愛の讃歌 Hymne à l'amour 歌詞と和訳
エディット・ピアフ自身が作詞を手掛け恋人に捧げたシャンソン
『愛の讃歌』(Hymne à l'amour)は、フランスの国民的歌手エディット・ピアフ(Édith Piaf/1915-1963)が1949年に発表したシャンソン。
『バラ色の人生(La Vie en rose)』と並ぶ、エディット・ピアフの代表曲。
作曲はマルグリット・モノー(Marguerite Monnot)。歌詞はエディット・ピアフ自身による作詞で、恋人のマルセル・セルダン(Marcel Cerdan)に捧げたとされている。
マルセル・セルダンはボクシングのチャンピオン(妻子持ち)であり、1949年10月28日に飛行機事故で亡くなったが、同曲はセルダンの生前に書かれたもの。妻子を持つセルダンとの恋愛に終止符を打つために書かれたとされる。
日本語カバーされた『愛の讃歌』はいくつか存在するが、越路吹雪が歌った岩谷時子の訳詞が有名。歌い出しの歌詞は「あなたの燃える手で あたしを抱きしめて」。
このページでは、原曲『Hymne à l'amour』のフランス語の歌詞について、歌詞の意味・和訳(意訳)を掲載したうえで、越路吹雪が歌った日本語歌詞とフランス語の歌詞の内容を簡単に比較してみたい。
【YouTube】愛の讃歌 Edith Piaf - Hymne à l'amour
歌詞の意味・和訳(意訳)
『Hymne à l'amour』
作詞:エディット・ピアフ(Édith Piaf/1915-1963)
Le ciel bleu, sur nous peut s'effondrer
Et la terre, peut bien s'écrouler
Peu m'importe, si tu m'aimes
Je me fous, du monde entier
空が落ちてこようと
大地が崩れ去ろうと
構わないわ
あなたが愛してくれるなら
世界がどうなろうと
Tant qu'l'amour, inondera mes matins
Tant qu'mon corps, frémira sous tes mains
Peu m'importent, les problèmes
Mon amour, puisque tu m'aimes
愛にあふれた朝があれば
あなたの手に包まれていれば
どうでもいいの
世の中の問題なんて
愛しい人
あなたが愛してくれるから
J'irais jusqu'au bout du monde
Je me ferais teindre en blonde
Si tu me le demandais
J'irais décrocher la lune
J'irais voler la fortune
Si tu me le demandais
世界の果てだって行くわ
金髪に染めてもいい
あなたが望むなら
月だって手に入れてみせる
財宝だって奪ってみせる
あなたが望むなら
Je renierais ma patrie
Je renierais mes amis
Si tu me le demandais
On peut bien rire de moi
Je ferais n'importe quoi
Si tu me le demandais
祖国だって捨てる
友人だって捨てる
あなたが望むなら
笑われたって構わない
何だってやってみせる
あなたが望むなら
Si un jour, la vie t'arrache à moi
Si tu meurs, que tu sois loin de moi
Peu m'importe, si tu m'aimes
Car moi je, mourrai aussi
もしいつか お別れの時が来て
あなたが死んでしまっても
構わないわ あなたが愛してくれるなら
私も一緒に死ぬから
Nous aurons, pour nous l'éternité
Dans le bleu, de toute l'immensité
Dans le ciel, plus de problèmes
Mon amour, crois-tu, qu'on s'aime ?Dieu réunit, ceux qui s'aiment !
私たちは永遠を得るの
広大な青空の中で
何の悩みもない空で
愛しい人
二人の愛を信じられる?
神よ 愛し合う二人を
再び結ばせたまえ
越路吹雪による日本語歌詞
いくつか存在する『愛の讃歌』日本語歌詞の中では、越路吹雪が歌った岩谷時子の訳詞がおそらく最も有名と思われる。
原曲のフランス語の歌詞と比較して、どのような違いがあるだろうか?
岩谷時子の訳詞による『愛の讃歌』日本語歌詞を次のとおり引用し、その内容を簡単に確認してみよう。
あなたの燃える手で
あたしを抱きしめて
ただ二人だけで 生きていたいの
ただ命の限り あたしは愛したい
命の限りに あなたを愛するの頬と頬よせ
燃えるくちづけ
交わすよろこび
あなたと二人で
暮せるものなら
なんにもいらない
なんにもいらない
あなたと二人
生きて行くのよ
あたしの願いは
ただそれだけよ
あなたと二人固く抱き合い 燃える指に髪を
からませながら いとしみながら
くちづけを交わすの
愛こそ燃える火よ
あたしを燃やす火
心とかす恋よ
岩谷時子の訳詞では、原曲のフランス語で使われていた若干過激な表現はすべて除外され、主人公の女性の情熱的な願望がストレートに表現されている。
「燃える手」「燃える指」「燃えるくちづけ」「愛こそ燃える火」のように、愛の熱量を燃える火に例えて繰り返し描写しているのが興味深い。
岩谷時子は、越路吹雪のマネージャーとして『愛の讃歌』や『サン・トワ・マミー』などのシャンソンの訳詞を手がけたほか、加山雄三 『君といつまでも』、『お嫁においで』、ザ・ピーナッツ『恋のバカンス』、ピンキーとキラーズ 『恋の季節』などの作詞も行っている。