琵琶湖周航の歌

琵琶湖を時計回りにボートで周航 今日は今津か長浜か

「われは湖の子(うみのこ)さすらいの」が歌い出しの『琵琶湖周航の歌』は、大正時代から学生歌・寮歌として歌い継がれてきた風景歌

原曲『ひつじぐさ』のメロディを用いて、京都大学(当時は第三高等学校)の学生だった小口太郎により作詞された。

加藤登紀子のカバーになどより全国的に広まったのちも、京都大学ボート部の部員等によって歌の伝統は守られている。

ちなみに、上の写真は4番の歌詞に登場する竹生島(ちくぶしま)。琵琶湖の北部に位置し、国の名勝・史跡に指定されている。

【YouTube】シモンズ - 琵琶湖周航の歌

【YouTube】倍賞千恵子 BAISHO CHIEKO - 琵琶湖周航の歌

歌詞:『琵琶湖周航の歌』

1.
われは湖(うみ)の子 さすらいの
旅にしあれば しみじみと
昇る狭霧(さぎり)や さざなみの
志賀の都よ いざさらば

2.
松は緑に 砂白き
雄松が里の 乙女子は
赤い椿の 森陰に
はかない恋に 泣くとかや

3.
波のまにまに 漂えば
赤い泊火(とまりび) 懐かしみ
行方定めぬ 波枕
今日は今津か 長浜か

4.
瑠璃の花園 珊瑚の宮
古い伝えの 竹生島
仏の御手に 抱かれて
眠れ乙女子 やすらけく

5.
矢の根は深く 埋(うず)もれて
夏草しげき 堀のあと
古城にひとり 佇めば
比良も伊吹も 夢のごと

6.
西国十番 長命寺
汚れの現世(うつしよ) 遠く去りて
黄金(こがね)の波に いざ漕がん
語れ我が友 熱き心

南西から時計回りにぐるっと周航

『琵琶湖周航の歌』の歌詞では、タイトル通り琵琶湖や滋賀県の自然風景・建築物などが1番から6番の歌詞の中で随所に描写されている。

歌詞に登場する地名や建物は、琵琶湖南西の近江大津宮跡付近(三保ケ崎)から、時計回りにぐるっと「周航」する形で順番に登場する。

下の図は、作詞者の小口太郎が大正6年6月に実際にボートでたどった周航コース。琵琶湖周航は当時の京都大学の学生たちによる恒例行事となっていたという(参照:滋賀県高島市公式サイト)。

スタート地点は近江大津宮

1番の歌詞にある琵琶湖周遊のスタート地点「さざなみの志賀の都」とは、7世紀後半に天智天皇が営んだ近江宮(おうみのみや)(近江大津宮)を指している。万葉集には、柿本人麻呂が滅んでしまった近江宮を詠んだ次のような歌が残されている。

「ささなみの 志賀の大曲 淀むとも 昔の人に またも逢はめやも」(万葉集)

注:志賀の大曲(しがのおおわだ)とは、琵琶湖南西岸、現在の唐崎付近にあった港の名前。

2番から4番で琵琶湖西岸を北上

2番から3番は、琵琶湖西岸を北上する形で、雄松崎(近江舞子の浜)、今津、長浜と続き、4番で琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)が登場する(下の写真は長浜港)。

『琵琶湖周航の歌』5番の歌詞では、琵琶湖を囲む東西の山々、すなわち琵琶湖西岸に連なる比良山地(ひらさんち)、東岸の伊吹山(いぶきやま、いぶきさん)の名前が見られる。

西岸の比良山地

琵琶湖西岸の比良山地(上写真)は、古くから近江八景の一つ「比良の暮雪」で知られる景勝地。登山客のほか、びわ湖バレイスキー場には毎年多くのスキー客が訪れる。

東岸の伊吹山

伊吹山(上写真)の標高は1,377メートル。滋賀県最高峰の山であり、日本百名山の一つとして名高い。野草の群生地としても知られ、山頂の草原植物群落は植物天然記念物に指定されている。

重要文化財の長命寺

そして最後の6番の冒頭で歌われる「西国十番 長命寺(ちょうめいじ)」は、聖徳太子の開基と伝えられる近江八幡市の寺院(天台宗系)。

上の写真は、国の重要文化財に指定されている長命寺 本堂。日本で最も歴史がある巡礼行「西国三十三所」における第三十一番の札所としても知られ、多くの巡礼者・参拝者が訪れている。

日本の民謡・童謡・唱歌 歌詞と視聴