霞か雲か

ドイツ歌曲『小鳥たちがやって来た(春の訪れ)』

『霞か雲か(かすみかくもか)』は、1883年(明治16年)に発表された明治時代の小学唱歌(作詞:加部巌夫)。歌い出しは「かすみか雲か はた雪か」。

その後1892年(明治25年)には幼稚園唱歌として小鳥を題材とした『小鳥の歌』(作詞:大和田建樹)として出版された。歌い出しは「小鳥の歌は いともたのし」。

現代版の歌詞は、1947年(昭和22年)発刊の音楽教科書に掲載されたもので、作詞は勝 承夫。歌い出しは「かすみか雲か ほのぼのと」。

<右写真:ハチジョウツグミ>

【YouTube】日本の唱歌 霞か雲か

霞か雲か(作詞:加部巌夫)

かすみか雲か はた雪か
とばかり匂う その花ざかり
百鳥(ももどり)さえも 歌う(うとう)なり

かすみは 花を へだつれと
隔てぬ友と 来て見るばかり
うれしき事は 世にもなし

かすみて それと 見えねども
なく鶯に さそわれつつも
いつしか来ぬる 花のかげ

霞か雲か(作詞:勝 承夫)

かすみか雲か ほのぼのと
野山をそめる その花ざかり
桜よ桜 春の花

のどかな風に さそわれて
小鳥もうたう その花かげに
いこえばうれし 若草も

親しい友と 来てみれば
ひときは楽し その花ざかり
桜よ桜 春の花

小鳥の歌(作詞:大和田建樹)

小鳥の歌は いともたのし
野にも山にも ひびきわたる
うぐひす ひばり こえを限りに
春の喜び つきせず歌ふ

こなたかなたに 飛びかけりて
わが巣作らんと ことろ選ぶ
聲うつくしく 身軽くまひて
春の喜び つきせず歌ふ

原曲はドイツ歌曲『春の訪れ』

『霞か雲か』の原曲は、19世紀ドイツの童謡作家ホフマン・フォン・ファラースレーベン作詞によるドイツ歌曲『Alle Vögel sind schon da』(小鳥たちがやって来た)。『Frühlings Ankunft』(春の訪れ)と題されることもある。

きらきら星との関係は?

ドイツ歌曲『Alle Vögel sind schon da』を聴いてみると、フランス民謡『きらきら星』の一部のメロディが非常に似通っていることに気が付くが、この2曲は果たしてどのような関係にあるのだろうか?

残念ながら、この二つの歌が作曲の過程でどのように影響しているのかについて確認することはできなかったが、『きらきら星』のメロディは当時のヨーロッパにおいて非常にポピュラーなメロディであり、同曲をベースとして『Alle Vögel sind schon da』が作曲されたと考えても何ら不思議はないだろう。

【YouTube】小鳥たちがやって来た Alle Vögel sind schon da

歌詞の意味・日本語訳

1.
Alle Vögel sind schon da,
Alle Vögel, alle!
Welch ein Singen, Musiziern,
Pfeifen, Zwitschern, Tiriliern!
Frühling will nun einmarschier'n,
Kommt mit Sang und Schalle.

飛来する小鳥たち
鳥たちはみな
素晴らしい歌を奏で
口笛を吹き さえずる
春はもうすぐ
歌声と共にやってくる

2.
Wie sie alle lustig sind,
Flink und froh sich regen!
Amsel, Drossel, Fink und Star
Und die ganze Vogelschar
Wünschen dir ein frohes Jahr,
Lauter Heil und Segen!

鳥たちはみな楽しげに
せわしく喜びにあふれ
クロウタドリ、ツグミ
アトリ、ホシムクドリ
鳥たちはみな願っている
幸せな一年になりますように
真の安らぎと幸福が訪れるように

3.
Was sie uns verkünden nun
Nehmen wir zu Herzen:
Wir auch wollen lustig sein,
Lustig wie die Vögelein,
Hier und dort, feldaus, feldein,
Singen, springen, scherzen!

鳥たちのメッセージを
しっかりと心に留めよう
僕らも陽気に
鳥たちも陽気に
そこらじゅうへ 皆出かけて
歌い 飛び跳ね たわむれよう

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