見てござる 童謡の歌詞と意味
作者の故郷・長野県長野市の情景に基づく終戦直後の童謡
『見てござる』は、終戦直後の1945年10月にラジオ放送で発表された日本の童謡。作詞:山上武夫、作曲:海沼 實(かいぬま みのる)。
1939年(昭和14年)に発表された『お猿のかごや』と同じく海沼・山上コンビによる童謡作品。
二人は故郷も同じ長野県松代町(現・長野市)で、歌詞は、松代藩主・真田家の菩提寺である長国寺そばのお地蔵さんや、千曲川べりの田園風景がモデルになっているという。
『見てござる』の「ござる」とは、「居る」「行く」「来(く)」の尊敬語で、「いらっしゃる」の意味。
これに対して、よく漫画やアニメなどで忍者や侍のキャラクターが語尾につける「~でござる」は、「有り」「居(を)り」の丁寧語で、「~であります」「~でございます」の意味となる。
【YouTube】 見てござる 川田孝子
歌詞
『見てござる』の歌詞は、長野県松代町(現・長野市)の情景が元になっているとのことだが、一体どのような描写がなされているのだろうか?
山上武夫の作詞による『見てござる』の歌詞を次のとおり引用して、その内容を簡単に確認してみよう。
村のはずれの お地蔵さんは
いつも にこにこ 見てござる
なかよしこよしの ジャンケンポン「ホイ」
石けり なわとび かくれんぼ
元気に遊べと 見てござる「ソレ」
見てござるたんぼ田中の かかしどんは
いつも いばって 見てござる
ちゅんちゅん ばたばた 雀ども「ホイ」
お米をあらしに きはせぬか
お肩をいからし 見てござる「ソレ」
見てござる山のからすの かん三郎は
いつも かあかあ 見てござる
おいしいおだんご どこじゃいな「ホイ」
お山の上から キョロキョロと
あの里 この里 見てござる「ソレ」
見てござる
3番まである歌詞の中で、村はずれのお地蔵さん、田んぼのカカシ、山のカラスのかん三郎が、それぞれ何かを「見ていらっしゃる」様子が描写されている。
長国寺のお地蔵さん
お地蔵さんについては、長野県松代町(現・長野市)の長国寺そばに実在したお地蔵さんがモデルとなっているそうだ。
写真:長国寺(長野市)出典:Wikipedia
千曲川沿いの田んぼのカカシ
2番の歌詞にある田んぼのカカシについては、長野県を流れる千曲川沿いの田園風景が元になっているそうだ。
写真:千曲川(長野県上田市)
千曲川(信濃川)は『万葉集』の頃から多くの詩歌に歌われ、島崎藤村『小諸なる古城のほとり』、長野県出身の作詞家・高野辰之による『朧月夜(おぼろづきよ)』、『故郷(ふるさと)』などの唱歌・歌曲の舞台としても描写されている。
カラスの勘三郎
3番の歌詞にある「勘三郎(かんざぶろう)」とは、カラスを指す語呂のいい愛称で、「カラスの勘左衛門(かんざえもん)」などと呼ばれることもある。
カラスの「カ」と、勘三郎の「か」の音が、語呂良く頭韻(とういん)を踏んでいるだけの意味のない呼称で、明治時代頃から子供たちの「わらべうた」の中で歌われてきた。
ちなみに、漫画『鬼滅の刃』に登場するキャラクター冨岡義勇にあてがわれているカラス「寛三郎(かんざぶろう)」は、このカラスの勘三郎(という愛称)に由来していると考えられる。
写真:ねんどろいど 鬼滅の刃 冨岡義勇 カラスの寛三郎
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