交響曲第9番「新世界より」

ドヴォルザーク(Anton Dvorak/1841-1904)

交響曲第9番ホ短調「新世界より」は、ドヴォルザーク(ドボルザーク)による1893年作曲の交響曲。アメリカ滞在中(1892-1895)に作曲された、彼の9番目にして最後の交響曲。

第2楽章と第4楽章が特に有名で、第2楽章の旋律は、日本の楽曲『遠き山に日は落ちて』、アメリカ歌謡『Goin’ Home(家路)』などに転用されている。

オーケストラの演奏会で最も頻繁に演奏されるレパートリーのひとつでもあり、ベートーヴェンの交響曲第5番『運命』、シューベルトの交響曲第7(8)番『未完成』と並んで「3大交響曲」と呼ばれることもある。

ちなみに写真は、アメリカ・サウスダコタ州のラシュモア山国立記念公園にある四人の大統領の彫像。左から右へ、ジョージ・ワシントン, トーマス・ジェファーソン, セオドア・ルーズベルト, エイブラハム・リンカーン。

アメリカ到着の3ヵ月後に作曲開始

1892年9月にニューヨークへ到着したドヴォルザークは大歓迎を受け、10月にはニューヨーク・ナショナル音楽院の院長として講義を開始。翌年の1893年1月から交響曲第9番ホ短調「新世界より」の作曲に着手した。

同年5月末には完成しており、翌月の6月には、夏季休暇で訪れたボヘミア入植者の町で『弦楽四重奏曲第12番 アメリカ』が作曲されている。

【YouTube】ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」第4楽章

【YouTube】カラヤン指揮 ドヴォルザーク 交響曲第9番 第4楽章

アメリカ音楽からの影響について

アメリカの黒人音楽やインディアンの民族音楽からの引用を指摘されることがあるが、この点についてドヴォルザークは友人への手紙の中で、「私がインディアンやアメリカの主題を使ったというのはナンセンスです。嘘です。私はただ、これらの国民的なアメリカの旋律の精神をもって書こうとしたのです」と説明している。

また、アメリカの詩人ロングフェローの叙事詩で、インディアンの英雄を謳った英雄譚『ハイアワサの歌The Song of Hiawatha』からインスピレーションを受けているとされる。

熱狂的な鉄道マニアだったドヴォルザーク

余談だが、ドヴォルザークは熱狂的な鉄道マニアとしても知られている。「新世界」アメリカに滞在したのは、アメリカ大陸横断鉄道を堪能することが大きな目的だったのではと勘繰る説もあるぐらいだ。

実際、彼がニューヨークにいた頃は、毎日グランド・セントラル駅へ出掛け、シカゴ特急の車両番号を記録していたという。用事があって駅まで行けない日には弟子に見に行かせていたなんてエピソードも残されている。

ちなみに、『ユーモレスク (Humoresky) 』冒頭のメロディーは、汽車に揺られながら思いついたものだと言われている。

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』サントラ

2022年(令和4年)放送のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、ドヴォルザーク『交響曲第9番ホ短調「新世界より」』第4楽章がアレンジされてサウンドトラックに使用されている。

大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全版 第壱集 ブルーレイ

ジャケット写真:大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全版 第壱集 ブルーレイ

『鎌倉殿の13人』は、三谷幸喜の脚本により、平安末から鎌倉前期を舞台に北条義時を主人公として、歴史書『吾妻鏡』をベースとした源平合戦や、鎌倉幕府誕生の過程を描いた大河ドラマ。

平安から鎌倉への新時代の幕開けと、「新世界」というキーワードに親和性を見いだせるが、テレビCMにも使われるほど有名なクラシック音楽が突然流れ出すことに対しては、違和感を覚える方も少なくないだろう。

ちなみに、同ドラマでは、ドヴォルザーク『交響曲第9番』第二楽章のメロディも度々使われている。このメロディは、日本の楽曲『遠き山に日は落ちて』としても親しまれている。

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