Down in the River to Pray 歌詞の意味

川で祈りを捧げよう 善なる主よ 道を示したまえ!

『Down in the River to Pray』(ダウン・イン・ザ・リヴァー・トゥ・プレイ)は、アメリカの伝統的なゴスペルソング。黒人霊歌・スピリチュアルソングとしても位置づけられる。

曲名は「in the river」の部分が「to the river」と表記されている場合も少なくないが、曲の内容や意味合い的に「in the river」の方が親和性が高いようだ(詳細は後述する)。

十字架

最も初期としては、1867年に『The Good Old Way』(ザ・グッド・オールド・ウェイ)の曲名で出版されており、そこでのサビの歌詞は「Down in the valley to pray」(ダウン・イン・ザ・ヴァリー・トゥ・プレイ)、つまり「river(リヴァー/川)」ではなく「valley(ヴァリー/谷)」だった。

1880年には『Come, Let Us All Go Down』(カム、レット・アス・オール・ゴー・ダウン)の曲名で出版物に掲載されており、ここでもサビの歌詞は「river」ではなく「valley」で歌われている。

2000年公開のアメリカ映画『オー・ブラザー!』(O Brother, Where Art Thou?)では、『Down in the River to Pray』がサウンドトラックの一つとして用いられた。

【YouTube】 Down To The River To Pray - Alison Krauss

歌詞(一例)の意味・和訳

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the starry crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
輝く冠を戴くのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

O sisters let's go down,
Let's go down, come on down,
O sisters let's go down,
Down in the river to pray.

さあ姉妹たち 下りて行こう
下りて行こう 下りておいで
さあ姉妹たち 下りて行こう
川で祈りを捧げよう

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the robe and crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
聖衣をまとい冠をいただくのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

O brothers let's go down,
Let's go down, come on down,
Come on brothers let's go down,
Down in the river to pray.

さあ兄弟たち 下りて行こう
下りて行こう 下りておいで
さあ兄弟たち 下りて行こう
川で祈りを捧げよう

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the starry crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
輝く冠を戴くのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

O fathers let's go down,
Let's go down, come on down,
O fathers let's go down,
Down in the river to pray.

さあ父親たち 下りて行こう
下りて行こう 下りておいで
さあ父親たち 下りて行こう
川で祈りを捧げよう

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the robe and crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
聖衣をまとい冠をいただくのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

O mothers let's go down,
Let's go down, don't you want to go down,
Come on mothers let's go down,
Down in the river to pray.

さあ母親たち 下りて行こう
下りて行こう 下りておいで
さあ母親たち 下りて行こう
川で祈りを捧げよう

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the starry crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
輝く冠を戴くのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

O sinners let's go down,
Let's go down, come on down,
O sinners let's go down,
Down in the river to pray.

さあ罪人(つみびど)たち 下りて行こう
下りて行こう 下りておいで
さあ罪人たち 下りて行こう
川で祈りを捧げよう

As I went down in the river to pray
Studying about that good old way
And who shall wear the robe and crown
Good Lord, show me the way !

河辺に下りて祈りを捧げた
古き良きやり方を学びながら
聖衣をまとい冠をいただくのは誰か
善なる主よ 道を示したまえ!

「in the river」であるべき理由とは?

曲名の『Down in the River to Pray』については、上述したように、「in the river」の部分を「to the river」と表記するケースがよく見られる。

一体「in the river」と「to the river」のどちらがこの曲に相応しい表記なのだろうか?

この点については、Wikipedia『Down in the River to Pray』において、次のように説明されていた。

The phrase "in the river" is significant, for two reasons.

意味:「in the river」が重要だ。理由は二つある。

<引用:Wikipedia - Down in the River to Pray>

「to the river」ではなく「in the river」と表記することが重要であり、二つの理由があるようだ。その理由とは?一つずつ確認してみよう。

理由その1:キリスト教の洗礼

「in the river」が相応しいとする理由その1は、キリスト教の洗礼が川の中(in the river)で行われることにあるとWikipediaで説明されている。

洗礼の方式はいくつかあるが、最も基本となるのが全身を水に浸す「浸礼」であり、それ以外は簡略形となる。浸礼のみを認める教会もある。

洗礼の場所となる「川」は、イエス・キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受けた「ヨルダン川(Jordan River)」が信仰上の本場であることは言うまでもない。

ヨルダン川での洗礼

写真:ヨルダン川での洗礼の様子(出典:Maranatha Tours@YouTube)

上の写真を引用した動画では、洗礼を受ける信者がヨルダン川に入り、介助者に背中を支えられて、顔を含めた全身を浸して洗礼を行う様子が記録されていた。

【YouTube】 ヨルダン川での洗礼の様子

ちなみに、上述のアメリカ映画『オー・ブラザー!』(O Brother, Where Art Thou?)では、川で全身を水に浸す「浸礼」のシーンがある。

映画『オー・ブラザー!』(O Brother, Where Art Thou?)サントラ

ジャケット写真:映画『オー・ブラザー!』サウンドトラック

映画『オー・ブラザー!』では、カントリー、ブルース、ゴスペル、ブルーグラス等の名曲が多数使用されており、サウンドトラックは全米で700万枚を超える大ヒットを記録した。2002年度のグラミー賞最優秀アルバム賞にも選ばれている。

理由その2:地下鉄道との関係

「to the river」ではなく「in the river」の表記が適している理由その2は、19世紀アメリカに存在した秘密結社「地下鉄道(Underground Railroad/アンダーグラウンド・レイルロード)」との関係が挙げられるとWikipediaでは説明されている。

19世紀前半のアメリカでは、南部の各州では奴隷制が認められていた。奴隷制を認めていなかった北部の各州は、南部州の奴隷たちを北部州へ亡命させるため、「地下鉄道」と呼ばれる地下組織を結成したのだった。

亡命は命がけだった。途中で車が使えるわけでもなく、寝泊りもほぼ野宿で、森や沼地に隠れながら、何百キロも離れた北部州へ命からがら逃げ伸びていった。

賞金目当ての逃亡奴隷狩り(バウンティ・ハンター)からも狙われていた奴隷たちは、追手から身を隠し体臭を消すため、川の中に入って移動することもあったという。

北部州への逃亡の道は、北極星などの星の位置が頼りとなり、歌詞の「the starry crown」にもそれが暗示されているとWikipediaでは説明されている。

歌詞の「Good Lord, show me the way !」という部分の「the way(道)」とは、まさに北部州への逃亡の道を指し示しているとも考えられるようだ。

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