里芋の葉の朝露で墨をする理由・由来は?
七夕の短冊に墨で願い事を書くと叶う?

天の川の雫がたまる?神様の水「天水」って本当?

里芋(さといも)の葉にたまった朝露を集めて墨をすり、その墨で七夕の短冊に願い事を書くと願いが叶うという風習があるが、その理由や意味合い・由来は一体何だろうか?

なぜ里芋の葉でなければならないのか?七夕と里芋を結びつける説得力ある理由付けは存在するのだろうか?簡単にまとめてみた。

里芋の葉が使われる理由は?

朝露を集めるのに里芋(さといも)の葉が使われる理由は何だろうか?

葉の形状的に雫(しずく)がたまりやすい、水をはじきやすい、などの性質が前提条件となるが、肝心なのは七夕と結びつく理由付けの方だ。

里芋(さといも)の葉と七夕が結びつく理由については文献が見当たらなかったが、ネット上で軽く調べてみると、芋の葉の雫は天の川の雫を受ける傘、その雫は月からこぼれ落ちた神様の水「天水」である、といった旨の興味深い解説が見つかった(根拠は不明)。

ただ、その「天水」とやらが何故「芋」の葉でなければならないのかについては理由付けがなされていなかった。ハスの葉ではダメなのだろうか?稲の葉露も良さそうだ。

雫がたまりやすい形という理由以外に、何か天空と芋を結びつける意味合いがあるのかどうか、大変興味があるところだ。

サトイモは子孫繁栄の縁起物

里芋・サトイモは、親イモに寄り添うように子イモ・孫イモと、一つの種芋からたくさんのイモができるため、子孫繁栄の縁起物としてお節料理・正月料理などでよく使われる。

特に、親イモ、子イモ、孫イモが塊状になる品種「ヤツガシラ(八頭)」(上写真)は、末広がりを意味する「八」と、組織の長(頭 かしら)になる立身出世の意味合いで、特に縁起がよいとされる。

子沢山の里芋で子宝祈願?

最後に、なぜ芋の葉が七夕の朝に使われるのか、その由来・起源について一つのヒントとなりうる江戸時代の文学作品をご紹介したい。

江戸時代後期の戯作者・山東京山(さんとう きょうざん/1769-1858)が1833年に記した「五節供稚童講訳」(ごせっくおさなこうしゃく)では、芋の葉と七夕の関係性について、次のような解説がなされている。

これは町方などには芋畑稀(まれ)なるゆえせぬ事なれども、昔よりする事なり。七夕様、一年に一度会い給ふゆえ、一夜に百人の子を儲け給ふといふ俗説によりて、子育て、または子を授け給へと祈る者、芋の葉の露にて願い事を短冊に記して献(ささ)ぐれば、願ひ事叶ふといふ。芋は子の沢山あるものゆえに、その葉の露を墨にすることと、昔の書に記せり。

この解説によれば、一年に一度しか会えない七夕様は、一度に百人の子を授かるとの俗説により、七夕は子宝祈願の絶好の機会であったようだ。

そして子沢山の縁起物である里芋の葉の雫で墨をすり、七夕様に祈願すればきっと子宝に恵まれる、と考えたのは至極自然な流れといえる。

あくまでも一つの解釈だろうが、里芋の葉と七夕を結びつける一つの筋の通った有力説といえそうだ。

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