長崎は今日も雨だった 歌詞の意味

長崎市は雨が良く降る?ソロ歌手になった前川清の代表曲

『長崎は今日も雨だった』は、内山田洋とクール・ファイブにより1969年に発売された歌謡曲。ソロ歌手になった前川清の代表曲としても知られ、美空ひばり、八代亜紀らもカバーしている。

彼らは長崎市内のグランドキャバレー「銀馬車」の専属バンドで、作詞は「銀馬車」の音楽監督だった吉田孝穂が担当したが、当初の歌詞では「雨」が一言も使われておらず、後に作曲者の彩木雅夫が現在の歌詞に整えたという。

内山田洋とクールファイブ 長崎は今日も雨だった レレコード

この曲以前にも、「長崎」と「雨」を歌詞に取り入れた歌謡曲は数多く作曲されており、古くは『長崎物語』(昭和14年)、『雨のオランダ坂』(昭和22年)などが知られている。

『長崎は今日も雨だった』がリリースされる前年の1968年には、「銀馬車」の競合店だったキャバレー「十二番館」専属バンドのトランペッター川原弘による『思案橋ブルース』がヒット。その歌詞でも繰り返し「長崎」と「雨」が歌詞に用いられている。

なお、「長崎」と「雨」の組み合わせが多いのは、長崎市に雨が良く降るからではなく、長崎を舞台としたオペラ『蝶々夫人』に象徴されるような、女性の悲しみ・恋人との別れ・女の涙といった描写に、涙や悲しみのメタファー(暗喩)として「雨」がよくマッチするからであろう。

実際、『長崎は今日も雨だった』の歌詞では、「頬にこぼれる なみだの雨に」のように、雨と涙の関係がはっきりと明示されている。

気象庁の統計データを見ても、長崎市の降水量は全国平均より飛び抜けて多いというわけではないことが分かる。それどころか、『長崎は今日も雨だった』がリリースされた1960年代の長崎市は晴天が続いて渇水状態だったようだ。

【YouTube】 長崎は今日も雨だった

歌詞の内容について

『長崎は今日も雨だった』の歌詞では、どのような内容が描写されているのだろうか?歌詞を引用して簡単に確認してみたい。

あなたひとりに かけた恋
愛の言葉を 信じたの
さがし さがし求めて
ひとり ひとりさまよえば
行けど切ない 石だたみ
ああ長崎は 今日も雨だった

夜の丸山 たずねても
冷たい風が 身にしみる
愛(いと)し 愛しのひとは
どこに どこにいるのか
教えて欲しい 街の灯よ
ああ長崎は 今日も雨だった

頬にこぼれる なみだの雨に
命も恋も 捨てたのに
こころ こころ乱れて
飲んで 飲んで酔いしれる
酒に恨みは ないものを
ああ長崎は 今日も雨だった

<引用:吉田孝穂(永田貴子)『長崎は今日も雨だった』歌詞より>

歌詞は、失恋を題材とした長崎のご当地ソングとなっているが、長崎の地名や名所・街並みなどの情報は控えめで、「石だたみ(石畳)」、「丸山」といった表現にわずかに見られるのみ。

大浦天主堂と石畳

長崎市には、日本に現存するキリスト教建築物としては最古となるカトリックの教会堂「大浦天主堂(おおうら てんしゅどう)」があり、その周辺は石畳で整備されている。

大浦天主堂と石畳

写真:国宝・大浦天主堂と石畳(出典:Wikipedia)

江戸幕府による開国後、長崎の外国人居留者らが教会への道を石畳で舗装するよう要求したことから、長崎は古くから教会周辺を中心に多くの場所で石畳が整備されている。

長崎の花街・丸山

『長崎は今日も雨だった』二番の歌詞にある丸山(まるやま)は、江戸時代から昭和初期にかけて栄えた長崎の花街。

江戸時代に吉原、島原(京都)と並ぶ天下の三大遊郭として栄えた。現在でも、長崎花柳界として芸妓達が健在である。

長崎県民謡『長崎ぶらぶら節』では、丸山について次のように歌われている。

遊びに行くなら 花月か中の茶屋
梅園裏門叩いて
丸山ぶーらぶら
ぶらりぶらりと云うたもんだいちゅう

由緒ある丸山の妓楼・引田屋(ひけたや)には離れの茶屋「花月」があり、井原西鶴、向井去来、頼山陽、円山応挙、与謝野鉄幹、北原白秋など数多くの文人墨客が訪れた。

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