ジョン・ブラウン John Brown
父から受け継いだアボリショニストの熱い血

リパブリック讃歌の謎 The Battle Hymn of the Republic

ジョン・ブラウン(John Brown/1800-1859)は、コネチカット州北西部の西トリントンで1800年5月9日に生まれました。

彼の父親は、奴隷逃亡を援助する秘密組織「地下鉄道(Underground Railroad)」のステーションマスター(各拠点の統率者)として活動していた熱心なアボリショニスト(Abolitionist/奴隷廃止論者)で、その息子であったジョン・ブラウンも父親からアボリショニストとして「奴隷制度は悪である」と小さい頃から教育されてきました。

ちなみに、「大きな古時計」の作曲・作曲者のH・C・ワークも父親が熱心なアボリショニストで「地下鉄道」の活動に積極的に参加していました(「フォスター特集 H・C・ワーク」もしくは「フォスター特集 アンクルトムの小屋」のページを参照)。

成人してからは彼は土地投機や羊毛の卸売りなど様々なビジネスに取り組むのですがどれもうまくいかず、その度に彼とその家族は貧しい生活を送っていましたが、それでも毎回めげることなく積極的に新たなビジネスを模索していたようです。

彼は何故ハーパース・フェリーを襲撃したのか?

ジョン・ブラウンが襲撃したハーパース・フェリーには、当時の最新の武器を製造する工場と武器庫があり、そこで製造された武器を黒人達に使わせる目的があったことがまず一点あげられます。

もう一点大きな理由としては、ハーバース・フェリーは奴隷主が支配していた地区と奴隷反対の西バージニア地区との境目に位置しており、彼がそこで奴隷反乱の狼煙(のろし)を上げることで、奴隷反対の西バージニア地区のアボリショニスト達の決起を期待していたという状況がありました。

HARPERS FERRY W.VA Copyright (c) 1912 Taking the Long View, 1851-1991, The Library of Congress

ハーパース・フェリーはポトマック河とシェナンドゥー河の合流地点にあり、北はメリーランド高地、東はルードン高地、西はボリバル高地という3つの高い丘に囲まれていました。南北戦争の間は8回も両軍により奪い合いが繰り返され、度重なる戦闘によってハーパース・フェリーの町はボロボロになってしまいました。

戦略的に不十分だった襲撃の内容

軍事評論家によれば、このハーパース・フェリーを制圧するには、3つの大部隊をそれぞれの高地へ配置する必要があるとのことからすると、十数名というあまりに少ない襲撃部隊で突入していったジョン・ブラン等の作戦はほとんど自殺行為であったようです。

しかし彼の直接の目的はその町を占領することではなく、略奪した武器を黒人奴隷等に手渡し、さらに近隣のアボリショニスト達の連鎖的な暴動の口火を切ることでしたから、彼は恐らく襲撃を計画していた時から、黒人奴隷解放という目的のために自分の命さえ投げ打つ覚悟でこの暴動に望んでいったのだと思います。

ジョン・ブラウンを支えた6人の支援者達 シークレット・シックスとは?

ジョン・ブラウン自身は決して経済的に豊かではなかったのですが、奴隷解放という同じ志(こころざし)を持つ他のアボリショニスト達の有形・無形の支援・支持によって、ハーパース・フェリーの襲撃も含め、彼は奴隷解放のための様々な活動を行うことができていました。

ジョン・ブラウンを特に擁護・支援していた「シークレット・シックス」と呼ばれる6人の人物がジョン・ブラウンにとって非常に大きな存在であり、彼等無くしては今のジョン・ブラウンの伝説も存在し得なかったと断言できます。

この「シークレット・シックス」の中の一人がやがてある女性と結婚し、そしてジョン・ブラウンが処刑されて数年後のある場所にて、その女性が「リパブリック讃歌」にとってキーパーソンとなっていくという非常に興味深いつながりが存在するのですが、その歴史的事実については後述します。

次のページでは、「シークレット・シックス」の各メンバーについて簡単にコメントしていきたいと思います。

【次のページ】 シークレット・シックス

リパブリック讃歌 誕生編 目次

  1. はじめに
  2. 父から受け継いだ血潮
  3. シークレット・シックス
  4. 特殊教育の道を開いたハウ氏
  5. ジュリア・ウォードとの出会い
  6. ハウ夫妻と北軍
  7. 真夜中の突然のひらめき
  8. もう一人のジョン・ブラウン
  9. エルズワースの亡骸
  10. グローリー・ハレルヤ
  11. 本当の作曲者は誰?
  12. メロディーの源流?
  13. ジョン・ブラウンの赤ちゃん
  14. 権兵衛さんの赤ちゃん
  15. ジョン・ブラウンの魂

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