野ばら(シューベルト)
シューベルト(Franz Peter Schubert/1797–1828)
ドイツ歌曲「野ばら」の歌詞は、ドイツの詩人ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe/1749-1832)による1770年頃の作品。
日本では、近藤 朔風の訳詞による「童(わらべ)は見たり 野中のバラ」の歌い出しで広く知られている。
シューベルトやヴェルナー(ウェルナー)を始めとして150以上のメロディーが付けられたという。
【YouTube】野ばら(シューベルト)
歌詞の意味・日本語訳(意訳)
Sah ein Knab' ein Röslein stehn,
Röslein auf der Heiden,
war so jung und morgenschön,
lief er schnell, es nah zu sehn,
sah's mit vielen Freuden.
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.
少年が見つけた小さな野ばら
とても若々しく美しい
すぐに駆け寄り間近で見れば
喜びに満ち溢れる
バラよ 赤いバラよ 野中のバラ
Knabe sprach: "Ich breche dich,
Röslein auf der Heiden!"
Röslein sprach: "Ich steche dich,
dass du ewig denkst an mich,
und ich will's nicht leiden."
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.
少年は言った 「君を折るよ」
野ばらは言った 「ならば貴方を刺します
いつも私を思い出してくれるように
私は苦しんだりはしません」
バラよ 赤いバラよ 野中のバラ
Und der wilde Knabe brach
's Röslein auf der Heiden;
Röslein wehrte sich und stach,
half ihm doch kein Weh und Ach,
musst' es eben leiden.
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.
少年は野バラを折った
野バラは抵抗して彼を刺した
傷みや嘆きも彼には効かず
野バラはただ耐えるばかり
バラよ 赤いバラよ 野中のバラ
訳詞:近藤 朔風
童(わらべ)はみたり 野なかの薔薇(ばら)
清らに咲ける その色愛(め)でつ
飽かずながむ
紅(くれない)におう 野なかの薔薇
手折(たお)りて往(ゆ)かん 野なかの薔薇
手折らば手折れ 思出ぐさに
君を刺さん
紅におう 野なかの薔薇
童は折りぬ 野なかの薔薇
折られてあわれ 清らの色香(いろか)
永久(とわ)にあせぬ
紅におう 野なかの薔薇
牧師の娘と恋に落ちたゲーテ
この頃ゲーテは、父親の薦める大学に通うためにフランス国境付近のシュトラスブルクへ移り住んでいた。
ゲーテは、友人と共にシュトラスブルクから30キロほど離れたゼーゼンハイムという村を訪れた際、そこの牧師の娘フリーデリーケ・ブリオン(Friederike Elisabeth Brion/1752-1813) と恋に落ちた。
しかしゲーテは無情にも、ゲーテとの結婚を望む彼女との恋愛を断ち切ってしまった。理由は勉学に励むためでもあり、また結婚による束縛を嫌ったためでもあると言われている。
「野ばら」の歌詞には二人の別れの様子が暗に込められているといわれることがあるが、真相の程は定かではない。
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