さくら 意味・語源・由来

春に満開の花を咲かせる桜の木は何故「さくら」と呼ばれるのか?

日本の春を象徴する桜は、一体なぜ「さくら」と呼ばれているのだろうか?桜という言葉の語源・由来・意味について、代表的な説をいくつかまとめてみたい。

同じ「さくら」でも、仕込み客を意味する「サクラ」の語源・由来については、こちらのページ「仕込み客 なぜサクラ?意味・由来・語源」で解説している。

カワヅザクラ 河津桜

写真:河津桜(カワヅザクラ/出典:Wikipedia)

なお、桜をテーマとした歌の歌詞やYouTube動画をまとめた「桜のうた さくらに関する民謡・童謡・音楽」のページにも是非お立ち寄りいただきたい。

稲の神「サ神」説

「さくら」の語源・由来については、Wikipediaで列挙されている三つの説について、簡単に意味や背景を補足してみたい。

まずは、稲の神「サ神」説について、次のとおり引用する。

春に里にやってくる稲(サ)の神が憑依する座(クラ)である。これは天つ神のニニギと木花咲耶姫の婚姻の神話によるものが出どころ。

<引用:Wikipedia「サクラ」より>

「稲(サ)の神」とは、一説によれば、古語では「さ」は山の神を意味し、春になると里に降りてきて田の神・稲の神(稲霊)となると信じられていたという。これを仮に「サ神」説と呼ぶ。

稲の苗を早苗(さなえ)、苗を植える女性を早乙女(さおとめ)、田植えをする5月を皐月(さつき)と呼ぶが、「サ神」説では、これらの先頭に「さ」がついているのは、「さ」が田の神・稲の神(稲霊)を表しているから、と説明される。

そして「サ神」説では、田の神・稲の神が憑依する「座(クラ)」が桜の木であるとして、サ神の座(クラ)を「サクラ」の語源として導き出している。

「サ神」説については、客観的にこれを裏付ける資料等は示されていないので、あくまでも民俗学者らにより戦後に唱えられはじめた仮説にすぎないが、説得力のある興味深い有力説と言えるだろう。

ニニギとサクヤビメの婚姻

「天つ神のニニギと木花咲耶姫の婚姻の神話によるものが出どころ」とのWikipediaの解説について、簡単に補足したい。

「ニニギ」とは、日本神話の主神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)の孫とされる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を指している。

「木花咲耶姫(このはなのさくやびめ)」は、ニニギから求婚された日本神話の女神。「木花(このはな)」とは桜の木と花を意味するとされる。

「ニニギと木花咲耶姫の婚姻の神話」を確認してみたが、残念ながら、「サ神」説を裏付けるようなくだりは見当たらなかった。この点について、Wikipediaの詳細な記述の追記が待たれる。ご存知の方は是非。

「咲く+ら」説

次に、Wikipediaで示された二つ目の「さくら」語源・由来、「咲く+ら」説について、次のとおり引用して確認してみたい。

「咲く」に複数を意味する「ら」を加えたものとされ、元来は花の密生する植物全体を指した。

<引用:Wikipedia「サクラ」より>

複数の「ら」がつく言葉としては、「僕ら」「君ら」「お前ら」などが現代でも使われる。これらは「名詞+ら」の形。

仮に「咲く+ら」とすると「動詞+ら」になるが、動詞と「ら」が結びついた言葉が本当にあるのだろうか?

仮にあったとしても、「花の密生する植物」は桜だけではないので、なぜ「咲く+ら」がサクラだけに適用されたのかも明確ではない。

この仮説は誰が提唱した説か不明だが、興味深い説なので、是非ともWikipediaに出典を明示していただきたい。

サクヤビメの「サクヤ」説

最後に、三番目の「さくら」語源・由来として、サクヤビメの「サクヤ」説を次のとおり引用する。

富士の頂から、花の種をまいて花を咲かせたとされる、「コノハナノサクヤビメ(木花之開耶姫)」の「さくや」をとった。

<引用:Wikipedia「サクラ」より>

これは上述の日本神話の女神「木花咲耶姫(このはなのさくやびめ)」と同じだが、その神名の一部である「さくや」が「さくら」の語源と考える説のようだ。

サクヤビメは桜とも結びつきが強い女神であるし、語感も似通っているので、仮説としては十分にアリなのではないだろうか。

どの説が有力?

「さくら」の語源・由来に関する上述の三つの説については、一番最初にご紹介した「サ神」説が最も有力な説として定着しているように思われる。

既に述べた通り、「サ神」説を裏付ける客観的な証拠が示されているわけではないので、異論も少なくないのだが、権威ある複数の民俗学者らにより広められた仮説であることから、これに抗っていくのはなかなか難しいのではないかと思われる。

ただ、研究テーマとしては大変興味深い分野であることは間違いないので、「さくら」の語源・由来の解明につながる新たな学説が今後も登場することを心待ちにしたい。

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