じんじろげ 歌詞の意味・由来

歌詞には大正時代に流行していたという俗謡・わらべうたも

60年代の歌謡曲『じんじろげ』の歌詞の意味を考えるにあたって、まず明確に区別しておきたい点がある。

下の図は、作詞:渡舟人、作曲:中村八大、歌:森山 加代子による歌謡曲『じんじろげ』の一番の歌詞を引用したもの。

この曲の歌詞は、由来が異なる3つの部分が一つにまとめられて構成されているのだ。

赤の歌詞は、作詞家の渡舟人(わたるふなんど)により歌謡曲として追加された部分。

青の歌詞は、大正時代に流行していたという俗謡・わらべうたの部分。

緑の歌詞は、インド民謡をルーツとする空耳ソング部分。

このページでは、赤と青の歌詞について、特に青の俗謡・わらべうたについて注目して解説していく。

インド民謡と『じんじろげ』の関係については、こちらのページ「インド民謡「雨期礼賛の歌」 じんじろげ ヒラミルパニア」で解説している。

冒頭の歌詞について

まず、『じんじろげ』冒頭の歌詞について簡単に。上の図でいうと赤い枠で囲った部分。渡舟人(わたるふなんど)により作詞された歌詞だ。

「ちんちくりん」とは、背が低いこと。または、背丈に比べて衣服が短すぎること。

「つんつるてん」とは、衣服の丈が短くて、手足が出ている様子を表す。つるっぱげの意味でも使われる。

「おさんどん」とは、台所などで働く下女・女中のこと。

これらの言葉は、語感の面白さ重視で、ほとんど意味のない言葉として使われているように見える。どれも「ん」が2回使われ、最後が「ん」で終わる言葉であり、連続して並べることで独特のテンポが生まれている。

大正時代の歌詞(青い部分)

青枠で囲んだ部分の歌詞については、遅くとも大正時代には俗謡などでその存在か確認されている。

その代表例としては、京都・岡山にあった旧制第三高等学校、いわゆる「三高」において、大正時代に出版された三高漫画歌集に掲載された『ヂンヂロゲ踊の歌』が有名。

大正時代にはすでに、この青枠で囲まれた部分の『じんじろげ』の歌詞と、緑枠で囲まれたインド民謡由来の歌詞「ヒラミルパミア」が、二つ合わせて一つの歌として結合していたようだ。

じんじろ=つむじの毛

「じんじろげ」という言葉の意味については定かではないが、毛髪の名称である可能性は高い。

岸和田だんじり祭で有名な大阪府の泉州(せんしゅう)地域では、頭のてっぺんにある渦巻き状の髪の毛「つむじ」のことを「じんじろ」または「じんじり」ということがある。

ちなみに、大阪・京都を中心とする畿内の上方(かみがた)で演じられる上方落語では、寄席囃子(よせばやし)・出囃子(でばやし)の一つに『じんじろ』という有名な曲がある。

日露戦争と『一列談判』

歌詞の一部にある「ホーレツラッパノツーレツ」とは、筆者の私見では、日露戦争に関連する手まり歌・わらべうた『一列談判』(いちれつだんぱん)がルーツではないかと考えている。

一列談判破裂して 日露戦争始まった
さっさと逃げるは ロシヤの兵
死んでも尽くすは 日本の兵

<わらべうた『一列談判』冒頭の歌詞より>

まりをついた数を数える「手まり歌」なので、「一、二、三、四(いち、に、さん、し)」と数字の掛詞(かけことば)になっているのが分かる。

なお、『一列談判』(いちれつだんぱん)は、子供でも発音しやすいように「いちれつらんぱん」と読まれることもある。

この「いちれつらんぱん」が「ホーレツラッパ」の由来である可能性が考えられる。

ドンガラガッタは軍楽隊?

また、歌詞の一部である「ドレドンガラガッタ」についても、日露戦争の軍楽隊が行軍する際のドラムの音を「ドンガラガッタ」と表現している可能性がある。

リズム的には、トルコ軍楽隊のメフテルが演奏する名曲『ジェッディン・デデン』の一部と合致する。

マージョリンはマーガリン?

「マージョリン マージンガラ」という歌詞については、バターに似た加工食品の「マーガリン」がルーツではないかと考えられる。

マーガリンは、日本へ1887年に初めて輸入され、1908年(明治41年)に横浜の帝国社(現在:あすか製薬)によって国産化に成功している。

マーガリンを英語で発音し、その発音をあえてカタカナ表記すると「マージョリン」に近い表記となる。まだ当時目新しかったマーガリンが歌に組み込まれたのではないだろうか?

なお、歌詞の「マージンガラ」の部分については、手まり歌・わらべうた『いちりっとらい(いちりっとらん)』の「しんがら ほけきょ」との関連性も伺われる。

謎のヒッカリコマタキ

「ヒッカリ コマタキ ワーイワイ」については謎が多い。「しっかり釜を焚け」が訛化(がか)したものとも考えられるが、いまいち決め手に欠ける。

俗謡やわらべうたの歌詞は、歌われる地域や時代によって歌詞が少しずつ変化して伝えられることが多く、この「ヒッカリ コマタキ」も元は何らかの意味を持った言葉であった可能性はあるが、果たしてそれが何だったのかは定かではない。

兵庫県のお手玉歌

一般社団法人 兵庫県こども会連合会Webサイト上で公開されているPDF資料「兵庫県のわらべ歌」によれば、『じんじろげ』の歌詞の一部と関連する「お手玉の歌」が現代まで伝えられているようだ。その歌詞は次のとおり。

お手玉の歌

じんじろげ じんじろげ ど~れ
どんがらがっちゃ ほうりつらっぱの
つうやつう まんがりんよいよい
いなりにおしずし じんじろげ
じんじろげ ほーれ どんがらがっちゃ
ほーい ほーい

この歌詞では、上述の「マージョリン」の部分が「まんがりん」となっており、よりマーガリンとの関連性が伺われるのが興味深い。

宮城県のわらべうた

当サイトのお問い合わせフォームから情報提供して頂いた、宮城県のわらべうたをご紹介(情報提供感謝いたします)。歌詞は次のとおり。

じんじろげーや じんじろげ
どーでどんがらばったの
ほーれづらっぱのつーれづれ
まーじょれん まーじょれんが
じょーいじょい
すっかれかまどで わーいわい

かんぐるなっつー かんぐるなっつー
ぷろたーの かーわーな
ぱーみんな ぱーみんな
わがぜっとの ねーぶるか

みーよーみーよーかんね
かねなちゅーな
ちょいなーのちゅーや

「ヒッカリ コマタキ」の部分が「すっかれかまどで」というある程度意味の通るフレーズになっているのが興味深い。

最後の「ちょいなーのちゅーや」の部分は、インド民謡由来の歌詞「ヒラミルパミア」における「ジョリ ナナ ディーヤ」が訛ったものと考えられる。

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