シランクス Syrinx
クロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy/1862-1918)
『シランクス Syrinx』は、クロード・ドビュッシーによる1913年の無伴奏フルート作品。「シランクス」とは、ギリシャ神話のニンフ(女性の姿をした精霊)であるシュリンクス(下挿絵の中央寄りの女性)を意味する。
当初の曲名は『パンの笛』の予定だったが、ドビュッシーの連作歌曲『ビリティスの歌』にある同名の作品との混同を避けるため改名されたという。
【YouTube】EMMANUEL PAHUD | Claude Debussy, "Syrinx" for solo flute
【YouTube】 Mathilde CALDERINI - Syrinx Debussy
ギリシア神話のパーン(パン)
「パン」とは、ギリシア神話のパーン(パン)、またはローマ神話におけるファウヌスを意味する。上の挿絵では、シュリンクスを追いかけるヤギの角が生えた男性の姿で描かれている。
パーンは日本では「牧神」「半獣神」などと訳され、ドビュッシーは『シランクス』から20年前の作品『牧神の午後への前奏曲』でも同じ題材を用いている。
牧神パーンはシランクス(シュリンクス)に一目惚れしており、彼女を求めて強引に迫っていた。逃げ惑う彼女は川のほとりに追い詰められ、川の妖精の力で葦(あし)に姿を変えてしまった。
葦になってしまったシランクスを前に、パンは「少なくとも、あなたの声と共にいることができた。」と喜び、その葦を手折って葦笛(あしぶえ)を作って肌身離さず持ち歩くようになった。
その葦笛は後に「パンフルート」と呼ばれ、後世までその名を残している(との伝説だ)。パンについては『牧神の午後への前奏曲』の解説も適宜参照されたい。
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