レット・イット・ビー Let It Be 歌詞の意味・和訳

ポール・マッカートニーの亡き母メアリーが夢枕に現れ残した言葉

『Let It Be』(レット・イット・ビー)は、1970年3月にシングル盤で発売されたビートルズの楽曲。レノン=マッカートニー名義だが、実際はポール単独の作品。

翌月にマッカートニーが脱退を宣言し、ビートルズは事実上解散となったため、『Let It Be』はビートルズが活動中にリリースした最後のシングルとなった。

ソウルの女王アレサ・フランクリンは、事前にビートルズから『Let It Be』の楽曲提供を受けており、ビートルズよりも2か月ほど前の1970年1月に、アルバムの一曲としてゴスペル版『Let It Be』を発表している(詳細は後述)。

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ジャケット写真: レット・イット・ビー スペシャル・エディション SHM-CD 5枚組 Blu-Ray Audio付

『Let It Be』がレコーディングされた前年の1968年、マッカートニーはビートルズが分裂の危機にあることを悲観していた。ある夜、亡き母メアリーが夢枕に現れ、「あるがままを、あるがままに、全てを受け容れるのです」と囁いたという。

マッカートニーが14歳の頃にガンで死去した亡き母が夢枕に現れたことについて、「母に再会できたのは本当によかった。夢で祝福された気分だった。だから僕は母の囁きを元に『レット・イット・ビー』を書いたんだ」と語っている。

なお、このページに掲載した歌詞の和訳では、あくまでも一つの解釈として、ゴスペル的・キリスト教的な文脈に基づき「聖母マリア」を訳に用いている(詳細は後述)。

【YouTube】 Let It Be - The Beatles

歌詞の意味・和訳(意訳)

『Let It Be』

作詞:作曲:Lennon–McCartney

When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be

僕が苦難の時
聖母マリアが現れ
知恵を授けてくれる
「あるがままを受け入れなさい」と

And in my hour of darkness
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom
Let it be

暗闇の中にいる時
彼女は目の前に立ち
知恵を授けてくれる
「あるがままを受け入れなさい」と

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be

あるがままを あるがままに
全てを受け容れるのです
それは知恵のささやき
「あるがままを受け入れなさい」

And when the broken-hearted people
Living in the world agree
There will be an answer
Let it be

世界中に住んでいる
心を痛めた人々が同意するとき
答えはそこにあるだろう
「あるがままを受け入れなさい」

For though they may be parted there is
Still a chance that they will see
There will be an answer
Let it be

離れ離れだとしても
再会のチャンスはまだある
答えはそこにあるだろう
「あるがままを受け入れなさい」

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Yeah, there will be an answer
Let it be

あるがままを あるがままに
全てを受け容れるのです
そうさ 答えはそこにあるだろう
「あるがままを受け入れなさい」

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be

あるがままを あるがままに
全てを受け容れるのです
それは知恵のささやき
「あるがままを受け入れなさい」

And when the night is cloudy
There is still a light that shines on me
Shine until tomorrow
Let it be

曇りの夜も
僕を照らす明かりはまだある
夜明けまで輝く
「あるがままを受け入れなさい」

I wake up to the sound of music
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be

音楽が聴こえて目を覚ますと
聖母マリアが現れ
知恵を授けてくれる
「あるがままを受け入れなさい」と

Let it be, let it be
Let it be, let it be
There will be an answer
Let it be

あるがままを あるがままに
全てを受け容れるのです
そうさ 答えはそこにあるだろう
「あるがままを受け入れなさい」

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be

あるがままを あるがままに
全てを受け容れるのです
それは知恵のささやき
「あるがままを受け入れなさい」

聖母マリアとの関係

歌詞に登場する「Mother Mary」(マザーメアリー)とは、前述のとおりマッカートニーの亡き母メアリーを意味しているが、ゴスペル的・キリスト教的な文脈においては、これを「聖母マリア」と解釈することもできる。

レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」

写真:レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」(出典:Wikipedia)

新約聖書「ルカによる福音書」英語版(Literal Standard Version)では、聖母マリアが天使から受胎告知を受ける場面で、「Let it be」という表現が次のように用いられている。

And Mary said, "Behold, the maidservant of the LORD; let it be to me according to your saying," and the messenger went away from her.

そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。

出典:新約聖書『ルカによる福音書』1章38節(ウィキソース 口語訳聖書)

このような聖書的解釈について、マッカートニーは「聖母マリアのことだと解釈してくれても構わない」と答えている(まさに「Let it be」)。

アレサ・フランクリンに捧げられた曲?

前述のとおり、「ソウルの女王」と称賛されるアメリカの女性歌手アレサ・フランクリン(Aretha Louise Franklin/1942-2018)は、1970年1月15日にリリースしたアルバム「This Girl's in Love with You」の中で、ゴスペル版『Let It Be』を発表している。

これは、ビートルズが『Let It Be』シングル盤をリリースした1970年3月より約2か月早い発表となっている。

Aretha Franklin This Girl's in Love with You

ジャケット写真:『Let It Be』収録「This Girl's in Love with You」

同アルバムについて、英語版ウィキペディアでは次のように解説されている。

Her version of The Beatles' "Let It Be" was the first recording of the song to be commercially issued ... Songwriter Paul McCartney sent Franklin and Atlantic Records a demo of the song as a guide.

この解説によれば、アレサ・フランクリン盤は、「商業的にリリースされた最初の"Let It Be"」と位置づけられるようだ。そして作曲者のポールマッカートニーは、アレサ・フランクリンとアトランティック・レコード社にデモテープを送ったと記されている。

ネットで検索すると、『Let It Be』は「アレサ・フランクリンのために書き下ろしたものだった」とする解説を見かけることがあるが、筆者はこれを裏付ける記述をウィキペディアで確認することはできなかった。

『Let It Go』との違いは?

『Let It Be』の曲名を聞くと、ディズニー映画「アナと雪の女王」主題歌『Let It Go』(レット・イット・ゴー)を思い出される方がいるかもしれない。

確かに曲名は部分一致するが、その意味している内容は対照的で、両曲を簡単に比較してみると、『Let It Be』の内容がより鮮明に浮かび上がってくる。

アナと雪の女王 ブルーレイ

「アナと雪の女王」主題歌『Let It Go』では、自分の内側に隠していた魔法の力を外側へ解放するという「内から外へ」の方向性となっていた。

これに対し、ビートルズ『Let It Be』では、自分の外側にある強大で残酷な世界について、それを無謀にも変えようと抵抗したり、何も変えられずに悩んだり苦しんだりせず、あるがままの世界を、あるがままに、全てを受け容れようと説く「外から内へ」の方向性が感じ取れる。

変えられないことを変えようとすると、悩みや苦しみが生まれる。自分ではどうにもならない現実を、あるがままに受け容れていくことが、前向きに生きていくための一つの知恵なのかもしれない。

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