キジも鳴かずば ことわざの意味
由来・ルーツの民話・伝説まとめ
口は災いの元 長柄橋と久米路橋の人柱伝説とは?
「キジも鳴かずば撃たれまい」は、不必要な発言によって災いを招いてしまった人を憐れむ日本のことわざ。口語的には「余計な事を言わなきゃ、そんな目に合わなかったのに」といった意味になるだろうか。「口は災いの元」というやつだ。
「キジも鳴かずば撃たれまい」の由来・ルーツについては諸説あるが、ここでは有名な大阪と長野の二つの民話について簡単にご紹介したい。実話のように伝えられることもあるが、民話・昔ばなし的に捉えておくのが良いかもしれない(写真:キジ/出典:Wikipedia)。
大阪・長柄橋の人柱伝説
現在の大阪・淀川には長柄橋(ながらばし)というアーチ橋があるが、9世紀の嵯峨天皇の時代にも、これと同じ名前の橋が淀川に架けられた。写真は現在の長柄橋。
工事の際は川が度々氾濫して難航。近くで雉(キジ)が鳴く中、橋奉行らが相談していたところ、近くを夫婦が通りかかり、夫がこうつぶやいた。
「袴の綻びを白布でつづった人をこの橋の人柱にしたらうまくいくだろう」
これを聞いた橋奉行らは、その男(夫)がまさにその通りの格好をしていることに気が付くと、すぐに男を捕らえてその場で人柱にしてしまった。
夫を失った妻は悲しみ、次のような句を詠んで淀川に身を投じてしまったという。
「ものいへば 長柄の橋の橋柱 鳴かずば雉の とられざらまし」
この逸話は、14世紀頃の書籍「神道集」に収められている。
ちなみに、類似の伝説では、次のような句が詠まれるバージョンもある。
「ものいわじ 父は長柄の人柱 鳴かずば雉も 射られざらまし」
長野・久米路橋の人柱伝説
かつて上杉謙信と武田信玄が「川中島の戦い」を繰り広げた長野県の犀川(さいがわ)。その附近にある久米路橋(くめじばし/下写真)には、「キジも鳴かずば撃たれまい」に関連する伝説が残されている。
何度架けても流されてしまう久米路橋を鎮めるため、村人たちは囚人を人柱にすることにした。ちょうど小豆を盗んで捕まっていた男がその犠牲となった。
男は幼い愛娘のために盗みを働いたのだが、幼い娘は「毎晩赤飯を食べている」と言いふらしてしまったために発覚し、父は捕まって人柱にされてしまったのだった。
父を失った娘はそれ以来、悲しみのあまり一言も口をきかなくなってしまった。ある日、娘がたたずんでいると、近くで鳴いたキジを狩人が鉄砲で撃ち落とす光景を目にした。
「キジも鳴かずば、撃たれまいに」
と言って娘は再び口を閉ざし、それから一生口をきくことはなかった。
キジの鳴き声と民謡
キジは草地を歩くためただでさえ猟師に狙われやすいが、縄張り争いのために「ケーン」と大声で鳴くため、さらに狙い撃ちされやすい状況に自ら陥ってしまう。
キジの「ケンケン」という鳴き声は民謡にも取り入れられ、特に有名なのが、長野県の隣の岐阜県に伝わる民謡『げんげんばらばら』。
同曲は、岐阜県郡上市八幡町(郡上八幡)で毎年夏に開催される「郡上おどり」における踊り・郡上節の一つとして知られている。
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