ラヴェル『ピアノ協奏曲』 ゴジラとの関係は?

伊福部 昭とラヴェル『ボレロ』との衝撃的な出会い

フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが作曲した『ピアノ協奏曲ト長調』は、日本では昭和を代表する日本映画「ゴジラ」メインテーマ曲との関連で言及されることが多い。

具体的には、ラヴェル『ピアノ協奏曲』の一部のメロディが、映画「ゴジラ」テーマ曲で繰り返されるフレーズの元となっているという話なのだが、これについて作曲者とラヴェルとの関係から若干解説をしていきたい。

作曲者:伊福部昭とラヴェル

日本映画「ゴジラ」シリーズの音楽を手掛けたのは、北海道出身のクラシック音楽家・伊福部 昭(いふくべ あきら/1914-2006)。

学生時代からほぼ独学でバイオリンを始めており、北海道大学時代には文武会管絃学部のコンサートマスターを務めるほどの腕前になっていた。

ラヴェル『ボレロ』との出会い

伊福部 昭はモーリス・ラヴェルの大ファンとして知られている。彼がラヴェルと初めて出会ったのは学生時代。

モーリス・ラヴェルの代表曲『ボレロ』がパリ・オペラ座で初演されたのは1928年11月22日。その数年後、伊福部 昭はとある邸宅で開催されたレコード・コンサートに参加していた。

彼の目当ては、最後の演目にあったベートーヴェンのヴァイオリンソナタ『春』。この直前の曲として、数年前に初演されたばかりのモーリス・ラヴェル『ボレロ』がリストアップされていた。

執拗な反復と迫力に圧倒された伊福部

ボレロ』と言えば、スネアドラム(小太鼓)が最初から最後まで同じテンポで反復するリズムが特徴的。当初はラヴェルの名前すら知らなかった伊福部だったが、当時斬新だったその執拗な反復と、尻上がりに熱量を増していくドラマチックな構成と迫力に圧倒された。

あまりの衝撃の大きさに、伊福部はレコード・コンサートの当初の目的であったベートーヴェンの楽曲さえ興味を失い、『ボレロ』終了直後すぐに会場を去って、一人その余韻に浸っていたと後に語っている。

そして映画「ゴジラ」テーマ曲へ

その後もラヴェルは伊福部の心を捉え続けた。自身の誕生日ですら、ラヴェルと同じ誕生日であると、事実とは異なる日付を書類に記載してしまうほどの入れ込みようだった。

伊福部が作曲した映画「ゴジラ」テーマ曲が、ラヴェル『ピアノ協奏曲』の一部のメロディと似ているとすれば、それはインスピレーションやモチーフといった類ではなく、むしろオマージュであり、敬意を表したリスペクト作品とでもいうべきものではないだろうか。

【YouTube】 ラヴェル『ピアノ協奏曲』第三楽章(音量注意)

【YouTube】 ゴジラのテーマ

ちなみに、放送作家・ミュージシャンの伊福部 崇(いふくべ たかし)は、伊福部 昭の傍系親族(又甥)。ミュージシャン・ラジオパーソナリティの鷲崎 健(わしざき たけし)は伊福部 崇の大学時代の先輩。

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