元寇 軍歌 歌詞の意味 永井建子
鎌倉時代にモンゴル帝国(元朝)が日本へ侵攻した蒙古襲来の歴史
『元寇』(げんこう)は、1892年(明治25年)に発表された日本の軍歌。歌い出しは「四百余洲(しひゃくよしゅう)を挙(こぞ)る 十万余騎(じゅうまんよき)の敵」。
作詞・作曲は、『歩兵の本領』、『雪の進軍』などを手がけた陸軍軍楽隊士官の永井建子(ながい けんし/1865-1940)。
写真:蒙古襲来絵詞(画像の一部分を抜粋)出典:Wikipedia
歌詞の内容は、鎌倉時代にモンゴル帝国(元朝)が2度にわたり日本へ侵攻した蒙古襲来の歴史を題材としており、二度目の侵攻である弘安の役(1281年)に焦点が当てられている。
【YouTube】元寇 軍歌
全体の歌詞
1.
四百余洲(しひゃくよしゅう)を挙(こぞ)る
十万余騎(じゅうまんよき)の敵
国難ここに見る
弘安四年夏の頃
なんぞ怖れんわれに
鎌倉男児あり
正義武断(ぶだん)の名
一喝(いっかつ)して世に示す
2.
多々良(たたら)浜辺の戎夷(えみし)
そは何 蒙古勢(もうこぜい)
傲慢 無礼者
倶(とも)に天を戴(いただ)かず
いでや進みて忠義に
鍛えし我が腕(かいな)
ここぞ国のため
日本刀を試し見ん
3.
こころ筑紫(つくし)の海に
浪(なみ)おし分けて往(ゆ)く
ますら猛夫(たけお)の身
仇(あだ)を討ち帰(かえ)らずば
死して護国の鬼と
誓いし箱崎の 神ぞ知ろし召す
大和魂(だま)いさぎよし
4.
天は怒りて海は
逆巻(さかま)く大浪(おおなみ)に
国に仇(あだ)をなす
十余万の蒙古勢は
底の藻屑(もくず)と消えて
残るは唯三人(ただみたり)
いつしか雲はれて
玄海灘(げんかいなだ)月清し
写真:元軍の船が数多く沈んだ鷹島神崎遺跡(海底遺跡)出典:Wikipedia
1番の歌詞の意味
『元寇』1番の歌詞で、主な語句の意味は次のとおり。
四百余洲(しひゃくよしゅう)
中国全土を指す呼び方
挙(こぞ)る
兵を残らず集めること
弘安四年
1281年
なんぞ怖れん
「何を恐れることがあろうか、いや無い」の意味
武断(ぶだん)
勢いよく断行すること。きっぱりと断行すること。
2番の歌詞の意味
『元寇』2番の歌詞で、主な語句の意味は次のとおり。
多々良(たたら)浜辺
博多湾に注ぐ多々良(たたら)川流域の平野部を指す。
「たたら」という地名については、神功皇后の頃(2世紀前後)、大陸渡来の鋳物(いもの)師がこの地に住み着き、川砂の砂鉄で「たたら製鉄」の技法により鋳物を行っていたことに由来するとされる。
戎夷(えみし)
野蛮な民族。文化の遅れた民族。戎夷(じゅうい)の読みが一般的。
蒙古勢(もうこぜい)
モンゴル帝国の軍勢
倶(とも)に天を戴(いただ)かず
この世で共に生きていられない(生かしてはおけない)ほどの、深い恨みや憎しみ、怒り。不倶戴天(ふぐたいてん)。由来は中国・戦国時代の「礼記(らいき)」。
3番の歌詞の意味
『元寇』3番の歌詞で、主な語句の意味は次のとおり。
こころ筑紫(つくし)の海
「心を尽くす」と「筑紫(つくし)の海」で、「つくし」が掛詞(かけことば)になっている。筑紫(つくし)は、古代での九州の総称で、主に北部九州を指した。
鎌倉幕府の武士である御家人(ごけにん)は、将軍に忠誠義務を尽くす代償として、所領安堵や新恩の給与などの保護をうけた。御恩と奉公。
ますら猛夫(たけお)
強く勇敢な男。ますらお。
箱崎の神
福岡県福岡市箱崎の神社である筥崎宮(はこざきぐう)、または筥崎八幡宮(はこざきはちまんぐう)のこと。主祭神は応神天皇。
元寇の際、亀山上皇が「敵国降伏」を祈願し、神門に「敵国降伏」の扁額(へんがく)が掲げられた。以来、海上交通・海外防護の神として信仰されている。
知ろし召す
知っていらっしゃる、お治めになる、統治なさる。
4番の歌詞の意味
『元寇』4番の歌詞では、いわゆる「神風(かみかぜ)」が吹き、元軍が大損害を出して撤退に追い込まれた様子が描写されている。
弘安4年7月30日夜半、台風が襲来し、平戸島・鷹島(たかしま)周辺に停泊していた元軍の軍船の多くが、高波で沈没・衝突するなどして大損害を被った。
台風により荒れた大波の様子は「山の如し」であったという。歌詞では「海は逆巻く大浪に」の部分。
玄界灘(げんかいなだ)は、九州の北西部に広がる海域。大陸棚が広がり、対馬海流が流れる。
筥崎宮(はこざきぐう)
写真は、福岡県福岡市箱崎の神社「筥崎宮(はこざきぐう)」(出典:Wikipedia)。神門に「敵国降伏」の扁額(へんがく)が掲げられている。
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