おつむてんてん 意味・語源・由来

赤ちゃんをあやす「おつむてんてん」は江戸時代から?

赤ちゃんをあやす「おつむてんてん」という伝統的な手遊びがある。『ちょち ちょち あわわ』という手遊び歌の中でも歌われ、赤ちゃんと楽しくコミュニケーションがとれる手軽な遊びとして定着している。

ベビープーの おつむてんてん(ディズニー幼児絵本)

この「おつむてんてん」について、頭を意味する幼児語「おつむ」と、擬音語の「てんてん」に分けたうえで、意味や語源・由来などを簡単にまとめてみたい。

写真:ベビープーの おつむてんてん(ディズニー幼児絵本)

おつむの語源

おつむの語源は、宮中の女官が用いた「おつむり」。接頭語の「お」と、頭を意味する「つむり」から成る。

「つむり」の語源は、丸くて小さいものを表す「つぶり」で、「つぶらな瞳」の「つぶら」や、かたつむりの「つむり」も同源だという。

竹取物語絵巻 中巻

画像:竹取物語絵巻 中巻(出典:立教大学デジタルライブラリ)

ちなみに、「おつむり」のような宮中の女官が用いた言葉は「女房言葉(女房詞)」と呼ばれ、「お」がつく例としては、現代でも「おかか」「おかず」「おでん」「おにぎり(おむすび)」などが使われている。

てんてんは天々?

精選版 日本国語大辞典によれば、「てんてん」の意味は「頭をいう幼児語。つむり。」と解説されており、漢字では「天々」と表記されている。

この解説によれば、「おつむてんてん」の「おつむ」も「てんてん」も、両方とも頭を意味する幼児語ということになる。

ここでの「天」は高い場所を意味しており、「脳天」の「天」と同様の意味合いで使われている。

「天」を繰り返すのは、「手」を繰り返して「おてて」という幼児語になるのに近い用法だろう。赤ん坊が這って歩く「ハイハイ」も同じ。

擬音語としての「てんてん」

「てんてん」という言葉は、「てんつくてんてん」などのように、お囃子(はやし)の太鼓を叩くときの擬音として使われる場合も少なくない。

また、手まり・ゴムボールを手でつく場合にも「てんてん」という表現が用いられる(参照:童謡『まりと殿様(てんてんてんまり てんてまり)』)。

幼児をあやす際の「おつむてんてん」では、頭を手でポンポンと軽く叩く動作を行うが、これはまさに太鼓(小鼓・大鼓)や手まりを「てんてん」と叩く・つく動作と類似している。

つまり、「おつむてんてん」の「てんてん」には、頭を意味する「天々」の他にも、鼓や手まりなどを軽く叩く・つく際の擬音語としての意味合いも暗に込められているのではないだろうか。

あたまてんてん

江戸時代頃の「おつむてんてん」には、「おつむ」ではなく「あたま」、つまり「あたまてんてん」と呼称されていた例も見られる。

とかく子供達は
いたいけがよいものぢゃ
〈略〉
冠(かむ)り冠り しほの目
頭(アタマ)てんてんよ

<引用:荻江節・面かぶり(1765頃)>

「面かぶり」とは、江戸時代から存在する歌舞伎・浄瑠璃・長唄の演目の一つ。「童子戯面被(どうじの たわむれ めんかぶり)」とも題される。

「冠(かむ)り冠り しほの目」の部分は、現代では『ちょち ちょち あわわ』という古い手遊び歌・あやし歌のルーツと考えられる。

この「あたまてんてん」という言い方が、江戸時代には一般的だったのか、それともこの歌舞伎・浄瑠璃の中だけの例外的な言い方だったのかは不明だ。

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