アニーローリー Annie Laurie 歌詞と和訳・訳詞

実在した美しい女性アニーローリー 引き裂かれた二人の悲恋

『Annie Laurie』(アニー・ローリー)は、19世紀に作曲されたスコットランドの楽曲。今日においては、スコットランド民謡として親しまれている。

「アニーローリー」とは、歌詞に登場する女性の名前で、マクスウェルトン家の長女。1682年生まれの実在の人物で、数多くの男性から求婚を受けるほどの美人だったという。

アニーローリーは詩人ウィリアム・ダグラスと恋に落ちるが、彼女の父親によって二人は引き裂かれてしまう。歌詞では、ダグラスの視点から彼女への想いが描写されている。

復元されたマクスウェルトン・ハウス(Maxwellton House)

作曲は、スコットランドの女流音楽家ジョン・ダグラス・スコット夫人(Lady John Douglas Alicia Scott/1810-1900)。

歌詞は、ウィリアム・ダグラス(William Douglas/1672 - 1748)の詩が元になっている。

このページでは、原曲『Annie Laurie』の英語の歌詞を和訳した上で、歌詞の元になった恋物語と、有名な日本語歌詞(訳詞)についていくつかご紹介してみたい。

【YouTube】アニーローリー Annie Laurie

原曲の歌詞 意味・和訳(意訳)

1.
Max Welton's braes are bonnie
Where early fa's the dew
And 'twas there that Annie Laurie
Gave me her promise true.

マクスウェルトンの丘は
美しく 朝露にぬれる
あの丘でアニー・ローリーは
私に真実の愛をくれた

Gave me her promise true
That ne'er forgot shall be
And for Bonnie Annie Laurie
I'd lay me doon and dee.

この愛を忘れる事はできない
愛しいアニー・ローリーのためなら
私の命を捧げる
死ぬ事すらいとわない

2.
Her brow is like the snowdrift
Her nape is like the swan
And her face it is the fairest
That e'er the sun shone on.

彼女の顔は雪のようで
彼女の首は白鳥のようだ
彼女はもっとも美しく
陽の光に満ちている

That 'ere the sun shone on
And dark blue is her E'e
And for Bonnie Annie Laurie
I'd lay me doon and dee.

彼女の瞳は深い青色
愛しいアニー・ローリーのためなら
私の命を捧げる
死ぬ事すらいとわない

3.
Like the dew on the gowan lying
Is the fall of her fairy feet
And like winds in the summer sighing
Her voice is low and sweet.

ヒナギクの上の露のような
夏にそよぐ風のような
美しい彼女の御声(みこえ)

Her voice is low and sweet
And she's all the world to me
And for Bonnie Annie Laurie
I'd lay me doon and dee.

彼女が僕のすべてだ
愛しいアニー・ローリーのためなら
私は命を捧げる
死ぬ事すらいとわない

なぜ二人は別れたの?

アニーローリーと詩人ウィリアム・ダグラスの恋は、なぜ彼女の父親によって引き裂かれてしまったのだろうか?

当時のスコットランドは、断続的に内戦が続く混乱の時期。それぞれが属する氏族単位でまとまって、国を分ける大きな戦争を繰り広げていた。

運が悪い事に、ローリーとダグラスの二人の父親は互いに対立する氏族に属していたため、二人の結婚が許されることは到底適わぬことだった。

結局アニーは、父親の政略的な思惑も絡んで、1710年にクレイグダロック(クレイグダロッホ)の領主アレクサンダー・ファーガソン(Alexander Fergusson)と結婚。

残されたダグラスは、愛するローリーのことが忘れられず、彼女への熱い思いを一遍の詩に託したのだった。

こうしてダグラスの思いは、スコットランド民謡『Annie Laurie』の歌詞となり、今日まで世界中の人々によって歌い継がれている。

訳詞 その1

『Annie Laurie』の日本語歌詞(訳詞)は数多く存在する。有名な訳詞をいくつかご紹介していきたい。

まずは、『遠き山に日は落ちて』の作詞で知られる堀内敬三による訳詞『アニー・ローリー』を次のとおり引用し、原曲の英語の歌詞と内容を簡単に比較してみたい。

1.
あした露(つゆ)おく
野の静寂(しじま)に
いとし アニーローリー
君と語りぬ

とこしえまで 心かえじ
誓(ちか)いし アニーローリー
わがいのちよ

2.
愛にかがやく 君がまなざし
まことこめたる 君がささやき

とこしえまで とこしえまで
忘れじ アニーローリー
わがいのちよ

この訳詞では、原曲『Annie Laurie』のエッセンスが短い日本語表現で巧みにまとめられている。

2番のサビでは、「とこしえまで」を連呼することで、原曲よりも永遠の愛が強調されているように感じられる。

ちなみに、由紀さおり・安田祥子らがこの訳詞で日本語カバーしている。

訳詞 その2

次に、『東京キッド』を手がけた藤浦 洸(ふじうら こう/1898-1979)の訳詞を次のとおり引用し、その内容を簡単に確認してみたい。

鮫島有美子や倍賞千恵子らがこの歌詞で日本語カバーしている。

1.
なつかし川辺に 露はあれど
いとしのアニーローリー
いまやいずこ

君に逢いし 時はゆけど
いとしのアニーローリー
ゆめ忘れじ

2.
雪のひたいよ やさしうなじ
輝く瞳は 清く澄みし

比ぶもなき うるわしさよ
いとしのアニーローリー
ゆめ忘れじ

この訳詞でも、原曲の内容をある程度踏まえた歌詞となっているが、原曲にあるような「君のためなら命も惜しくない」的な熱量はあまり感じられない。

ちなみに、「ゆめ忘れじ」の「ゆめ」は「夢」ではなく、「決して(~しない)」を意味する古語(副詞)。「じ」は、打消「ず」の終止形。

つまり「ゆめ忘れじ」は「決して忘れない」の意味になる。

訳詞『アンニー・ローリー』

続いて、作詞家・緒園 凉子(おぞの りょうし/1905-1947)による訳詞『アンニー・ローリー』の歌詞を次のとおり引用し、その内容を簡単に確認してみたい。

1.
青き岸辺は 露にぬれぬ
やさしき友よ 誓いたまえ
冬去りなば また帰ると
美わし アンニー・ローリー
誓いたまえ

2.
雪のかんばせ 清きうなじ
たえなる姿 光に満つ
空の星か 真澄の御眼(みめ)
美わし アンニー・ローリー
夢に浮かぶ

3.
萩の下葉の 露をこぼす
野のそよ風か 君が御声(みこえ)
君が御声 心揺する
美わしアンニー・ローリー
ああ わが友達(ともどち)

この訳詞では、アニーローリーの美しさや優しさに関する表現があるが、彼女に対する強い愛情の描写は抑えられており、原曲とは若干の温度差が感じられる。学生向けに作詞されたのかもしれない。

才女

最後に、『Annie Laurie』のメロディに独自の日本語歌詞をつけた唱歌として、明治時代の小学唱歌『才女』の歌詞を次のとおり引用する。

紫式部と清少納言を歌った歌詞で、作詞は明治時代の教育者・里見義(さとみ ただし/1824-1886)。

1.
かきながせる 筆のあやに
そめしむらさき 世々(よよ)あせず
ゆかりのいろ ことばのはな
たぐいもあらじ そのいさお

2.
まきあげたる 小簾(おす)のひまに
君のこころも しら雪や
蘆山(ろさん)の峯(みね)
遺愛(いあい)のかね
めにみるごとき その風情(ふぜい)

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