昴 すばる 谷村新司 歌詞の意味・解釈

我は行く 蒼白き頬のままで 我は行く さらば昴よ

『昴 すばる』は、1980年4月にリリースされた谷村新司のシングル曲。ソロ活動では最大のヒット曲であり、NHK紅白歌合戦に同曲で5回出場している。

谷村新司は明治の詩人・石川啄木の愛好者として知られ、『昴 すばる』の歌詞も啄木の作品から大きな影響を受けている(詳細は後述する)。

昴 すばる プレアデス星団

歌詞の意味については、聞き手それぞれが自由に解釈すればよいが、谷村新司本人が自著の中で一つの解釈を示しているので、参考までにご紹介しておきたい。

ちなみに昴(すばる)とは、おうし座の散開星団「プレアデス星団」のこと。青白い星の集団で、肉眼でも7個前後の星を視認できる。

「すばる」の語源は「統べる/統ばる/統まる」であり、多くの物が一つにまとまった状態を表している。

写真:昴(すばる)/プレアデス星団(出典:Wikipedia)

【試聴】 昴 すばる 谷村新司

石川啄木とスバル

まず最初に、谷村新司『昴(すばる)』と明治の詩人・石川啄木との関係について簡単にまとめてみたい。

谷村新司は、石川啄木の作品を愛読していたようで、彼の作品は啄木の影響を強く受けている。

大学時代に石川啄木を読みました。読んだと言うより食べました。そしてその時食べた糧が、曲や詩となって出てくるのです。それが私の心の中の啄木です。

<引用:「啄木に誘(いざな)われて」遊座昭吾/岩手県立盛岡第二高等学校生徒会誌『白梅』平成13年発行より>

石川啄木といえば、1909年(明治42年)創刊の文芸雑誌「スバル」における発行名義人であり、同誌の同人らはスバル派と呼ばれていた。

歌詞の比較

石川啄木が1912年に発表した歌集「悲しき玩具」の冒頭を見ると、谷村新司『昴(すばる)』がいかに影響を受けているかが良く分かる。

呼吸(いき)すれば、
胸の中(うち)にて鳴る音あり。
凩(こがらし)よりもさびしきその音!

眼閉づれど、
心にうかぶ何もなし。
さびしくも、また、眼をあけるかな。

<引用:石川啄木 歌集「悲しき玩具」冒頭より>

これと対応する谷村新司『昴(すばる)』の歌詞は次のとおり。

目を閉じて 何も見えず
哀しくて目を開ければ

<引用:谷村新司『昴』一番の歌詞 冒頭より>

呼吸をすれば 胸の中 
凩は吠(な)き続ける

<引用:谷村新司『昴』二番の歌詞 冒頭より>

ご覧のとおり、谷村新司『昴』は石川啄木の作品から強い影響を受けていることが良く分かるだろう。

宮沢賢治「昴」

谷村新司『昴』に影響を与えた可能性がある文学作品として、宮沢賢治の詩「昴」にも軽く触れておきたい。

沈んだ月夜の楊 (やなぎ) の木の梢 (こずえ) に
二つの星が逆さまにかかる
(昴〈すばる〉がそらでさう云つてゐる)

<引用:宮沢賢治「昴」/春と修羅 第一集より>

宮沢賢治「昴」では、天体の昴〈すばる〉を擬人化し、星が空からまるで宮沢賢治に語り掛けているような表現がなされている。

この「昴〈すばる〉の擬人化」という作品が、後の谷村新司に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。

谷村新司本人による解説

『昴(すばる)』作詞・作曲者である谷村新司本人は、その歌詞の意味や由来について、2014年出版の自著「谷村新司の不思議すぎる話」の中で、『昴(すばる)』誕生秘話として次のようなエピソードを掲載している。

引っ越し会社のスタッフたちと必死に荷造りをしていて、うちの中は荷物を詰めた段ボールでいっぱいという慌ただしい状況下で、突然メロディと歌詞が同時に降りてきたのです!

<中略>

『昴』の歌詞はまず初めに頭にポンと降りてきたのは、いちばん最後のフレーズである「さらば昴よ」でした。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

確かに、入浴中やシャワー中、歯を磨いているとき、夜の就寝前に布団の中でまどろんでいるときなど、リラックスしているときに突然アイディアが浮かぶことはよくある話だ。それ自体について特段変わった点はない。

しかし、谷村新司が『昴(すばる)』の歌詞について体験したひらめきは、単に「アイディアが浮かんだ」というレベルをはるかに逸脱していた。

なんとそれは、天体の「昴(すばる)」、すなわちプレアデス星団から谷村新司に向けて送られた宇宙からのメッセージだったというのだ。

谷村新司が受信した宇宙からのメッセージ

谷村新司は『昴(すばる)』の歌詞に関するプレアデス星団との交信について、著書の中で次のように述懐している。

突然頭の中で声が聞こえてきました。日本語で「これからダイレクトですよ」と言われたのです。

プレアデス星団からの問いかけは、性別や国籍を超えたフラットなトーン。私の頭の中で鳴り響くだけで、もし隣に坐っていたとしても、私以外の人には聞き取れません。問いかけに対する私の返答も、言葉を声に出すことなく、頭の中で行っています。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

プレアデス星団からの問いかけは、なんと日本語で、谷村新司の頭の中に直接語り掛けるダイレクトメッセージだったようだ。

谷村新司の回想はさらに次のように続く。文中の「彼ら」とは「プレアデス星団」を意味している。

私がまず彼らに尋ねたのは「なぜ自分に声をかけてくれたのか」ということ。それに対して彼らは「私たちのヒントも頼りにしながら、半ば自力でかなり正しい場所までたどり着いたから、あとは直接導きたいと思ったのだ」と答えてくれました。寝食を忘れた私の猛勉強を秘かに見ていてくれたのです。

それから彼らは私の問いに何でも答えてくれるようになりました。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

谷村新司を高く評価していたプレアデス星団は、その問いに何でも答えてくれたという。まるでiPhoneのAIアシスタント「Siri(シリ)」や、アマゾンのAlexa(アレクサ)のように。

あの曲は、あなたが書いた曲でしょ

谷村新司は、プレアデス星団が導いたという『昴(すばる)』の歌詞の意味についても問いを投げかけてみた。本人にとってもその意味は長年の謎だったのだ。

しかし、何でも答えてくれるはずだったプレアデス星団は、なぜか『昴(すばる)』の歌詞の意味についてだけは答えてくれなかったという。

その問いに彼らは「あの曲は、あなたが書いた曲でしょ」としか答えてくれません。

どうやら彼らは「あの曲を書いたあなたには、世界の悩める人びとに新しい考え方や視点を持つための気づきを与えるきっかけ作りをする使命がありますよ」と励ましてくれているらしいのです。

それから『昴』を巡る私の旅が始まりました。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

『昴(すばる)』の歌詞の意味について、プレアデス星団から答えをもらえなかった谷村新司。それでも彼は、やがて自分なりの意味や解釈を導き出していくことになる。

「さらば昴よ」の意味とは?

谷村新司は、天体のすばる(プレアデス星団)が古代中国の「二十八宿」で「財の星」と呼ばれていることに言及しながら、「さらば昴よ」の意味について次のように述べている。

もしも昴が「財の星」だとしたら、現代風に言うならそれはまさしく物質文明のシンボル。その「昴」に「さらば」と告げるのは、物質文明にサヨナラを告げようという意味に他ならないのです。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

「物質文明」とは「物質的な豊かさ」であり、そんな世界に別れを告げ、精神的な豊かさを追い求める新しい時代を迎えようと悟りを開くに至ったようだ。

物質的な豊かさを追求しようとするとキリがありません。

際限のない追求に明け暮れているうちに、やがて物欲に支配されるようになり、目に見えるお金やモノのみに執着するようになります。

そんな時代にきっぱりとサヨナラを告げよう。今後は目に見えないモノを見て、お金やモノといった物質に囚われることなく、精神的な豊かさを追い求める新しい時代を作っていこう!

それことが「さらば昴よ」というフレーズに込められた本当の意味ではないのか。私はそう気づかされたのです。

<引用:谷村新司「谷村新司の不思議すぎる話」より>

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