国主命)、御食津神(五穀豊穣)などを祭神とする寺社でもウサギが神の使いとされると説明している。

関連:童謡『大黒様(だいこくさま)』因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)

山の神は「卯月(うづき)」の頃、つまり春に山から野へ下りてきて「田の神」となり、サクラの木に宿り、稲作をはじめとする豊穣をもたらすという「サ神信仰」とも親和性があるように感じられる。

山の神が田の神となる「サ神信仰」については、こちらのページ「さくら 意味・語源・由来」で解説しているので、

関連ページ

春の童謡・唱歌・日本のうた
『春が来た』、『春よ来い』など、春をテーマとした民謡・童謡、春に関連する日本のうた・世界の歌
4月の年中行事・イベント 一覧
お花見、エイプリルフール、入学式・入社式、イースター(復活祭)
4月のうた
『春が来た』、『花(春のうららの隅田川)』、『さくらさくら』、『春の小川』など、4月に関連する民謡・童謡、4月の年中行事やイベントをテーマとした歌など、4月に相応しい「4月のうた」まとめ。
イースター(復活祭)とは?
毎年3月から4月に行われるキリスト教の復活祭で、ウサギ(イースターバーニー)が登場する理由とは?
夏は来ぬ 歌詞の意味
卯の花の匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて
大黒様(だいこくさま)
日本神話「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」に基づく童謡
うさぎのうた ウサギに関連する童謡・唱歌
可愛いウサギが出てくる有名な歌まとめ
年中行事・季節のイベント
日本と世界の年間行事、祝祭日、季節のイベント、暮らしの歳時記