レット・イット・ゴー Let It Go 歌詞の意味・和訳
ディズニー映画「アナと雪の女王」主題歌
『Let It Go』(レット・イット・ゴー)は、2013年に公開されたディズニー映画「アナと雪の女王」(原題「Frozen/フローズン」)主題歌。日本では「レリゴー」の愛称でも親しまれる。
劇中ではアナの姉・エルサが王国を離れて氷の宮殿を建てるシーンで挿入歌として歌われる。ブロードウェイのミュージカル女優イディナ・メンゼル(Idina Menzel/1971-)の歌声(声域)を念頭に置いて作曲された。
2014年3月の第86回アカデミー賞授賞式ではイディナ・メンゼル本人が『Let It Go』を熱唱している(アカデミー歌曲賞を受賞)。
続編「アナと雪の女王2(Frozen II)」主題歌『Into the Unknown』(イントゥ・ジ・アンノウン)についてはこちら。
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当初、映画「アナと雪の女王」の脚本では、魔法の力を持つエルサは悪役的な位置付けで描写されていたという。
しかし、ドラマチックな主題歌『Let It Go』(レット・イット・ゴー)が完成し、その圧倒的な存在感を前にすると、エルサを主人公クラスの扱いとするよう演出やストーリーの手直しが行われ、本作が完成した。
『Let It Go』は、アメリカの女優・歌手デミ・ロヴァート(Demetria Devonne "Demi" Lovato/1992-)によりカバーされたほか、吹き替えの声優を担当した日本の女優・松たか子版や、エンドロール(エンディング)で流れたMay J.(メイ・ジェイ)版、その他全世界41の言語に翻訳された。
また、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、日本語など、エルサ役を演じた世界中の女優22人が『Let It Go』をメドレー形式で歌う25か国語版のミュージックビデオもYouTubeなどで動画が公開されている
【YouTube】Let It Go Official Disney
【YouTube】 松たか子ver(日本語吹替版)「Let It Go」
歌詞の意味・和訳(意訳)
『Let It Go』(レット・イット・ゴー)
作詞・作曲:クリステン・アンダーソン=ロペス(Kristen Anderson-Lopez)/ロバート・ロペス(Robert Lopez)
The snow glows white
on the mountain tonight
Not a footprint to be seen
A kingdom of isolation
And it looks like I'm the queen
雪が白く輝く
今夜の山に
足跡は一つもない
孤立した王国で
私は女王のよう
The wind is howling
like this swirling storm inside
Couldn't keep it in,
Heaven knows I've tried
風が唸っている
心の中を渦巻く嵐のように
もう抑えられなかった
神様は私の努力を知ってる
Don't let them in,
don't let them see
Be the good girl
you always have to be
誰も入れてはダメ
誰かに見られてはダメ
いい子でいなさい
いつものように
Conceal, don't feel,
don't let them know
Well, now they know!
隠しなさい 何も感じるな
誰にも知られてはダメ
でも、もうみんな知ってしまったわ!
Let it go, let it go
Can't hold it back anymoreLet it go, let it go
Turn away and slam the door!
ありのままに 解き放つの
もう抑えられない
ありのままに 解き放つの
背を向けて 扉を閉ざして
I don't care what they're going to say
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway
私は気にしない
彼らが何と言おうとも
嵐よ吹き荒れろ
寒さは私を困らせなかったわ
It's funny how some distance
Makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can't get to me at all!
おかしなことね 離れてみれば
全てがちっぽけに感じるわ
かつて私を支配してた恐怖にも
私はもうとらわれない
It's time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me
I'm free!
試す時が来たの 私に何が出来るかを
限界を試して それを越えていくの
正解も 間違いも ルールもない
私は自由なのよ!
Let it go, let it go
I'm one with the wind and skyLet it go, let it go
You'll never see me cry
ありのままに 解き放つの
私は風と空と共に
ありのままに 解き放つの
もう私は泣かない
Here I stand, and here I'll stay
Let the storm rage on!
私ここに立ち ここにとどまる
嵐よ吹き荒れろ!
My power flurries
through the air into the ground
My soul is spiraling
in frozen fractals all around
私の力が吹き付ける
空気を伝って大地へ
私の魂は渦巻く
氷の結晶の中で
And one thought crystallizes
like an icy blast
I'm never going back,
the past is in the past
思いは結晶となる
冷たい突風のように
もう戻らない
過去は過去なのよ
Let it go, let it go
And I'll rise like the break of dawnLet it go, let it go
That perfect girl is gone
ありのままに 解き放つの
私は立ち上がる 夜明けのように
ありのままに 解き放つの
あの完璧な女の子はもういない
Here I stand in the light of day
Let the storm rage on!
The cold never bothered me anyway
私は立つ 日の光の中で
嵐よ吹き荒れろ!
寒さは私を困らせなかったわ
日本語の訳詞について
松たか子やMay J.が歌った日本語版『Let It Go~ありのままで~』の歌詞は、原曲とどのような違いがあるのだろうか?
比較のために、高橋 知伽江(たかはし ちかえ)の訳詞による日本語版の歌詞を次のとおり引用する。
降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に ひとりのわたし
風が心にささやくの
このままじゃ ダメなんだととまどい 傷つき
誰にも 打ち明けずに 悩んでた
それももう やめようありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も怖くない 風よ吹け
少しも寒くないわ悩んでたことが うそみたいね
だってもう自由よ なんでもできるどこまでやれるか
自分を試したいの
そうよ変わるのよ わたしありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるの
二度と 涙は流さないわ冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたのこれでいいの 自分を好きになって
これでいいの 自分信じて
光あびながら 歩きだそう
少しも寒くないわ<引用:高橋 知伽江『Let It Go~ありのままで~』歌詞より>
原曲では、氷の力を隠すため周囲から隔離され、恐怖に支配され抑えつけられていたエルサの様子が描写されている。
それに対して、この日本語版の歌詞では、周囲からの抑圧を示す部分がほぼなくなっている。筆者の私見では、まるで引っ込み思案で自分に自信が無い子が一人で悩んでいたような、原曲とは若干ニュアンスの異なる印象を受ける。
ただ、英語の歌詞を日本語で歌えるように訳すのは本当に難しいことで、この程度のギャップが生じてしまうのは仕方がない。
同じ長さの音節でも、日本語は英語より情報量が少なくなってしまうことが多いので、原曲の内容を100%反映することは困難である。
さらに、日本語訳を一層困難にさせた事情がもう一つある。それは「リップ・シンク」だ。
リップ・シンクと訳詞
「アナと雪の女王」をはじめとするディズニー映画では、『Let It Go』のような挿入歌をキャラクターが歌うシーンにおいて、その口元の動きは、実際の人間が(英語で)発音する際の動きとシンクロ(同調)していることが多い。
このような口元の描写のシンクロは「リップ・シンク」と呼ばれることがあるが、これが英語を日本語訳する際の難易度を飛躍的に上昇させる要因となっている。
言うまでもなく、ディズニー映画は「英語」で製作されており、リップ・シンクも「英語」の歌詞を発音する際の口元の動きがアニメ化されている。
驚くべきことに、ディズニー映画では、日本語でも(ある程度)オリジナルの映像とリップ・シンクするように訳詞を行うことが求められる(場合がある)のだ。
もちろん、異なる言語間での100%のリップ・シンクは現実的ではないので、キャラクターの顔がアップになる場面や、音を長く伸ばして歌う場面など、要所要所に範囲を絞って限定的に行われることがほとんどだろう。
日本語版リップシンク
では、具体的に『Let It Go』日本語訳詞において、どこが英語版の歌詞(を歌う映像)とリップ・シンクしているのだろうか?
リップシンクは曲全体で見られるが、最も分かりやすいのが、サビの「♪ありのままの~♪」における、「ありの」の「りの」の部分。「りの」の母音は「いお」だが、英語歌詞「Let it go」の「it go」を発音する際と口元の形がかなり近い。
ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるのLet it go, let it go
Can't hold it back anymoreLet it go, let it go
Turn away and slam the door!
「ありのままの」の「ままのー」の語尾が日本語では「おー」の母音で発音されるが、ここは英語では「go」(ゴー)であり、同じ音で歌われるように配慮されている。
同様に、「姿見せるのよ」の「よー」は「anymore」(エニモーァ)の「モー」、「自分になるの」の「のー」は「door」(ドーァ)の「ドー」とリップ・シンクしている。
つまりこのサビの訳詞では、英語の歌詞(を歌う映像)とのリップシンクを行うために、「おー」の母音で発音される日本語の歌詞を要所要所で使わなければならないという制約が存在するのである。
文字数の制約だけでなく、母音の発音まで原曲に合わせないといけないとは、訳詞者に求められるものは想像以上に大きいと言える。
訳詞者のコメント
この英語と日本語の歌詞でリップシンクを行うことについて、『Let It Go~ありのままで~』の訳詞者である高橋氏は、某Webサイトのインタビューで次のように答えている。
訳詞のためには口の動きがどれくらいクローズアップされるかが重要になります。楽譜に、この音のときは口が尖っているとか、ここの部分は口がアップになっているとか書き込むことから始めます。
<中略>
もちろんすべては無理ですけど、顔がアップになっているときは口の形と日本語の母音を合わせています。
<中略>
“文字と音の数”、さらに“口の形と日本語の母音”を合わせつつ、歌の持つメッセージを訳詞で伝えねばなりません。
<引用:カナダの生活情報サイト「TORJA」2014年9月28日の記事「ディズニー映画『Frozen』の日本語訳詞を担当した高橋 知伽江さん」より>
英語の歌詞を忠実に和訳することも難しいが、それをメロディに合わせて日本語で歌える形で訳していくのは本当に難しい。
更にそれを原曲の口の形に合わせて同じ母音でそろえていくのは、まるで知恵の輪を解いていくような複雑な仕事だ。
これらの条件をすべてクリアした上で、なおかつ聞く人にとって親しみやすい言葉のチョイスが求められる。
こうした訳詞者の苦労を想像しながら日本語歌詞を改めて見てみると、きっと以前とは違った印象で日本語版を楽しむことが出来るだろう。
AIで自動化されたリップシンク
ちなみに近年のCGアニメでは、各国語版にローカライズする際、AI技術により口周りの動きを各言語の発音に合わせて自動生成する「自動リップシンク」が用いられはじめているようだ。
日本語の訳詞に合わせて、AIで自動的にリップシンクした映像を生成してくれるのであれば、上述のような訳詞者の苦労はある程度軽減されることになる。
まだコスト的に発展途上段階だと思われるが、将来的には、こうしたAIによる自動リップシンクが定着していき、『Let It Go~ありのままで~』の訳詞者が経験したような苦労も過去のものとなっていくのだろうか。
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