エクセルシオール(より高く)Excelsior

アメリカの詩/ロングフェロー(19世紀アメリカの詩人)

「エクセルシオール(より高く)Excelsior」は、19世紀アメリカの詩人ロングフェロー(Henry Wadsworth Longfellow/1807-1882)による1841年に出版された短詩。

「Excelsior」とは、ラテン語で「優れた」、「気品のある」、「常に向上する」などを意味し、日本語でのカタカナ表記としては「エクセルシア」とも表記される。

「Excelsior」はニューヨーク州の標語・モットーとなっており、ニューヨーク州旗のデザインにも文字が刻まれている。

ロングフェローの短詩「エクセルシオール(より高く)Excelsior」では、雪山に登ろうとする若い男性が主人公として登場する。

彼は「Excelsior」と書かれた旗を掲げ、村人たちによる再三の警告にもひるむことなく、ただひたすらに高みを目指す主人公のひたむきな姿が描かれている。

ちなみに、詩の冒頭の「The Shades of night were falling fast」は、19世紀アメリカ南北戦争で歌われた『Upidee song(ユッパイディ)』に引用され、その他の部分もパロディ的に歌詞に取り入れられている。

詩の全文・日本語訳(意訳)

The shades of night were falling fast,
As through an Alpine village passed
A youth, who bore, 'mid snow and ice,
A banner with the strange device,
Excelsior!

にわかに来たる夕闇
アルプスの村を横切り
若者は掲げる 氷雪の中
見たこともない紋章の旗を
より高く!

His brow was sad; his eye beneath,
Flashed like a falchion from its sheath,
And like a silver clarion rung
The accents of that unknown tongue,
Excelsior!

悲しそうに歪む眉 その下の眼差しは
鞘から抜いたファルシオンの如く輝き
銀のラッパのように
聞き覚えのない言葉が響く
より高く!

In happy homes he saw the light
Of household fires gleam warm and bright;
Above, the spectral glaciers shone,
And from his lips escaped a groan,
Excelsior!

遠くの幸せそうな家に
暖かく輝く家族団欒の光を見る
頭上に現れるは氷河の幻
彼の口から漏れる言葉は
より高く!

"Try not the Pass!" the old man said:
"Dark lowers the tempest overhead,
The roaring torrent is deep and wide!
And loud that clarion voice replied,
Excelsior!

「進んではいけない!」老人は言った
「闇が立ち込め嵐がくる
激流はうなり 深くて広いぞ!」
大きく響く声が応える
より高く!

"Oh stay," the maiden said, "and rest
Thy weary head upon this breast!"
A tear stood in his bright blue eye,
But still he answered, with a sigh,
Excelsior!

「行ってはいけない」少女は言った
「ここで休みなさい」
彼の輝く青い目には一粒の涙
ため息とともに彼が応えるは
より高く!

"Beware the pine-tree's withered branch!
Beware the awful avalanche!"
This was the peasant's last Good-night,
A voice replied, far up the height,
Excelsior!

「枯れた松の枝に気をつけろ 
雪崩も怖いぞ!」
農民の最後の言葉だった
声は応える さらに高い響きで
より高く!

At break of day, as heavenward
The pious monks of Saint Bernard
Uttered the oft-repeated prayer,
A voice cried through the startled air,
Excelsior!

夜が明け 天に向かって
敬虔なサン・ベルナールの修道士が
いつもの祈りを捧げる
叫ぶ声に空気も震える
より高く!

A traveller, by the faithful hound,
Half-buried in the snow was found,
Still grasping in his hand of ice
That banner with the strange device,
Excelsior!

忠犬が旅人を見つけた
雪に半ば埋もれながら
凍った手で握り続けていたのは
見たこともない紋章の旗だった
より高く!

There in the twilight cold and gray,
Lifeless, but beautiful, he lay,
And from the sky, serene and far,
A voice fell, like a falling star,
Excelsior!

薄暗く冷たい夜明けの光
息絶え横たわる美しき姿
はるか遠くの澄み渡った空から
その声は流星のごとく舞い降りる
より高く!

関連ページ

The Upidee Song ユッパイディ
19世紀アメリカ南北戦争で歌われた。日本では合唱曲に。