ゴッド・ブレス・アメリカ
歌詞の意味・和訳
20年間お蔵入りの曲がケイト・スミスの歌声で国民的人気に
アメリカ愛国歌『ゴッド・ブレス・アメリカ(God Bless America)』は、代表曲『ホワイト・クリスマス』で知られるアーヴィング・バーリン(Irving Berlin)作詞作曲による1918年の楽曲。邦題は『アメリカに祝福あれ』。
アメリカ軍主催の舞台「Yip Yip Yaphank」向けの楽曲の一つだったが、舞台全体の雰囲気から見てこの曲だけ浮いていたため、結局舞台では使用されずお蔵入りとなってしまった。同曲が日の目を見るのは、なんと20年後の1938年のことである。
お蔵入りとなった曲が、20年後に一体どのようにして国民的人気を得ることとなったのだろうか?その経緯については後述する。
ちなみに、上のジャケット写真は、2001年9月11日の事件を受けて緊急発表されたチャリティアルバム。セリーヌ・ディオン、マライア・キャリー、グロリア・エステファン、ボブ・ディラン、サイモン・アンド・ガーファンクル、フランク・シナトラなど、アメリカの賞賛や未来への希望といったポジティヴなメッセージが込められた歴史的アルバム。
【YouTube】God Bless America セリーヌ・ディオン
歌詞・日本語訳
God Bless America, Land that I love.
Stand beside her, And guide her,
Thru the night with a light from above.
アメリカに主の祝福あれ 我が愛する国よ
アメリカを守り 導きたもう
夜通し降り注ぎし 天上の御光
From the mountains,
To the prairies, to the oceans,
White with foam
God bless America,
My home sweet home.
山々を越え 平野を渡り 泡立つ海原へと
アメリカに主の祝福あれ
我が愛しの祖国よ
イントロについて
当時は次のようなイントロ部分が存在したが、現在ではこのイントロ部分はあまり歌われなくなっている。
While the storm clouds gather far across the sea
Let us swear allegiance to a land that's free
Let us all be grateful for a land so fair,
As we raise our voices in a solemn prayer
海の向こうで嵐の暗雲が立ち込める中
自由なる地に忠誠を捧げん
美しい大地に感謝を捧げん
厳粛なる祈りの中 我らは高らかに声を上げる
終戦記念日のラジオ放送で一躍人気に
それから20年後の1938年、オーストリアを併合し勢いづいたナチスドイツの不穏な動きが広がる中、ユダヤ人として憤りを感じていたバーリンは、20年前に封印した『God Bless America』をアメリカ愛国歌として世に送り出す時機が来たと感じていた。
当時の歌詞に若干の変更を加えたうえで、新たな時代の愛国歌として再び命を吹き込まれた『God Bless America』は、第一次世界大戦が終結した記念日である1938年11月11日「Armistice Day」のCBSラジオ番組において、アメリカの人気女性歌手ケイト・スミス(Kate Smith/1907-1986)の歌声で全米に放送された。
ジャケット写真:ベスト・オブ・ケイト・スミス Best of Kate Smith
愛国心を呼び起こす『God Bless America』の壮大な歌詞とメロディは、たちまち多くのアメリカ国民に受け入れられた。楽譜は飛ぶように売れ、バーリンはこの売り上げを元に、ボーイスカウト/ガールスカウトのために「ゴッドブレスアメリカ基金」を設立した。
同曲は、ケイト・スミスを代表するsignature song(代名詞的作品)として、第二次大戦中はもとより、戦後のテレビ放送でもたびたび彼女自身のライブパフォーマンスが放映され、その人気を確かなものとしていった。
【YouTube】ケイト・スミス God Bless America
ケイト・スミス 大統領自由勲章を受賞
『God Bless America』を半世紀近く歌い続けてきた功績が認められ、1982年、アメリカ合衆国における文民向けの最高位の勲章「Presidential Medal of Freedom(大統領自由勲章)」がレーガン大統領(下写真)からケイト・スミスに授与された。
同勲章は、「アメリカ合衆国の国益や安全、または世界平和の推進、文化活動、その他の公的・個人的活動に対して特別の賞賛に値する努力や貢献を行った個人」に贈られるもので、過去にはウォルト・ディズニー、ジョン・ウェイン、フランク・シナトラなど、そして作曲者のアーヴィング・バーリンも1977年に受章している。
ケイト・スミスの授章式において、彼女が歌う『God Bless America』について、レーガン大統領は次のような祝辞を述べている。
The voice of Kate Smith is known and loved by millions of Americans, young and old. In war and peace, it has been an inspiration.
ケイト・スミスの歌声は年齢を問わず数多くのアメリカ国民に広く知られ愛されている。争いの時にも平和な時にも、思いを呼び起こさせる存在であり続けた。
Those simple but deeply moving words, 'God bless America,' have taken on added meaning for all of us because of the way Kate Smith sang them.
シンプルだが深く心を揺さぶる『God Bless America』の歌詞は、ケイト・スミスの歌声により更に意味深いものとなった。
Thanks to her they have become a cherished part of all our lives, an undying reminder of the beauty, the courage and the heart of this great land of ours.
彼女のおかげで『God Bless America』は我々の人生における大事な一部分となり、我らの住む大地の美しさ、勇敢なる精神、そして強い心を尽きることなく思い起こさせてくれる。
In giving us a magnificent, selfless talent like Kate Smith, God has truly blessed America.
ケイト・スミスのような高尚で私心なき人物を生み出したことで、主は真にアメリカを祝福されたのだ。
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