アントニオ猪木 ボンバイエ 意味は?歌詞もある?

歌詞もつけられたアントニオ猪木の入場曲『炎のファイター』

「イノキ!ボンバイエ!」の掛け声が印象的なアントニオ猪木の入場曲『炎のファイター INOKI BOM-BA-YE』。1977年(昭和52年)にレコード発売された。

「ボンバイエ」とは、コンゴのリンガラ語で「奴をやっちまえ!」を意味する「Boma ye(ボマ・イェ)」が訛ったもの。

アントニオ猪木 ボンバイエ 炎のファイター INOKI BOM-BA-YE

元々この曲は、伝説のプロボクサー、モハメド・アリの伝記映画「アリ・ザ・グレイテスト」のサントラ『アリ・ボンバイエ』(ALI BOMBAYE)だった(1977年公開)。

「ボンバイエ」という掛け声は、アリがコンゴの首都キンシャサでジョージ・フォアマンと戦った際の、観客からの声援に由来している。

アントニオ猪木とモハメド・アリは、1976年に日本武道館で開催された「格闘技世界一決定戦」で対戦。

後に猪木の健闘を称えたアリから『アリ・ボンバイエ』が贈られ、猪木のテーマ曲にアレンジされて現在に至る。

ちなみに高校野球では、吹奏楽・ブラスバンド向けにアレンジされた『燃える闘魂』として応援曲となっている。

【YouTube】 炎のファイター INOKI BOM-BA-YE

【YouTube】 アリ・ボンバイエ ALI BOMBAYE

日本語の歌詞があった?!

1977年(昭和52年)にレコード発売された「炎のファイター アントニオ猪木のテーマ」B面には、なかにし礼が作詞した『いつも一緒に』がカップリングされている。

歌は、アントニオ猪木の元妻・倍賞 美津子(ばいしょう みつこ/1946-)。1988年に離婚している。倍賞千恵子の実の妹。

一体どのような歌詞がつけられたのだろうか?次のとおり引用して確認してみよう。

いつも一緒なの 愛があるから
男は戦いに 今日もまた出かける
女は ただ待つだけ
何ひとつ 手につかず
おろおろしている
長すぎる一日

いつも一緒なの 愛があるから

いつも一緒なの 愛があるから
男は戦いの 旅から帰った
女は ただ甘える
もうどこにも行かないで
明日よ来ないで
幸せが眩しい

いつも一緒なの 愛があるから

<引用:なかにし礼『いつも一緒に』歌詞より>

『炎のファイター』に歌詞をつけることを倍賞 美津子氏が提案したそうだが、歌詞の内容的にも、まるでアントニオ猪木の帰りを待つ倍賞 美津子氏の立場から作詞されたようなストーリーとなっているのが興味深い。

似てる曲について

アントニオ猪木の入場曲『炎のファイター』については、複数の楽曲とメロディやコード進行が似ているとの指摘をネット上で見かける。

それによれば、『炎のファイター』より先に作曲された楽曲もあるし、後の楽曲もあるようだが、ここでは先に作曲された楽曲、つまり『炎のファイター』のメロディに影響を与えた可能性がある楽曲について取り上げてみたい。

『炎のファイター』のメロディのルーツとしてネット上で紹介されていたのは、1954年に発表された楽曲『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(Fly Me to the Moon)』。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」エンディングでも使用されたあの曲だ。

【YouTube】Fly Me To The Moon (Remastered) · Frank Sinatra

この曲における歌い出しのメロディが、『炎のファイター』のそれとコード進行が似ているという。もちろん厳密には、原曲の『アリ・ボンバイエ』のメロディと似ているということになる。

果たして、1977年にリリースされたアントニオ猪木『炎のファイター』(および『アリ・ボンバイエ』)は、1954年の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』から直接影響を受けた楽曲なのだろうか?

筆者の私見では、これら2曲は「直接」の関係にはなく、『炎のファイター』のメロディは、他の楽曲から着想を得て作曲された作品と推測される。

では、その元ネタとなった「他の楽曲」とは、一体どのような曲なのだろうか?

元ネタは巨匠モリコーネの楽曲?

思うに、『炎のファイター』は、1972年のイタリア映画「I figli chiedono perché」(イ・フィーリ・キエドノ・ペルケ/意味:子供たちは理由を尋ねる)のメインテーマ曲から影響を受けたのではないかと推測される。

I figli chiedono perché

作曲は、映画音楽の巨匠として世界的に有名なイタリアの作曲家エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone/1928-2020)。映画『アンタッチャブル』、『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』などのサントラは日本でも特に有名。

はたして、エンニオ・モリコーネ作曲による「I figli chiedono perché」テーマ曲は、アントニオ猪木『炎のファイター』とどの程度似ているのだろうか?実際の楽曲をYouTubeで確認してみよう。

【YouTube】I figli chiedono perché Tema

1977年『炎のファイター』の5年前に公開されたこの曲は、1954年の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』よりも、さらに『炎のファイター』のメロディに近いように感じられる。

このイタリア映画「I figli chiedono perché」は、当時のパレスチナが舞台。ユダヤ女性とアラブ男性の家族に降りかかる悲しい運命が描かれ、そのテーマ曲では、主人公の女性の悲しみ・嘆きが表現されているようだ。

歌っているのは、イタリアの女性歌手エッダ・​デッロルソ(Edda Dell'Orso/1935-)。モリコーネ作品に数多くのボーカルを提供した。

なお、『炎のファイター』の原曲『アリ・ボンバイエ』の作曲者は、ユダヤ系のマイケル・マッサー(Michael William Masser/1941-2015)。ユダヤ女性が主人公のイタリア映画から何らかの影響を受けていた可能性は大いに考えられるだろう。

サンタナもカバー?

余談だが、世界的に有名なギタリスト、カルロス・サンタナ(Carlos Santana)が1999年にリリースした『エル・ファロル(El Farol)』も、アントニオ猪木『炎のファイター』系のメロディが用いられている。

【YouTube】Santana - El Farol

曲名の「ファロル」とは、燃料を燃やす照明器具「ランタン」のこと。燃えるという要素が、燃える闘魂アントニオ猪木のテーマ曲『炎のファイター』と意味的にもつながっているのが興味深い。

ちなみに、下ジャケット写真は、2000年のグラミー賞9部門を独占したサンタナの伝説的アルバム、スーパーナチュラル(Supernatural)。

同アルバムで、『エル・ファロル(El Farol)』は、グラミー賞ベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞(Best Pop Instrumental Performance)を受賞した。

ジャケット写真:サンタナ「スーパーナチュラル(Supernatural)」

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