五木の子守唄 歌詞の意味
故郷を離れ、住み込みで子守の奉公をする「守り子」の悲哀
「おどま盆ぎり盆ぎり 盆から先きゃおらんと」の歌い出しで有名な『五木の子守唄』(いつきのこもりうた)は、熊本県球磨郡五木村が発祥とされる熊本県民謡。
写真は五木村の風景(出典:熊本県 五木村役場Webサイト)。
曲名を見ると、子供を寝かしつけるための穏やかで優しい典型的な「子守唄」を想像するが、「おどま盆ぎり盆ぎり…」から始まる歌詞では、故郷を離れ住み込みで子守の奉公をする若い「守り子」の辛い心情・悲哀が描かれている。
【YouTube】五木の子守唄 山口淑子(李香蘭)
有名な歌詞の一例
おどま盆ぎり盆ぎり
盆から先きゃおらんと
盆が早よくりゃ早よもどる
おどま勧進勧進(かんじん かんじん)
あん人たちゃよか衆
よか衆ゃよか帯よか着物
歌詞の意味
私は盆まで
盆から先はいないよ
盆が早く来るなら
すぐにでも帰るのに
私は貧しい
あの人達は裕福
良い帯に立派な着物
実際は『五木の守り子歌』?
内容的には、曲名は『五木の守り子歌』、『五木の子守哀歌』といった感じが誤解が少なそうだが、実際に守り子がこの民謡を子守歌として歌っていたのであれば、現状どおり『五木の子守唄』で問題はないだろう。
『五木の子守唄』は戦後にレコード化され、お座敷唄の曲調で一般的に知られるようになった。これとは別に、商業的な色合いの薄い『正調・五木の子守唄』も存在する。
歌詞には様々なバリエーションが存在し、伝承者によって多様な歌詞が伝えられている。どの歌詞が元歌なのかも不明であり、五木村以外の近隣の村でも類似した「子守唄」が確認されているなど、そのルーツを明らかにすることは難しそうだ。
童謡『赤とんぼ』も守子の歌
「夕焼小焼の赤とんぼ」が歌いだしの童謡『赤とんぼ』は、『五木の子守唄』と何も関係がなさそうだが、実は「守り子」に関する歌というつながりがある。
『赤とんぼ』の歌詞では、「負われて見たのはいつの日か」というくだりがあるが、赤ん坊の頃に自分を背負ってくれていたのは、他でもない守り子の「ねえや」なのである。
「十五で姐や(ねえや)は嫁に行き」という『赤とんぼ』の歌詞は、『五木の子守唄』で歌われているような守り子の娘を、お世話されていた子供の視点から描写した歌だったのだ。
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