越天楽今様(春のやよいの あけぼのに)

花盛りかも しら雲の かからぬ峰こそ なかりけれ

「春のやよいの あけぼのに」が歌い出しの『越天楽今様』(えてんらく いまよう)は、雅楽(ががく)の名曲『越天楽』メロディに歌詞をつけた古い歌曲。

歌詞は、平安時代末期から鎌倉時代初期の天台宗の僧・慈円(じえん/1155-1225)による和歌。慈円の和歌は「小倉百人一首」にも収められている。

小学校の音楽の授業で歌われるほか、リコーダーやピアニカなどで演奏される。近年でも音楽教科書に掲載される機会が多い。ただ、歌詞は古い和歌であり、きちんと意味を解説した上で小学生らに歌わせているのかどうかは不明。歌詞の意味は後述する。

【試聴】越天楽今様 慈鎮和尚作詞・日本古謡

歌詞

春のやよいの あけぼのに
四方(よも)の山べを 見わたせば
花盛りかも しら雲の
かからぬ峰こそ なかりけれ

花たちばなも 匂うなり
軒のあやめも 薫るなり
夕暮さまの さみだれに
山ほととぎす 名乗るなり

秋の初めに なりぬれば
ことしも半ばは 過ぎにけり
わがよ更けゆく 月影の
かたぶく見るこそ あわれなれ

冬の夜寒の 朝ぼらけ
ちぎりし山路は 雪ふかし
心のあとは つかねども
思いやるこそ あわれなれ

歌詞の意味

春、三月の明け方に、周りの山々を見渡すと、桜が満開なのだろうか、雲のかかっていない峰はない。

夏には橘の白い花が匂い、軒に咲く菖蒲も香る。夕暮れに五月雨(さみだれ)が降り、山ではホトトギスが鳴いている。

秋に入り、今年も半分過ぎた。月が沈むように我が人生も過ぎゆき、もの寂しく思う。

冬の寒い夜が明ける頃、細い山道の雪は深い。心の足跡はつかないが、思いを馳せるのは趣深いことだ。

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